「……」














真夜中。








少女は眠っていた。



今日は、待ち人は来なかった。








諦めて眠りに着き、ようやく夢見についた頃。





















「……起きて下さい、




















ようやく、彼はやってきた。


















































<貴女を理解するたった一人に>


















































、来ましたよ。起きなさい」






ベッドの横にひざを着き、顔を覗きこむ蔵人。








「………ん…」








は起きない。


彼女は一度寝付くと、ちょっとやそっとの事では起きないのだ。









「……」








蔵人はコートと帽子を近くのソファに置き、いそいそとベッドに入り込んだ。








「……さむ…ぅ……」






外から帰ってきたばかりの冷たい身体に抱きつかれ、はふと声をもらす。



しかし、やはり起きない。









「………」



蔵人はどうしたものかと考えながら、その温もりに触れていた。






暖かい、自分の腕の中の少女。


そして、少女の温もり、匂いが染み付いた毛布に包まれる自分。







一つになりそうで。








「……」






蔵人は、思わず腕に力を入れた。








「……や、…ちょっと、苦しぃ…………蔵人…?」





その力強さに、流石のも目を覚ました。








「…お早う御座いますw」


「お早うじゃ無い、馬鹿。今何時だと思ってんの私が何時まで待ってたと思ってんのていうか眠いんだよねお休み」




は息継ぎもせず言いたい事だけを言い、もう一度目を閉じる。






「嫌だなぁ、構ってくださいよ」


「やだ眠いもん。私今日学校で嫌な事あったんだよね。さっさと寝て忘れたいワケなの。だいたい何でもっと早く帰ってきてくれなかったのよ?」


「急患が入ったんです」


「あらそう。じゃぁ蔵人だって疲れてるんじゃないの? もう寝なよ…」




小さくあくびをするを見て、蔵人は笑みをもらす。





「私、明日朝から手術(オペ)があるんですよw だから朝早くて、今と話をしておかないと…――手が震えて患者を切り刻んでしまうかもしれませんw」


「はぁっ!?」





は思い切り振り返る。


目を合わせた蔵人は、先程のセリフが嘘のように、自分を愛おしく見つめていた。





「…で、何の話するのよ?」


「何でもいいですよ」


「え…  !!」



蔵人はを引き寄せ、腕の中に包み込んだ。






「学校であった嫌な事とか、がいつも我慢してる事とか……私に言いたい事とか、ですかね」


「……」




は蔵人の胸に擦り寄りながら、涙を浮かべ始める。








「……私…調子乗って生きてんじゃん…?」


「そうですね」


「……」




少しは否定してもいいんじゃないか、と思いつつも、は続ける。





「…それを気に食わない人もいるわけよ」


「人それぞれでしょうねぇ」


「でも、私は……っ」




急に、泣き声に変わる。






「私は……嫌われたくないんだよ……っ」






それは蔵人にも、言った事の無い、



本音。






「でもだからって、自分偽って好かれたって、それって本当に価値があるの? 相手の気に触らない人間になって、私に何の得があるの?」



「……無意味、でしょうね」



「そう、意味なんかないんだよ」




は涙を拭きながら言う。






「どうして私を私のままで見てくれない人は、私を放っといてくれないの?


 嫌いなら放っとけばいいじゃない。関わらなければいいじゃない。


 どうして口を出すの。どうして騙そうとするの。




 …こんなにも雑音(ノイズ)が多いと、私は誰を、何を信じればいいのか解らない」






「……」






蔵人は、優しくの頭を撫でた。









「…私は信じましょう、貴女を」




「……蔵人…」








も私を信じればいい」











蔵人の言葉は、








安心できた。
















「……根本的に解決してないよ、それじゃ」



「おや、困りましたね」





「………まぁ、…いいや」




















独りでもいい。





孤独でもいい。












苦しくないのなら。









ずっとそう思ってた。

























だけどホントは違っていて。







私は、




















誰かに信じて欲しかったんだ。







































―――――私という、存在を。






































貴方は決して、それを否定なんかしないから。












私の側には、そういう人しか、いらない。



























「…………」



「おや、眠ってしまいましたか」






蔵人はの寝顔を見つめた。








「……やはり…」





そっと、前髪に触れる。










「先程より、穏やかな寝顔ですよ」









蔵人は満足したように微笑むと、自分も瞳を閉じた。




















「では…――お休みなさいw」






























end.