あたしの名前は



高校二年生、花も恥らうオトシゴロ。



実は、彼氏だっていちゃいます。







なのに、





あたしの周りは、とても変なことになってたりするんです――――……

























<trip?>

























「ただいまぁ」


「早かたね」



台所からひょこっと顔を出したのはフェイタン。





「フェイ、台所なんかで何してるの?」

「何か無いか探してたよ」

「って、まさか……」


あたしは急いで靴を脱ぎ、台所に飛び込んだ。






「……やっぱり…」



荒らされた台所は、足の踏み場も無いほど散らかっている。





「今日あたし早く帰るって言ったじゃない。何でもうちょっと待てなかったの!」


「…悪かたね」



フェイはどこかしょんぼりとした感じで階段を登っていく。





「…何が食べたい?」



そのあたしの声に、フェイは振り返る。





「おやつ。何か作ったげる」


「……作てくれるのか?」



フェイは階段を飛び下りると、あたしの目の前までやってきた。





「うん。で、何がいい?」





「……ほとけぇき」



「へ? ほと……? ――ああ、ホットケーキ!?」




フェイはこくりと頷く。





「〜〜〜〜〜フェイ可愛いっvvvv」


「だっ、抱きつくんじゃないね、離れるよ///!!」


「照れてる照れてる〜〜」





そんな会話が聞こえてか、二階から3人の足音。




「オレの分も頼むぞ、


「オ、オレもっ!」


「ボクももらおうかなぁ☆」





「……クロロ、シャル、ヒソカ……聞いてたの?」










そう、この家には、




ハンタ世界の、この4人がいる。





 


「もう……解ったから、4人とも上で待ってて?」





何故、あたしの好きなキャラだけが現れたのかは解らない。





「手伝うよ」

「あ、シャルありがと。でもいいよ。みんなと上で待ってて」

「ん、解った」







あの日、朝起きて、



目の前に4人がいて、



夢かと思ったら、フェイに胸ぐらつかまれて、






『お前、誰か? 此処は何処ね』






声優通りのその声に―――あたしの脳は目覚めた。








それからと言うもの、いろいろ帰る手段を探しているけど、やっぱり見つからない。



とりあえず、あたしはここに一人暮らしだから、かくまってる。







けど……




「……ふぅ」





大好きなフェイタン。


会えただけで


声を聴いただけで






もうあたしの心臓は耐えられない。







ホントもう何か、






彼氏なんかより、今は、












――――フェイが好き。












だけど、この日々はいつか必ず終わりを告げる。




だから、彼氏とフェイと、自分の気持ちは板ばさみ。







結構、しんどい。







「あ…焦げちゃった」




少し表面の黒いホットケーキ。


これは、自分のにしよう。




全員分焼いて、あたしは二階に持って上がった。















「焼けたよー」



「うわっ、おいしそー!」

「早速頂こうか」

「あ、バター取ってくれるかい?」



エサに群がる野生児達。(笑)




「……」


「……どしたの? フェイ」


の、焦げてるね」



「ああ、ちょっと考え事してたら、ひっくり返すタイミングをミスっちゃって」






「…あげるよ」





フェイは自分の皿とあたしの皿を取り替える。





「い、いいよっ! それはフェイが食べて?」


「ワタシ、そちがいいよ」




フェイのは特別綺麗に焼いた。


だからフェイに食べて欲しいけど……





「…駄目か?」



そんな目で見られたら…






「…いいの? じゃぁ…あげる」









……母性本能くすぐられますがなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!/////////(壊)







ヤっバイ、やっぱあたし幸せだ。



でも何か、彼氏に悪いことしてるみたいで…後ろめたい気持ちになる。






「………」







ホントに、このままで、いいの―――?




















のことなんだが」



その夜、4人は集まって話し合っていた。



はいつも嬉しそうに笑顔を見せるのに、たまに一人だと辛そうになる…理由を知っている者はいるか?」


全員、首を横に降る。


「まぁ、オレも気になってたけど。いつも世話になってるし、―――あれも見つかった事だし。…オレ達でどうにかできないかな?」


シャルの意見に、クロロが頷く。



「…お前等はどうする?」



「楽しそうな事になったら参加するよ☆」



ヒソカはトランプタワーを積んでは崩し、を繰り返していた。




「フェイタンはどうするの?」


「ワタシは参加するよ」




「決まりだな。じゃぁ、明日なんだが―――」





そうして、自室で寝ているあたしをよそに、男達の長い夜は更けていくのだった。









 













「――、朝よ。起きるね」




「んん……後五分……」

「……」






―――いいか、フェイタン。お前はに気に入られているから多少の事は許してくれる。







「起きないと、襲うよ」


「ふへぇ……?」


「……」







――ちゅぅ。







「っっっ!!!???」



フェイタンのキスで、あたしの脳は活性化され、すぐに覚醒した。






「フェっ、フェ…フェイ……今、何…っ!?///」



顔を真っ赤にしてフェイを見る。






「…起きないから襲たね」


「だっ、誰が許したっ!?」


「ワタシちゃんと言たよ。“起きないと襲う”て」


「返事返してないっ!! それ以前に覚えてないっ!!!」






まさか、大好きなフェイと、こんな形でキスしちゃうなんて……。






「フェイ、の…バカぁ……っ」


「!」



あたしの目から、涙が流れる。





「ど、どうして泣くね、止めるよ」


「もういいっ、出てって!!!」




ぐいぐいと背中を押されて部屋を追い出されるフェイタン。






? 、開けるよ」


「うるさいっ!」



あたしは中から鍵をかける。


「……」

フェイなら簡単に開けられそうだけど、足音は遠ざかっていった。






「フェイの、バカ…」









ホントならありえない事だから。



期限がある事だから。






そう思って、誤魔化してきた。






だけど、









「……ごめん…ごめんなさい………」









キスを、してしまった。











これは完全な、―――裏切りだ……。























「――…?」



「へっ?」



呼ばれて、はっとする。



ここは学校。あたしはあの後、急いで家を飛び出した。






「大丈夫?」


この人が、あたしの彼氏、――海。



「あ、うんっ、平気…」



今朝の事があってか、顔もまともに見れない。





「やっぱり変。元気ないし。…何かあっただろ?」




海はするどい。あたしのコト、いつもわかってくれる。




だけど、これは言えない。






「ホントに何でもないの! 気にしないで…?」




やっぱり顔は見れなかったけど、海は溜め息を一つついた後、頭を撫でてくれた。



「教室行くぞ」



「…うんっ!」






言っても信じてもらえないことだけど。


言ったらきっと―――…













「見たか?」

「見た」

「見たよ☆」

「……」



校舎の見える、隣のビルの屋上。


例の男衆4人は、校舎の中のあたしを見つけ、見ていた。





「あいつが原因か?」

「だったら殺せばいいじゃん」

「この世界では、殺しは大罪なんだろう? ボクらの世界よりキビしいんだって♪」




「そんな事どうでもいいよ」



フェイタンはみんなの元を離れると、一人ビルを降り始めた。





「殺ればいいだけね」



「…聞いてなかったのか? ここでは殺しは大罪なんだ。俺たちがここで問題を起こせば、面倒事に巻き込まれるのはだぞ?」



クロロの静止を聞き流し、フェイは屋上の扉を閉めてしまった。





「…まぁ、大丈夫だと思うけど…オレ付いてくよ」


シャルもその後に続いた。


「おもしろそうだねぇ……ボクも参加させてもらおうかな…☆」


さらにその後をヒソカが続く。





「…しょうがないやつらだ」



クロロは校舎に向きなおし、監視役についた。







(もう……時間がない)









 













、食欲無いの?」


昼休み、人のいない中庭で、海と昼食デート。




「ん……」


作ってきたお弁当には手をつけず、ジュースを飲み続けるあたし。





側にいるのも辛いんだけど、ホントは。





あたし、どうすればいいのかもうわかんない。







「…


「!」



急に、海はあたしにキスをした。






「んっ……」



「何か、隠してる…?」





久しぶりに見た、海の顔。



すごく心配そうな瞳。







余計――辛い。















「…決まりね。苦しめてるの――アイツよ」



それを見てしまったフェイタンは、瞬間、地を蹴って、海とあたしの目の前までやってきた。



「なっ、フェイ――っ」



フェイに背中を向けていた海は、その存在に気付けないまま壁に打ち付けられる。




「ぐはっ……!!」



「死ぬといいよ」


「やっ、やめてフェイっ!! この人に乱暴しないで!!!」


「何故か? コイツのせいで、苦しそうだたね。コイツいないほうが良くないのか?」


「そんな事ない!!」





「フェイタン、やめるんだ!」



後から来たシャルに、フェイタンは止められた。

ヒソカは遠くからクスクスと笑って見ている。




「海…っ」


海は意識を失っている。




「…この人の記憶はオレが消しとく。…二人は、ちゃんと話し合ったほうがいい」



携帯を取り出しながら、シャルは言った。






「…フェイ、行こ…」



あたしはフェイの手を引っ張り、校舎へ入っていった。










 


――空き教室。




「どういう事なの?」


まずあたしの一声に、フェイは顔を背けた。


「どうしてあの人を攻撃したの。どうして勝手に来たの。あたしが苦しそうって何?」



あたしの質問攻めに、フェイはさらに沈黙を続けた。











「……苦しかったよ、ずっと」




「…?」





急に、あたしから口を割る。








「苦しいに決まってるでしょ…!?」




そして、涙が溢れた。





「ワ、ワタシが泣かせてるのか? そうなのか?」



それを見ておろおろとするフェイ。








「………ぷっ」



失笑。







「な、何故笑うか……」




「いや…ごめん、何となく……っ、うわぁぁぁぁぁん〜〜〜っっっ」






笑ったと思ったら、また号泣し出すあたし。






!? 、どうしたか、泣き止むよ!」




「フェイは何でそんな優しいの!?」




半ば逆ギレ口調なあたし。




「!?」





「…苦しめてるのは、海もフェイも一緒じゃない……っ   ――!」





言って、気付く。



あたし、今、最低な事言った。






これはあたしの、自分勝手な気持ちなのに。








「……ワタシが、だたか」


呟いて、教室を出ようとするフェイ。








「ま、待って……っ」



「苦しめるのにの側居れないね。――さよならよ」








―――さよなら…?








「やだっ!!!」


とっさに、あたしはフェイの服の袖を引っ張った。







「行かないで……」





あたしは何を、言ってるんだろう。





「側にいて……」





この人は、幻。





「お願い、さよならなんて言わないで……」





決して共にはいられない。





「……、離すね」





だいたい、海はどうするの?





「嫌…離さない…」









そんなの、もうどうしようもないくらい、







「――――好き……」








あなたが、好き……









 


「……」


沈黙が続く。


フェイはあたしの手を取り、服を離させた。






「ぁ……」





きっとフェイに、“好き”の意味は解らない。


これは――無意味。







行ってしまう――……









「…



解いた手を、ぎゅっと掴むフェイ。



「きゃっ…」


そしてそのまま引き寄せ、あたしを抱き締めた。






「早く言てれば、そんな苦しまなくて済んだね」




「そ、それってどういう――… ん…っ」






目線を合わせた途端、







フェイはあたしにキスをした。





「ん……ふ、ぅ……っ」





それは激しく、濃厚な、








――フェイの気持ち。









「お前を連れて行くよ」



唇が離れ、フェイがささやいた。






「ど、こに……?」



あたしは息を落ち着かせながら言う。


紅潮したあたしの頬に触れながら、フェイは言った。







「――ワタシの世界ね」



「!」



それって…ハンターの!?






「な、何で…、まだどうやって帰るか解んないのに……」



「この建物の屋上に、“穴”を見つけたよ。その向こうから大勢の念の気配感じたね。多分、ワタシ達の世界に繋がてるよ」



「そんなのいつ……」



が夜寝た後いつも探してたよ」








知らなかった。



フェイ達はもう、帰る方法を知っていたんだ。






じゃぁ何で、すぐに帰らなかったの?







「何で…見つけた時、帰らなかったの……?」





フェイの胸に顔を埋める。






にあいさつも無しにか? それに心配だたね」



「苦しそうだったのが?」




フェイは頷き、あたしと目線を合わせる。









「それと―――ワタシも好きだたよ」





「!」






「だから、連れてくね」







「――うん、行く……」












行ってどうする?






向こうで生きる自信はない。







海は?







お別れしてない。








でも今、そんな余裕がない。








だってフェイが、す、好きって…








あたしに、言った。







両想いって、事だよね?









着いてって、いいんだよね?










 



















そんな事考えてる内に、屋上に着く。



クロロ、シャル、ヒソカの後ろに、ぐにゃぐにゃした穴みたいなのが見える。





「やはり連れていくのか」



「え、来るの!?」



「楽しくなりそうだねぇ♪」







「……に手、出したら殺すよ」





「///////!!」







や、ばい……





頭に血がのぼってきた……。









「では、行くぞ」




あたしとフェイを残して、先に三人が入る。




、行くよ」




「…フェイ……」


ぎゅっと手をにぎる。







「離さないでね…」



「離さないよ」



「側にいてね」



「ずといるよ」



「向こうでも?」



「ずと、側にいるね」



「……うんっ」







どうなるかなんて、解らない。







それでも決めた。








あたしはフェイと生きていく。







向こうがどれ程危険でも、







二度と戻れなくても、
















――――フェイと一緒に、生きていく。














 
end.