「…」
「何? フェイタン」
「もう、あの男に会うんじゃないね」
<自主監禁。>
「…………はぁ…」
あたしはここで何をしてるんだろう?
昔から仲の良かったイルミとは、よく会っていた。
それが恋人のフェイタンにバレて……
だからって!
「…こんな血生臭い所に閉じ込めなくてもいいじゃない!!」
そう、あたしは今、フェイタンの拷問室で、手錠に繋がれている。
『もう、あいつに会うんじゃないね』
『へ…何で?』
『何でもよ』
『いいじゃない、昔からの付き合いなんだから…』
『昔から…?』
『うん。えっと〜…五年前くらいかな… ッきゃッ!?』
フェイタンはあたしの腕を強引に引っ張り、地下へ降りる。
『!! ま、待ってよ! ここって……』
『いいから入るね』
あたしは放りこまれるように部屋に入れられ、手錠で繋がれた。
『あいつに会わない言うまで、ここで反省するといいね』
そして、今に至る。
「全くさー、フェイタンってば過保護なんだよ! 友達と会って何が悪いのかなー」
「」
急に呼ばれた気がして振り返る。
「…ってイルミ!!??」
「こんばんは」
「…え、もう夜なんだ?」
「うーん…そうなんだけど、リアクションするとこ間違えてるよね」
入口からずかずかと入ってくるイルミ。
「…やっぱり、こんな事だと思ったよ」
イルミは右腕の手錠を壊しながら言う。
「キミの彼が急にオレを殺しに来てね。何かと思って来てみたんだけど……さ、そっちの手も出して」
「う、うん…」
「何してるか」
ばんっと扉が開き、必至な顔をした、いかにも怒り全開のフェイタンが現れた。
「フェイタン」
「に何してるか」
「何って…助けてるんだよ」
「余計な事するんじゃないね。離れるよ」
「嫌だね。キミこそと別れなよ。はオレがもらう」
「…はい?」
あたしはイルミの言葉に耳を疑い、隣に立っているイルミを見上げた。
「…もう話する気も無いね。…殺すよ」
「こっちのセリフなんだけど」
イルミの言葉が終わった瞬間――すでに二人は一戦を交えていた。
「や、やめてよっ!! ちょ…ちょっと、ストップ!!!」
あたしの言葉に、何とか止まる二人。
「ね、ねぇ…話解んないよ。何なの?」
「何って…だから、オレの事好きなんだけど」
「ワタシがそれ止めるの当然ね」
「好き……?」
「さ、続き」
「解てるよ。行くね」
「だぁ!! もう待ってってば!!!」
もう一度静止を入れられ、イライラしているフェイタン。
「今度は何か」
「ちょっとフェイタン待ってて。……イルミ」
あたしはフェイタンをなだめ、イルミの方を向き直す。
「あたし、フェイタンが好き。だから、あなたの気持ちには応えられない。
…仮にあなたがフェイタンを殺したら、あたしはあなたを友達としてすら見れなくなるわ」
「……」
「助けに来てくれて、有難う。だけど、あたしは自分の意志でここにいる。フェイタンがここにいろって言うならいるから…ごめんね」
「……失恋?」
「ぶ…っ」
イルミから出た可愛い発言に、あたしは失笑した。
「いいからささと行くね。今なら帰してやるよ」
「…それはどうも。…じゃぁね、」
案外あっさりしてるなぁ、とが思いつつ、イルミは部屋を出て行った。
「……ねぇフェイタン。不安だった?」
「!」
「あたしがイルミに盗られるんじゃないかって…怖かった?」
「…何が言いたいか」
「いや? …あたしの気持ち、信じてもらえてなかったんだなーって… !!」
瞬間。
「フェ…!!」
目の前にはフェイタンがいて、
「んぅっ」
唇を奪われていた。
「や…ぁ……ッ」
深く、苦しい程に延々と、
フェイタンは執拗に舌を絡め続けた。
「…減らず口は聞きたくないね」
「は、はぁ…////// ご、ごめん……」
「…ちゃんと信じてるよ」
「え?」
左腕の手錠を外す音と重なり、何て言ったのか解らなかった。
「…何でもないね」
「えー、気になるー」
「…減らず口て言たね」
「二回も!?」
フェイタンは形を求め、
あたしは気持ちを求める。
それでも、
あたしはフェイタンにずっと、自分の意志で繋がれていたいから。
end.