「お前等、霊を信じるか?」
「何、いきなりどしたの、団長」
「いや、『死者の念』が、一般人には『霊』と呼ばれることがあるが…実際、本当に『霊』がいるのかどうか気になってな」
クロロは考え込むように本を閉じた。
「よし、肝試しといこう」
「……えぇっ!?」
<幽霊を信じる?>
「なぁんでこうなるかなぁ〜……」
は暗闇の中、溜め息を着いた。
「何ね、お前、怖いのか?」
隣ではニヤっと笑って言うフェイタン。
「こっ、怖くなんかないもんっ!!///」
(怖い言てるようなものね……)
の気持ちを悟るように、フェイタンは鼻で笑った。
「あっ、今鼻で笑ったでしょ!! もぅッ、フェイタン!!!///」
「じゃれ合いはいいから早く行かない?」
今度は後ろから、マチの溜め息が聞こえた。
肝試しに参加しているのは、、フェイタン、クロロ、マチ、シズク、シャルナークだ。
「で、お前等は霊を信じるのか?」
信じない派。
シャル
「いるわけないよね。携帯繋がりのやつだって、気にしてたら携帯持てないよ」
マチ
「ホント、団長ってたまに何考えてるのか解んないんだけど」
信じる派。
シズク
「でも、いても特におかしい要素は無いと思います。実際、世界中には説明できない謎が多くあるわけですから」
クロロ
「死者の念とは、むしろその死者の霊なのではないかと思う部分があってな…」
「フェイタンは…やっぱり、信じてない系?」
は恐る恐る聞いてみる。
「…いようといまいと関係無いね。ワタシに害なそうとする奴、全て敵よ」
もっともらしい意見だ。
「…は、信じてそうね」
「あたしっ!?」
「あぁ、でもそんな感じ」
「しかも恐いんですよね?」
「こ、怖くなんか…っ///」
(((そこが可愛いんだよ……)))
顔を赤らめるに、全員が頷く。
「…でも…そうだね。そんなのいない方がいいんだよ、きっと」
「?」
急に声色を変えるに、全員違和感を感じた。
「……んーん、何でもない」
はにかっと笑い、暗い道を歩いた。
「それにしても、不気味なお屋敷ですね」
山中にそびえる、古びた洋館の前に立ち、シズクが声をもらした。
「ここは念使い同士が殺しあった洋館らしい。出るにはもっともな場所だ」
「………」
「…、やぱり変よ。怖いなら、帰ても…」
「大丈夫、だから……」
はフェイタンの服の袖を掴む。
「だから…こうしてて、いい……?///」
「……構わないね」
フェイタンはふいっと顔を背けると、その体制のまま、洋館の門を開いた。
ギシギシと床が鳴る。
その度に、は身体を震わせた。
「…、びくびくしすぎね」
「そんな事言われたって……」
「ついたぞ。ここだ」
クロロの声に前を見れば、そこはダンスフロアのような広い部屋。
「…嫌」
「?」
「あたし、ここは嫌」
かたくなに拒む。その表情は明らかに違っていた。
「どうしたね? お前、変よ」
「……団長、言ったよね? ここは、念使いが殺し合った場所だって」
「…ああ」
「…渦巻いてる。怨念や、邪念が……。入れば、殺されるわ」
「簡単に殺されるような奴はここにはいないだろう」
呆れたように言うクロロに、は軽く溜め息を着く。
「…あたしがいれば、ね」
「?」
さっきまで拒んでいたが、自分から部屋に入っていく。
「なんだ…?」
すると、の周辺だけ、空気が清んでいた。
「…あたしの側、離れないで」
振り返って言うの周りを、全員取り囲む。
『……人間…人間、だ……』
部屋に響き渡る、声。
「誰だ?」
「誰もいないわ。あたしを通して聞こえるだけよ」
「を……?」
『…だと……? お前、あのか……?』
違う声が響き、は顔を伏せる。
「あたしはね…ここにいたの」
「!」
は思わず、握っていたフェイタンの服を強く握った。
「あたしは、ここで勝ち残った、たった一人」
『…………!!』
『殺す…殺させろ……!!』
「…あなた達には、無理よ」
『お前に抉られた目が痛む……!!』
『今でも覚えているぞ…お前への恨み…!!』
「…気付きなさい。あなた達……もう、死んでるんだから」
の声に、霊圧が高まる。
「ねぇみんな、聞いて。あたしはね、霊術師の末裔だったの」
そう言って、は右手を掲げた。
「あたしはある日、ここに住み着く念使い達を一掃するよう命令を受けた。だけどそれは簡単な事じゃなかったわ。あたしはこいつらに呪いを受けた」
「呪い…?」
「――こいつらを除霊すれば、…あたしの念は、消える」
「!」
瞬間、掲げた右手に光が灯る。
「やめるね、!!」
「駄目だよ。引き受けた事は最後までやらないと」
どんどん、どんどん、場の霊圧が下がっていく。
「もう……一緒にいれないね……」
ふっと光が消え、その場に倒れる。
「!!」
フェイタンはを抱きかかえ、顔を覗き込む。
「…もう………フェイタンに、会えない……っ」
ひと筋の涙が頬を伝い、は意識を手放した。
「ん……」
「起きたか?」
「!」
目が覚めて、最初に聞こえたのはフェイタンの声だった。
「なん、で…あたし、まだ、ここに……」
「お前が此処いるのに理由など無いね」
「だってあたしっ、もう念使えないんだよっ!?」
必至な顔は、悲しみに歪んでいた。
「…がワタシの側にいるのに、念の有無は関係無いね」
「!!」
「むしろが念持てると、団長達逃がせてくれないね。だから今なら言えるよ」
フェイタンはの頬に触れた。
「ずと、ワタシの側にいるといいね」
「フェイタ……っ」
流れる涙が、フェイタンの手を伝わって落ちる。
フェイタンはその涙を拭い、にキスをした。
「で、結局お前、本当に幽霊駄目なのか?」
「…ぎくっ」
end.