彼女は恐れる事を知らない。








彼女は楽しむ事しか知らない。






少なくとも、














世界(蜘蛛)は――彼女を中心に回っている。
























<彼女には逆らえないo>























「最近、見ないねー…」




「今頃地球の裏側にでも居るんじゃない?」




「でもだいたいこの時期に帰ってきますよね」









団員bO――




彼女は一言で言うと……















「――オレ様ルールw 今日は朝まであたしを祝え!!!」














騒がしい。


































「久しぶりだな、



「おっすクロロ! みんな元気そうじゃん?」





の帰還に、団員が集まった。


彼女の発言通り、酒やつまみで帰還祝いのパーティーだ。







「いきなり十八番の『オレ様ルール』が聞こえたからびっくりしちゃったよー」


「わざわざ絶までして皆の背後を取ったのよ? 叫ばないと損よ、損!」





「今度は何処まで行ってたの?」


「んっとね〜、地球を半周してUターン♪」







綺麗な笑顔が皆を照らす。



それだけで皆の心が和んだ。










彼女が『蜘蛛』に束縛されず、自由気ままに放浪の旅を続けていられるのは、その人徳からだろう。





しかし只唯一、フェイタンは気に食わなさそうにしていた。












「それよりさぁ〜、みんなまだヨークシンの仮宿いてくれて良かったよ〜」



「…



「だって流星街遠いでしょ? みんなそっち行ってたら、あたしここ来ても独りじゃんっ」



「……



「で、最近何かレアなお宝でも盗った?」






!!!」





フェイタンは無視された事に腹を立て、声を張り上げた。











「おう、フェイタンじゃん」



「お前、ワタシ無視するとはいい度胸ね」



「無視じゃないよ〜。確信犯だから



「殺されたいか。解たね、殺されたいな?」



「はっはっは。フェイタンにあたしが殺れるかな〜?」







「二人共いい加減にしろ」





クロロに頭をはたかれ、二人は口論(?)を止めた。










「痛いな〜。何すんだよ〜」



「喧嘩両成敗だ。…折角帰ってきたんだ。少し大人しく休め」






クロロはさっきはたいた頭を撫でた。







「はいはーい。……それよりさ、次の盗み、あたしも参加していい?」



は上目遣いでクロロに微笑みかけた。








「何っ!? も参加するの!?」


「楽しそうだねェ…☆」


「いいじゃねぇか。なぁっ、団長!」





クロロの返答も聞かず、男達は勝手がってに喜びを分かち合う。









「…構わんが、次の盗みは明日だぞ?」



「丁度いいわ。……早く新しい力、試したいもの」






不敵な笑みで呟く






「新しい力? 念能力か?」



「ふふんw ヒ・ミ・ツw」





は、明日試すわ、と言い、自室に向かった。
























「あっれまぁ。綺麗に片付いてる」



約一年ぶりに帰った部屋には、埃一つ無かった。







「シズクが毎日掃除してたからね」




いつの間にか部屋に入ってきていたフェイタンが言う。






「そっか。んじゃ後でシズクに礼言わんとね〜」




シズクにしては珍しく、を姉のように慕っているのだ。









「そんで…なァんでいるのかしら? フェイタン?」



と目が合ったフェイタンは、少ししてから視線を逸らした。







「あ、目ぇ逸らしたな? フェタンの負け〜」



「何で野生本能発揮してるか」





フェイタンは不機嫌な声でベッドに座った。










「……折角、久しぶりに帰て来たから……ちょと、側居たかただけね」



「!」




マスクに埋もれた口から、寂しそうな声が響いた。








「……」



はフェイタンの隣に座った。








「……ただいま」



そしてフェイタンを、ぎゅっと抱き締めた。








「…居ないと、蜘蛛に活気無くなるね」



「そうなの? …ありがと、ね」









フェイタンだって、を慕っていないわけじゃない。




むしろ、その想いは誰よりも強かった。










 















「この美術館?」








珍しく、クロロは団員と共に並んでいる。


その先頭には、






「…そうだ」




の問いかけで、クロロは隣に並んだ。



近くのビルの屋上から、その大きな美術館を見下ろす。









「夜中だってのに…照明ガンガンに照らしてんの。…自意識過剰だね〜」




そういうの表情は、今にも飛び出しそうなくらい、輝いていた。











「警備はあたし一人で事足りるわ。皆は速攻で中に進入して?」



「おいおい、いくらでもそれは無理だろ!?」




「あらウボォー、どうして?」




「此処はどこよりも警備が固いんだぜ……オレにも暴れさせてくれよぉ……!!」





見る見る内に、ウボォーのオーラ量が溢れかえる。









「ダ・メ。……試したい力があるって、言ったでしょ? まだ、見せてアゲナイw」



妖しく笑うに、そこにいた誰もが惹かれた。












「さぁ……始めましょう?」




しかし、始まりを告げるの声で、皆美術館へと跳んでいった。









「さて、と……」


そしては、忍び込んだ皆とは対照的に、堂々と警備の中へ歩み寄っていった。
























「…だな」




異変に気付いたのはクロロ。



難なく全ての宝を盗み終え、周りに目をやると、外のまぶしい照明が消えていた。









「…にしても、あれだけの警備が、一人も来ねぇって…どういう事だ?」



が試している力……見れるかもしれない」






そう言ったクロロを筆頭に、全員入口へ走った。























「!!!」




正面玄関へ着いた皆が見たのは、




肉塊と化した、大量の警備隊。









そして、







「…ハァィ? 遅いお着きで」








電源の落ちた、どでかい照明の上に座っている、だった。












「つい数分前に片付いたわ」




照明から飛び下り、皆の元へやって来る


頬には少量の返り血が付着していたが、彼女が戦ったような形跡は無い。









「…どうやったんだ?」



クロロは興味津々に問う。








「やった……というか、あたしはあの上からずっと見下ろしてただけよ? …殺し合いを」




何とも楽しそうに微笑むの頬を、フェイタンが拭う。







「アリガトw」



その時の笑顔は、いつもの安心する笑顔だった。























仮宿に帰ってからは、ずっと宴会騒ぎだった。





「……」




はその様子を、高い瓦礫の上から微笑みながら見下ろしていた。















そんなの隣に、フェイタンが座った。





「皆、いい絵盗ってきたねー」


立てかけてある絵画を眺めながら、は赤ワインの入ったグラスを傾ける。







、変わて無いね」


「人はそう簡単には変わんないよ。…表面がどんなに変わっても、内面はね」




残りのワインを飲み干し、はグラス越しに遠くを眺めた。










「あたしは、フェイタンが変わってなくて良かった」


「!」





そのセリフに驚き、フェイタンは隣のを見た。







「………」






穏やかで、和やかで、健やかな……




安心できる、フェイタンの好きなの表情。












……」



「え……」





フェイタンはその感情に思い余り、勢いよくを押し倒した。






「!!」





その拍子で落としたグラスが割れ、その音で団員は二人の方を振り向き――







「「「!!!!!!!!!」」」








振り向いた時にはすでに、フェイタンはにキスしていた。









「フェイタン、何してる!!!!」


「ちょっとアンタ!! から離れな!!」


「デメちゃん、行くよ!!!」




その行為に、皆一斉に飛び上がった。





「んぅ……っは…」


同時に、唇を解放される










「……っ――オレ様ルール!!!!!!」







広場いっぱいに響き渡る声に、誰もが動きを止めた。












「フェイタン……っ!! ――どけっ!!!!




「!!」





の命令が響いた瞬間、フェイタンはから弾き飛ばされた。










「な、なに…!?」



フェイタンは受身を取ると、何が起こったのか解らずに呆然と立ち尽くした。








「今のは……」


「念…!?」





「……そだよ」


赤い顔をしながら、は呟いた。







 
「あたしの新しい力。その名も『オレ様ルール』。相手からキスされることで発動可能。好き勝手にできちゃいます。ただしキス一回につき命令一回」




は瓦礫を降りる。









「警備隊もこれ使ったんだけどー、あたしからキスしちゃ意味無いから、大変だったのはそれだけだったんだけどね〜。ちょっと脱いでみたりして誘ってみたり




「!!///////」






誰もが顔を赤らめる中、フェイタンは怒りに満ちた表情をしていた。










「お前……ワタシとの約束…忘れたのか……?」



「約束?」




クロロは訳も解らず聞き返す。








「あぁ、あたしが最後に出てった時の? 覚えてるよ? だからこそのこの力じゃん。…自分の身を守るためー? っつーか、守れなかった時用? みたいな」




「で、約束って?」



痺れを切らしてシズクが尋ねる。










「…フェイタン以外の男にキスさせない、喋らない、触られるなんて持っての外……だったっけ?」




「な、何それ……」








「あ、そっか、皆知らないんだ。あたし達半年くらい前から付き合ってんだよね





「「「!!!!!!!」」」

































嵐のような彼女には、









同じく嵐のような男つき。


















結局の所結論は、























彼女には逆らえない。




















 






その後、








「…で、他の男にキスさせたわけか」


「ギクッ」





「…お仕置きね」






フェイタンはの部屋で、何度も何度も唇を重ねた。












「…念使たら許さないよ」



「解った。今は使わない」




「………今は?」










「この念ね、蓄積できるの




「……………」

















end.
























††あとがきという名のいいワケ。††



何が書きたかったのか…

あ、そうそう『オレ様ルール』が書きたかった。


ちなみにあれは私の技ですo(ぇ





「…そんな奴死ねばいいじゃんo」


「出たっ、皐月のオレ様ルール」



…実話ですo