さくら さくら
今日も変わらず
舞い上がれ
<花びら一つ>
流星街のとある建物の中。
「フェイ、最近ずっとここに居てくれるよね」
の家はそこにあった。
「そうね。団長がまだ仕事て言わないから、当分は此処にいれると思うよ」
の側は、フェイタンにとって、唯一安らげる場所。
できる事ならずっと側にいたい。
「仕事、かぁ…あたしも皆に資金援助してもらってるし、あんまり何も言えないけど…フェイタンと一緒にいたいよ」
は悲しい目で隣に居るフェイタンを見つめた。
「は連れて行けないね。でも心配無用よ。いつでも帰て来れるね」
フェイタンはの頭を撫で、その微笑みを見つめた。
「……」
すぐにでも、自分の物にしたいのに……
傷つけたくない。
フェイタンの中に、真新しい感情が芽ばえて、もういくらになるのか。
未だに手を出せないでいる。
それというのも…
「フェイタン、いるんだろう?」
外からクロロの声がし、は玄関に向かった。
「……あ、クロロ。フェイタンなら中だよ。上がってく?」
玄関に響くの声に耳を傾けながら、フェイタンはリビングで溜め息を吐いた。
フェイタンもその感情を理解してしまった故、解る事。
クロロもそう、自分と同じように、の事を……
「フェイタン、クロロが来てくれたよ」
笑顔で帰ってくるの後ろにはクロロの姿。
「…団長、何の用か?」
露骨に嫌な顔をするフェイタン。
「いや、たまたま近くに寄っただけだ。お前もいるだろうと思ってな」
たまたま?
フェイタンは心の中で繰り返す。
(…絶対嘘ね。団長、に会いに来たはずよ)
「…邪魔なら帰るよ」
「え? 帰っちゃうのっ?」
「そうか、じゃぁオレはもう少しいさせてもらうかな」
にやっと笑うクロロを横目に、フェイはの家を飛び出した。
(ワタシは何がしたいか?)
フェイタンは、流星街唯一の桜の木の下にいた。
欲しい物は奪え。
そう教えたのはクロロで、
だからといってを譲れるわけではない。
しかし何故か、遠慮してしまう。
――渡したくないのに。
「…っフェイタンっ」
「!」
フェイタンが振り向くと、そこにはの姿。
「…? 団長はどうしたか?」
「何かフェイの様子おかしかったから…飛び出して来ちゃった」
息を落ち着かせながら笑顔で言う。
「――!!」
フェイタンはそのを愛しく思い――抑えきれずを抱き締めた。
「フェ、フェイっ!?//////」
「…ワタシは――」
「、どうしたんだ」
声にフェイタンは反応し、顔を上げる。
その腕にさらに力が入った。
「! …フェイタン…を離すんだ」
「嫌よ。…もう遠慮しないね」
「ちょ…どうしたの? え、遠慮って? フェ、フェイっ?//////」
「ワタシ、の事好きになたみたいね」
「へっ…!?///」
「だから団長には渡さないよ」
「わ、渡さない…っ!?//////」
「お前がを口説こう等10年早い。、こっちに来るんだ」
「え…っ…えぇ…っ!?//////」
は混乱してあたふたとし出す。
「団長、を困らせるんじゃないね」
さらに腕に力を入れるフェイタン。
「い、痛いよ、フェイ//////」
がそう言うと、フェイタンは ばっと腕を離した。
「…すまなかたね」
「ほら、来るんだ」
は二人の間に立ち、深呼吸してからクロロの方を向いた。
「――ごめんなさい」
「!」
「あたし、クロロの事好きだよ。だけど、それは愛じゃない。…尊敬してる、いいお父さんみたいなの」
「お、お父さん…?;;;」
クロロはのセリフにショックを受ける。
「本当に、ごめんね…あたしが好きなのは、――フェイだから…」
「!!」
フェイは目を見開き、言葉を失う。
「…そうか、ならもう何も言うまい…」
クロロはコートをなびかせ、その場を後にした。
「………?」
「!//////」
クロロの気配が消えた頃、フェイタンは口を開いた。
はまだフェイタンに背を向けたまま、気まずくて振り向けない。
「ほ、ホントだよ?//// あたし…フェイの事…っ////」
「…――」
「!」
フェイタンはの腕を引き、自分の方を向かせるようにして抱き締めた。
「…ちゃんとワタシの方見て言てほしかたよ」
「だッだって恥ずかしいよ…//////」
「じゃぁワタシがもう一度言うよ」
フェイタンはの頬を両手に包み込み、視線を合わせる。
「を愛してるね」
は涙を溜め、フェイタンに言葉を紡いだ。
「…大好き…ッ」
その言葉に、フェイタンの表情が緩んだ。
涙で目をつぶっているには、見えていないが。
「…ひく……あ、あれ…?」
涙で濡れた頬に、桜の花びらが付いていた。
「……」
「ひゃっ!?//////」
フェイタンはの頬を舐め、その花びらを取った。
「…次の季節も、こうやてと過ごせたらいいね」
舌先についた花びらを指でつまみながら、フェイタンは不敵に微笑んだ。
「…そうだね//////」
そして願わくば、
その次の季節も
その次も
変わらず君の笑顔があるといい。
end.