最近、の様子がおかしい。
気付いたのはフェイタンだけではなかった。
<コドウ。>
「…大丈夫か?」
「え…何が?」
どれだけ心配しても、彼女の返事はいつもの調子で。
「最近、ちゃんと栄養取れてないね」
「あぁ…食欲無くて。ただの夏バテだと思うよ」
にこっと笑っては言う。
ここの所、脂っこいものを口にせず、さっぱりとしたものを好んで食べていた。
夏バテと言うならそれも解る。
「なら何故吐くか」
そう、たった少量でも、折角食べたものをもどしてしまうのだ。
「……さぁ」
ははぐらかすようにその場を後にした。
「この暑いのに、あれだけ食べてないって…ヤバくない?」
に内緒で、緊急会議が開かれた。
「ですよね……あまりに不健康です」
シズクは医学書に目を通しながら言う。
「ていうか…まさかと思うんだけど……」
パクノダが冷や汗を浮かべながら言う。
「どうした、パク。言ってみろ」
「………妊娠?」
ばっっっっっ!!!!!!
瞬間、全員の視線はフェイタンへ。
「…何か」
「お前…したのか?」
フェイタンとが付き合っている事は、皆知っている。
「…何をね?」
「だっ、だから……と…その…」
「……あぁ、セ…」
「言うなぁぁ!!!」
一斉にフェイの口を抑える団員。
は旅団のヒロイン的存在なのだ。
「お前な…いくら何でも……何で避妊しなかった?」
「……避妊て何か」
その言葉に、全員頭を抑えた。
「でっ、でも! …まだ、そうだと決まったわけじゃ…」
「そうだよ!! まだ本人の口から聞いて……」
「え、できてるけど」
「!!!」
広場の隅から、声が響いた。
「っ!?」
「…はぁィ?」
角から顔を覗かし、は皆の元まで歩いてきた。
「…あぁあ。バレちゃった」
「え…本当、なの?」
シズクはのお腹を見つめながら言う。
「…本当だよ」
「何故言わなかたか」
フェイタンの低い声が響き、辺りは静まり返る。
「……『産むな』…って、言われるのが怖かったから」
は観念したように話し出した。
「…だってフェイタン、子供、嫌いそうだし。…産んじゃた後なら、仕方なく認めてもらえるかなぁって」
「……」
一同は言葉を失い、の顔を見つめた。
いつもとは違う顔つき。
それは、母親の決意。
「ワタシとの子供なら話は別よ」
フェイタンはの側まで行き、お腹に触れた。
「ワタシ達の子供なら、愛せるよ」
「…フェイタン……っ」
張り詰めていたものが流れるように、の頬を涙が伝った。
「かなり目立てきたね」
日の当たる屋上で、二人は日向ぼっこしていた。
「うん。…もうすぐ、フェイタンもお父さんだねー…」
穏やかに微笑むの笑顔を、フェイタンは愛しく見つめた。
「ここに入てるか?」
「そうだよ。……耳、当ててみる?」
に促されて、フェイタンは耳を当てる。
「……肉がぶつかるような音がするよ」
「あははっ。ヤな言い方しないでよ〜」
フェイタンの発言に笑う。
フェイタンは耳を当てたまま離れない。
「でもね…それが『生きてる』って…事なんだよ」
「ワタシ達みたいにか?」
「そうだね。……でも、そうやってると、何だか…フェイタン、お兄ちゃんみたい」
くすくすと笑うに、フェイタンは眉をしかめる。
「誰のか?」
「この子の」
「ワタシは父親ね」
少しむっとした声で言うフェイタン。
「はいはい。……お父さん」
「やめるね。何だか恥ずかしいよ」
フェイタンはにキスをすると、もう一度お腹に耳を当てた。
命の鼓動に耳を傾けるように。
そうやってまた、フェイタンにも、大事なものが増えていく。
■オマケ■
「ホラ、お父さんとお風呂入ってきなさい」
「やだー!! パパ抱きついてくるもんっ」
「!!!」
たまにそんな、夢を見る、
フェイタンなのでした。
end.