それは散り際の潔い、
それでいて儚い、
人の命のようで…
<牡丹花火>
「フェイタン、ちょっと面貸しな」
急にマチはフェイタンを念糸で拉致した。
「お前…何してるか解てるのか? 殺すよ」
「馬鹿。の頼みなんだから、命張るっつの」
「の…?」
は団員全ての信用を買っている。
それほどに魅力的で、カリスマのように人を引き付ける。
そんなの頼みを、断る奴はここにはいない。
「だからて…何故ワタシが…」
フェイタンを、除いては。
「そう言うと思ったから拉致ってんの」
マチはフェイタンを引きずりながら言う。
フェイタンも、を信用してないわけではない。
信用に値する人間だと認めているが…
それとこれとは、別らしい。
――それがフェイタンのいい所なんだよvv
マチは前にが言っていた言葉を思い出した。
(いい所…なのか?)
疑問を感じつつ、マチはある一室にフェイタンを放り込む。
「ほら、ソレに着替えて」
「…浴衣?」
黒い浴衣を手にし、フェイタンは呟く。
「着付けできないとか言わないでよね」
マチは念糸を解くと、部屋を出て行った。
数分後。
「……」
浴衣を着たフェイタンが部屋を出ると、
「フェイタン!!」
びっくりした顔をしたが――可愛い浴衣を着ていた。
「なんだ、ちゃんと着れたんだね」
隣でマチが、の浴衣を少し直しながら言った。
「マ、マチちゃん…これって…?//////」
「マチ、どういう事か」
「…『フェイタンと花火見たいなぁ』っての独り言の結果?」
「え…っ//////」
「それ『頼み』て言わないね…」
「いいじゃん、行ってきなって」
マチは二人をアジトから追い出し、溜め息を着いた。
「全く…世話が焼けるね」
空一面に広がる、色とりどりの光の粒。
ざわつく民衆を見下ろすように、二人はひと気のない丘の木の上に座り、花火を見ていた。
「きゃーv 綺麗綺麗綺麗だよーvv」
登っては消えていく花火を見て、は興奮を抑えられずに叫んだ。
「、そんなにはしゃぐと着崩れするね」
「花火ははしゃいだ方がお得だよ? ホラ、なんだっけ……たまや?」
「それは叫ぶやつね」
そんなを愛しく思うフェイタン。
「でもさ…花火って、儚いね……」
急に声のトーンが落ちる。
「すぐ消えちゃうよね。いつかは、消えちゃうよね…?」
「? どうしたか?」
フェイタンはの肩を掴んで顔を覗き込んだ。
「!」
その頬に、涙。
「…?」
「あたしもさ…? きっと、その内……」
「……」
そういうの目尻に、フェイタンはキスをする。
「!!//////」
「ワタシがずと側にいるから、は消えないよ」
「…本当?//////」
「嘘つかないね」
尚もこぼれ落ちる涙を、フェイタンは唇で受け止める。
「の涙は、花火より綺麗ね」
耳元で、小さく呟く。
「綺麗な涙を何て言うか知てるか?」
「え……解んない…」
「――牡丹花火ね」
儚くて、綺麗で、
いつかは朽ちるかもしれない。
それでも、それは、
この腕の中じゃない。
end.