もういいかい?
まぁだだよ。
<Hide and seek>
「フェイタンっ! あのね、ゲームしよっ☆」
は楽しそうに笑顔で言った。
「…ゲーム?」
「そう! さっきこの瓦礫の中に、宝物埋めたから! 探してv」
「探してどうなるか?」
「その宝はフェイタンのものになっちゃいます♪」
「いらないよ」
そう言って踵を返すフェイタンの服を、思い切り掴む。
「待って待って待って待ってお願い構ってーーーーっっ!!!」
「……」
フェイタンは溜め息を軽く吐き、瓦礫の方へ足を向けた。
「…これか?」
フェイタンが瓦礫の中から取り出したビー玉を見て、は目を大きく見開く。
「何でそんな簡単に見つけちゃうかなー!! フェイタン面白くないっ」
は不機嫌そうな顔でその場を走り去った。
(見つけて欲しいわけじゃなかたのか?)
フェイタンは複雑な顔をして、ビー玉を見つめた。
の瞳と同じ、蒼い色。
本当は、がこれを隠しているのを見ていた。
そしてその後自分を待っていた事も。
愛する人をずっと見ていたくて。
「でねッ、フェイタンったらすぐに見つけちゃったんだよ!?」
ビー玉を持ったまま、フェイタンは広場に行こうとし、声が響いた。
広場ではとシャルが話していた。
「かくれんぼってさ、中々見つからないから楽しいんだよ!」
「かくれんぼ…って、隠してたの物だよね?」
「と、とにかくあんなに早く見つかったら楽しくないよ!//////」
(そうだたのか?)
遊ぶ、という意識が大幅に削がれているフェイタンにしてみれば、どうすれば楽しいのか、喜んでくれるのか、そんなもの解らない。
「でもさ、フェイタンが必至になって探してるのも…あんまり見たくなくない?」
「う……んまぁ、そかもしんないけどさ」
シャルはをうまく宥めると、自室へ帰るよう促した。
「フェイタン、いるんだろ?」
がいなくなったのを確認して、シャルはフェイタンを呼んだ。
その声に反応して、フェイタンは広場へ姿を現す。
「…は乙女ちくね。ワタシには気持ち解らないよ」
「…オレは解るけどな」
その言葉に、フェイタンは何がというようにシャルを見上げる。
「はね。そのビー玉、フェイタンに持っててもらいたいんだよ」
「ワタシに?」
「そう。…あ、ちょっと貸してみて」
シャルはフェイタンからビー玉を預かり、自室へと戻った。
「がいなくなった」
夕飯前、クロロは団員にそう告げた。
「理由は解っている。の部屋にメモが残してあった」
クロロが紙切れを広げると、ペンで『Hide and seek』と書かれていた。
「…何て読むか?」
「――“かくれんぼ”だ」
クロロは溜め息まじりに言う。
「あいつは退屈を嫌うからな。たまにこういう事をする…まぁ、腹が減ったら帰ってくるだろう」
絶を解いてから、どれくらいの時が経っただろう。
「……」
始めは絶で気配を隠していたものの、誰も見つけてこないので、数時間前に解いたはずだった。
しかし、迎えは一向に訪れる気配が無い。
「〜〜〜お腹減ったお腹減ったお腹減ったぁ!!!!」
叫んでみるが、近くにすら誰もいないようで、何の反応も無い。
「…なにさ、いじわる」
外に積んである瓦礫の影にいたは腰を下ろした。
もうすでに日付は変わっていて、綺麗な月灯りだけが辺りを照らしていた。
「――もぉいいかい……まぁだだよ…」
うずくまり、ぼそりと呟く。
「――僕を探して見つけてごらん……月の灯りで見つけてごらん…」
そんなの姿を、月だけが照らす。
「――もぉいいかい……もぉいいよ…」
唄が終わり、再び静寂が戻ってくる。
「…もぉいいってばぁ……っ」
「見つけたね」
「!!」
急な気配に、は ばっと振り向く。
「フェ、フェイタンっ!? い、いつからいたの!? 気配なんて…」
「三時間程前から瓦礫の反対側にいたね」
ケロっと言うフェイタンの胸倉を、半泣きで掴む。
「な、何でじゃぁもっと早く迎えに来てくれないかなァ!!??////// って、それ……!」
その時、の瞳に、輝くモノが映った。
フェイタンの首にかかっているのは――のビー玉がついた首飾り。
「ちょっとそれ…ッ」
「シャルナークが細工して作てくれたよ」
マスクの上からかけられるように紐が長くなっているそれは、揺れる度に違った光を放つ。
「……寂しかった」
声を絞るように、が呟く。
「かくれんぼは見つからない方が楽しいものではなかたのか?」
「…見つけてくれなさ過ぎだよ」
は涙が浮かぶ瞳で苦笑いした。
フェイタンはその涙をふき取ると、そっと頬に手を置き、顔を持ち上げる。
「見つけた宝はワタシのモノになるんだたよな?」
「は、はい?」
瞬間、
「!!」
フェイタンはの唇を奪った。
「な、なななななな////////」
焦って『何してる』が言えないを見て、フェイタンは微かに笑った。
「……これではワタシのモノね。…文句は言わせないよ」
「きょ、拒否権無しっ!?」
そう、拒否権は無い。
しかし黙秘権も手放そうと、は覚悟を決めた。
「じゃ、じゃぁフェイタンはあたしのモノ!! 拒否権、無しだからッ!!//////」
張り上げた声がその場に響く。
「…当たり前ね」
言って、フェイタンはの手を取り、歩き出した。
内緒の内緒のかくれんぼ
僕を探して見つけてごらん 月の灯りで見つけてごらん
もういいかい?
もういいよ。
end.