「で、結局ステージ壊しちゃって漫才できなかったんだよね〜……って」
亜紋は目の前にいる少女を見つめた。
……爆睡している。
「……ちょっと! 酷くない? 人が折角笑える話をしてるのにさ!」
亜紋が声を張り上げると、は眠そうに目をこすりながら言う。
「…今の、笑える話やったん?」
< 君に笑顔を >
「てかな〜、実際面白んないねん」
は打ちひしがれる亜紋を素無視であくびをした。
「そんな事言われたって…何がどう駄目なのか解んないし? だいたいのツボが未だに謎なんだよね」
「………アンタのギャグは小倉●子と同じや」
急な話の振りに亜紋は振り向く。
「…その心は?」
「聞いて眠たい、見てウザい」
「ひどっ!! でも上手いっ!!」
亜紋はショックより笑いの方が上だったらしく、腹を抱えて笑い出した。
「ほらな? ウチのツボもアンタのツボも変わらへん。要はアンタの修行不足やっちゅー事や」
「そっかぁ…」
亜紋は苦笑いをすると、腕を頭の後ろで組んだ。
「駄目だなぁ…こんなんじゃ、大きなステージに立つなんて夢のまた夢だよ」
「……」
はそんな亜紋の服を引っ張る。
「ん? どうしたの、……――!」
振り向いた亜紋の唇に、自分のそれを合わせる。
「っ……///」
「亜紋なら、イケるよ」
「!」
「亜紋なら……たくさんの人笑わせる事、できるよ」
「…」
「やから、そないに不安げな事言わんといて! 亜紋にはウチがついとるやろ」
「……うん、そうだね」
亜紋はを抱きしめた。
「それにな…?」
「うん?」
顔を上げたは、
「ウチは、亜紋が亜紋やから……好きで一緒におるんやで?」
満面の笑みを浮かべ、そう言った。
「……そんな顔で笑ったの見るの…初めてなんだけど…///」
「そうやっけ?」
「…俺がずっと見たかったのはさ、誰でもなく、の笑顔なんだよ」
が笑ってくれる話を、
が笑うような面白い話を、
そんなモノ、探さなくたって、
君の笑顔は、案外すぐに見られるモノだったのかもしれない。
end.