「フェイタン、明日の盗み、あたし達ペアだって」
は嬉しそうにフェイタンの元へ駆け寄った。
しかしフェイタンはその腕を抜けるように、自然と距離を取る。
「…団長の所行てくるね」
「え?」
「と組みたくないよ」
<dirty love>
の思考が止まる。
「何…で……ねぇっ」
「鬱陶しいね」
フェイタンは、近寄ってくるを軽く突き飛ばし、その場を後にした。
フェイタンの背を見送り、はその場に俯く。
「…嫌われてる……よね…」
涙がこぼれるが、気付かない程に滅入っていた。
一方、フェイタン。
「――駄目だ」
クロロは溜め息と共に言葉を吐いた。
「…何故か」
「お前こそ何故だ? この前まで、と普通に仕事していたじゃないか」
「…その時、に怪我させてしまたね」
フェイタンは声を一層低くさせる。
「ワタシとの仕事、大抵前衛ね。これまでは、守りながら戦えてたよ。だけど、前は守れなかたね」
その時の事を思い出してか、フェイタンは拳を握り締めた。
「……に、ちゃんと話したか?」
「!」
「がお前に望んでいるのは、そんな事じゃない」
クロロはそう言って、フェイタンを追い出した。
「……」
フェイタンは考える。
が自分に求めている事?
考えても解らない。
「! …」
と別れた廊下を歩いていると、同じ場所に、はいた。
「……ペア、外してもらえたの?」
「…駄目だたね」
「そう……」
明らかに元気がない。
「…?」
フェイタンはの肩を引き、自分の方へ向かせる。
「!」
頬を流れる、涙。
「……が、ワタシに何を望んでいるか…ワタシには解らないね」
「…解んないよ」
は自分の肩に置かれたフェイタンの手を払う。
「フェイタンには解んないよ! 人の気持ちなんかまともに考えた事もないフェイタンに…あたしの気持ちなんて解るわけない!!」
「…?」
「!」
は口を抑え、視線を外す。
「ごめん……言い過ぎた」
「涙は悲しい時に出てくるね」
「え…?」
「痛い時にも出るけど、それは痛みが悲しいから出てくるね」
「何なの…?」
「…は今、悲しいから泣いてるね」
「!」
は初めて、自分の頬を流れているものに気づく。
「ワタシには…今が悲しんでいる事くらいしか、解らないね」
真っ直ぐに、フェイタンの瞳がを捕らえた。
「…あたしは……フェイタンと、ペアじゃなくなるのが、悲しい」
「この前、に怪我させてしまたね。を守れなかたからペア外れたいよ」
「あたしは守られたいわけじゃない」
も、フェイタンと視線を合わせた。
「好きだから一緒にいたいの」
静かに流れる涙が、存在感を纏う。
「…ワタシも、が好きだから、守りたいね」
フェイタンはの涙を拭い、そっと、触れる程度のキスをした。
「じゃぁ、守って……フェイタンはあたしが守るから」
「ハ、惚れた女に守られる程弱くできてないね」
そう言うと、は笑った。
その顔を見て、フェイタンも表情を柔らかくさせる。
次の日。
仕事中、は転んで少し足を切った。
すろとフェイタンは、自分で足に傷を入れた。
「なっ、何してるのフェイタン!!」
「同じ傷作っただけね」
「…それって、あたしが死んだら、後を追ってくれるって事?」
「…は馬鹿ね。ワタシが守てるのに、が死ぬなんてありえないよ」
フェイタンはの耳元で、ぼそっと呟いた。
「―――愛してるね」
それは不器用な、
フェイタンの愛のカタチ。
end.