僕が生まれて少し経った頃。
預言がどういうものかを知る中で、
僕はある少女と出会った。
< ラストスコア >
「ここです」
ある日連れてこられたのは、森の中の小さな小屋だった。
「魔物は? 安全なのか?」
「この辺りは、魔物には毒となる聖気が充満していて、魔物はとても生息できないでしょう」
モースと兵が言う。
確かに、ここの空気は心地いい。
「ふん…預言を聞かぬ者が生きる場所には勿体無いな」
「モース。人が生きる場所に預言の賛否は関係ありませんよ」
「それは失礼」
その小屋には、預言を否定する少女が暮らしているという。
僕は、預言の否定とはどういうものなのか……それを知るために、ここに連れられた。
「ではよいですかな、導師イオン。時がくれば迎えが来るでしょう。初めから…“その時”は解っているのでね」
「その時…?」
「全ては預言で……おっと、では我々はダアトへ戻ります」
モースたちは、急に小走りで森を後にした。
そして丁度姿が見えなくなった時、後ろで戸を開く音がした。
「あら……どちら様?」
「え……」
手に籠を抱え、小屋から出てきた少女。僕は思わず声をもらし、静止した。
「…迷ったの? でも良かったわね、この森は魔物がいないから安全よ」
「そ、そうなのですか?」
「ええ。…良かったら、一緒に木の実狩りに行かない?」
そうして僕らは、森へと入っていった。
彼女の名前は。
もうずっと前から、この森で生活しているらしい。
「は…どうしてこの森に一人で?」
「…人里にいれば…そこには必ず預言が飛び交う」
「!」
「あたしは預言なんかいらない。先が見えてしまうのって、つまらないもの」
そう言ったの瞳は、一点の曇りも無かった。
「しかし…預言は覆せません」
「やだなぁ、イオンも教団信者? 人生損してるよ〜?」
はけらけらと笑い出す。
…僕が、その教団の導師だなんて、言えない。
「…例えあたしの未来が決まっていても…それを事前に知りさえしなければ、あたしは自分で未来を選択したんだって…そう、思えるでしょう?」
未来の、選択。
そんな事、出来るわけがない。
だって人の未来は、預言によって定められているのだから。
僕はの問いに、答えられなかった。
それからしばらく、僕はと時間を共にした。
『預言を聞かぬ者の末路を、その愚かさを学べ』
そう言われていた。
そう思ってた。
だけどは自由だった。輝いて見えた。
何事にも臆しない。
先見えぬ未来にさえ。
そんな彼女の強さを…いつしか僕は、否定できなくなっていた。
「……」
ある夜、僕はどうしても気になって、の預言を詠もうとした。
モースが言っていた“その時”……それがどうしても気になった。
「……詠みたいの?」
「!」
はっとして見ると、眠っていると思っていたの瞳が、僕をとらえていた。
「イオン…あなた、導師なんでしょ?」
「! 知って……?」
「森に入る前にね。…どこかで聞いた名前だと思ったんだ」
はベッドから身を起こし、側に立ち尽くす僕を見つめた。
「別にいいよ。詠んでも」
「…いえ、詠みません。すいませんでした」
「……」
は急に顔色を変えると、ゆっくり口を開いた。
「…あたし……――明日ね…」
言いかけて、の動きが止まった。
「どうかしたのですか?」
「…ううん、いいの。……何でもないよ」
そう言ったの顔は、どこか、寂しそうだった。
翌日。
朝早く、僕らは木の実狩りに森へ入った。
「……」
何だか落ち着かない。
昨日までと、森の雰囲気が違う。
「……あの――」
言葉をつむぐ、瞬間。
「……!!」
「あぐ…ぅ……っ」
一瞬、何が起きたのか解らなかった。
隣にいた、の腹部に、
魔物の触手が貫通していたのを、ただ、呆然と見ていた。
「な…何故魔物が!?」
振り向けば、木に隠れるようにして見えなかった、一匹の魔物の姿。
「イ、オン……には、触らせない……!!」
息絶え絶えにが取り出したのは――響律符。
『――イラプション!!!』
の声に反応し、魔物は譜術によって倒された。
ずるっと音を立て、の腹部の触手が抜ける頃には、の目は朦朧としていた。
「!!」
その場に倒れるを、僕は抱き起こした。
「今日、ね……あたしが死ぬ日なの」
「!!」
「あたしが……最後に、預言者に詠まれた預言よ……」
―――魔を司るもの、汝が全てを奪い、汝は永久の暗き闇に堕ちるだろう……
「…怖かった…死にたくなかった……だから、あたしはこの森に逃げたの……結界を張って…
だけど……解ってた…預言は覆せない…預言からは逃げられないんだ、って…」
「…っ」
「結界、破れちゃったね……半永久の、はずだったんだけど、なぁ……あはは、預言には勝てないかぁ……」
「もう、いいから…喋らないで……!」
その時、頬から何かが流れた。
解らない。これは何?
「……イオン…これを……」
震えるの手は、僕の胸に押し付けるように何かを差し出した。
「これは…さっきの響律符…」
「あなたに…あげる。……それは…『メアノフォルテ』」
は、微笑んで言った。
「『幸福な』…の意味を持つ……響律符よ……」
「幸、福……?」
「あたし……あなたに会えて良かった……幸福だった…よ…」
無理が集ったか、は咳き込み、血を吐いた。
「ねぇ、イオン…あなたの預言を聞かせて。もう、未来の見えているあたしの……イオンとあたしの、2人の未来の預言を……」
「預言……」
僕には解った。
が求めているのは、未来の預言じゃない…想いの預言なのだと。
「……必ず、僕はあなたの元へ行きます。ずっと側にいます。……それが僕らの預言です……!!
だから…っ…待っていて下さい…!!」
僕は、の手をぎゅっと握った。
は微笑んでくれた。
「…ありがとう…イオン……その預言なら、信じ、られ…る…ね……」
程なく、
は音素が乖離し、姿すら残らず、空に解けた。
預言とは、
預言とは何なのだろう。
死の預言など、
どうして……――。
後に、僕は自分と同じレプリカのシンクの死を目の当たりにする。
その時知った。
あの時の涙は……悲しい涙だったのだと。
は僕に教えてくれた。
預言は、こんな悲しい結末を起こすものであってはいけない。
僕は……人々の笑顔のための導師になろう、と。
「――――……」
ティアの悲しそうな顔が見える。
そうか、僕は星の記憶を詠んで……
「導師イオンっ!! しっかりしてください!!」
ティアから受け取った第七音素が、身体を蝕んでいくのが解る。
苦しくて、痛くて。
も…こんな気持ちだったのでしょうか。
「イオン様……っ」
アニス……
大丈夫……僕は今、幸福なのです。
彼女の元へ…行けるのですから…
『イオン……』
(…?)
ティアの向こうに、が見える。
『ダメでしょ…? あたしには、ちゃんと預言残してくれたのに…あの子には、何も言わずにこっちに来る気なの?』
の視線の先には、涙を流すアニスがいた。
「アニス…泣かないで」
「っイオン様…!」
あなたはどこか、に似ている…
「…どうか自分を恨まないで。自由に、生きてください…
あなたには、大勢の仲間がいる。皆さんがいれば大丈夫です。…僕がいなくても」
「イオン様ぁっ!!」
「それがあなたに残せる……僕の……」
僕の、最後の…預言です―――
end.
■あとがき■
ありえない…((いきなりかょ
まず情報不足し過ぎだと思います;
Vo.ナタリア「浅学が滲み出ていましてよ」
まずイオン消滅のシーン、ボロ泣きだったんで、やり取りあんまし覚えてなかったわけですよ。
まぁそういう以前の問題として、
イオン最期にあんな事言ってないし。((痛
Vo.ジェイド「可哀想な人ですねぇ」
ちなみに背景画像が、響律符『メアノフォルテ』のイメージです。
全然響律符っぽくないですね!((ぅぉ
Vo.ティア「全く、腐女子って皆こうなのかしら…」
…なんかいろいろ言われてますが。
これは書いてて楽しかったです。
イオン様らぶ。ふぉーえばー!!!!!((ウザッ
フローリアァァァァァァァァン!!!!!!!!((ウゼェェッ
Vo.アッシュ「屑がっっ!!」