教訓。
落ちてる物は拾わない。
<メガネっ娘の条件o>
それは、めちゃくちゃ気持ち悪かった。
「……」
は引いた目をしながら、鳥肌を感じて動けずにいた。
「御主人様〜w」
「きゃぁぁッ!!!」
街に買い物に出かけたは、大通りで見かけた変態を見て、かなりやる気を削がれていた。
「アレが今流行のオタッキー……やなもん見た。…早く帰ろ」
「御主人様ッw」
「ッッ!!!!」
関わりを持つ前に帰ろうとしたに、後ろから抱きつく変態。
「こん…の……気色悪い!!!!!!!」
思い切り蹴り飛ばす。
瞬速の蹴りは民衆の悲鳴の中、変態男の首を鮮やかに飛ばした。
「あぁもうッ! 何だってのホントに……!!!」
視線を鬱陶しく思いながらも、は足元に落ちていた何かを見つける。
「ん?」
それは男のかけていた眼鏡だった。
男の血が少量ついていたそれを、は拾った。
「……」
何故かそのまま捨てる事ができず、は眼鏡を持ち帰った。
アジトに着き、扉を開ける。
「、帰たのか」
入ってすぐの広場では、フェイタンが本を読んでいた。
「ただいまー。聞いてよ、変な事があってさ……」
「変な事?」
自分で言った言葉で、眼鏡を持ち帰ったことを思い出した。
「その眼鏡、どうしたか?」
「あぁ、ちょっと殺しちゃった人の」
フェイタンは適当に相槌を打った。
「…ん? これ、度が入ってない……」
はその眼鏡をかける。
「!!!」
一瞬の眩暈で、はその場にひざをつく。
「!?」
フェイタンは本を投げ捨て、の元へ近寄った。
「、大丈夫か?」
「へ、平気です、御主人様」
「………」
フェイタンは言葉の違和感に動きを止めた。
「今、何て言たか」
「? 平気と申しました。ご主…」
「ワタシはお前の主じゃないね」
「おい、どうしたんだ」
騒ぎを聞きつけ、団員がぞろぞろと集まってくる。
「お、、イメチェンか?」
「これは拾いました。フィンクス様」
「……様?」
全員、目を丸くする。
「御主人様、コレ、似合いますか?」
「「「……御主人様?」」」
頭でも打ったのだろうか……
団員はの心配をしだした。
「あれは……」
「団長、何か知ってるの?」
「…中世ヨーロッパに出回っていた幻の…『呪われた眼鏡』……」
「呪い…?」
「主人に恋をしてしまったメイドの眼鏡だ」
「御主人様……」
全員、ナルホドと相槌を打つと、を取り囲んだ。
「フェイタン、の眼鏡を取れ。援護する」
団長がフェイタンに言う。
「……」
「フェイタン?」
「…これはこれで、面白いね」
「……は?」
「、ワタシの部屋に来るか?」
「はい、御主人様ッvv」
「待て待て待て!!!!」
それを必至に止める団員達。
「何か」
「何か、じゃない!! 無理矢理でも奪い取るぞ!!」
ノブナガの声に、全員一斉に襲い掛かる。
「きゃぁっ」
「お前等何するか! やめるね!!」
そしてもみくちゃに攻防戦が続き…
「あ!」
何かの拍子で、から眼鏡が落ちる。
全員がほっと一息ついたのも束の間――
「!!!」
その眼鏡は、フェイタンの顔へ落ちたのだった。
「あれ……あたし、何して…」
は辺りを見渡し、尋常でない空気を感じ取る。
そして自分の行為を思い出した。
「うっわ、あたし恥ずかしいことしちゃったよ……」
「……恥ずかしがってる場合じゃないよ。……フェイタンに…」
シズクの声でフェイタンを見れば、眼鏡はフェイタンの顔へかけられていた。
「フェ、フェイタン……?」
は恐る恐るフェイタンの顔を覗き込む。
「!! 近づいたら危な……!!」
団長の静止にも関わらず、
「!!」
フェイタンはにキスをした。
「マスター……何が望みか?」
ニヤっと、不敵な笑みでを見つめるフェイタン。
フェイタンでは眼鏡に着いた血痕さえ、ナイスアイテムなまでに似合っている。
「え、あ、あたしッ!?//////」
「貴女しか、ワタシの主人にはなれないね」
尚も迫ってくるフェイタンに、は押し切られて押し倒される。
「なるほど…攻めタイプのメイドか……」
「団長、何分析してんの…」
「ていうか止めなきゃッ!!」
シャルが叫んだ頃には、フェイタンはの上に馬乗りになっていた。
「…マスター……望みは?」
「とっ、ととととりあえず眼鏡外してくんないかなーッ???//////」
「…それでいいのか?」
「う、うんッ! モチロンですよ!?//////(だって心臓に悪い…//////)」
するとフェイタンは、あっさり眼鏡を外した。
「……ワタシ、何言てたか……」
顔を抑えて俯くフェイタン。
「え、えと…フェイタン、元気、出して? ホラッ、あたしも似たような目にあったし…ッ//////」
の励ましを聞き、を見つめるフェイタン。
「…のは、楽しかたね」
「え…//////」
そしてもう一度、に眼鏡をかけさせようとするフェイタン。
「やめろーーーーー!!!!!!!!」
皆が必至に止めたのは、言うまでも無い。
「……冗談の解らない奴らね」
(絶対本気だった…!!!!!)
眼鏡は勿体無いが、破壊、ということでこの世から消えた。
しかし、が、そしてフェイタンが、何故互いを主人としたのか…
その理由は、互いに気付かないままなのであった。
end.