執着される事は恐ろしかった。
こんなにも狭い部屋の中で、
私と貴方は2人きりなのだから。
< Baby I think... >
薄暗い。
薄暗くて、雰囲気は冷ややか。
そんな一室に私達はいる。
そして相変わらず、目の前には微笑む貴方がずっと私を見つめていた。
「…今日で何日目?」
「丁度一週間だねぇ☆」
空を切るような私の声に相対し、彼――ヒソカはさらっと答えた。
彼に誘拐されてから、早いものでもう一週間とは。
「キミは眺めてるだけでも飽きないねぇ◆ とても綺麗だw」
「そりゃどーも。で、いつ帰してくれるの?」
「ボクが飽きるまでw」
いっそ首を絞めてやりたくなる。
だけど私にだって分かる。この人、普通にヤバイ。
手を出せば…――確実に殺されるだろう。
「何が不満なんだい? 」
「自由になりたい」
「別にいいじゃないか、ここは楽園だよ? キミにとっては外より自由に行動できると思うけど」
ヒソカは腰掛けていたソファーから立ち上がり、私の方へ近づいてきた。
「ボクのイヴになってよ、」
右手の甲に落とされる、唇。
――私は執着を恐れていた。
執着される事も、する事も恐れた。
この部屋を一歩出たら、そこには偽善と醜悪が詰まった現実が広がっている。
私には、それが一番恐ろしかった。
夢の中でいつまでも眠って居たかった。
覚めない夢が欲しかった。
例えばそう、そんなときに出会った、
貴方のような。
「ヒソカが、アダム?」
「そう、ボクがアダムで、キミがイヴw」
「…アダムが飽きるまでの楽園?」
「ボクが飽きるまでの楽園w」
そう、それは、
「…楽しそう」
執着される事が怖かった。
飽きられる事は怖くなかった。
なら何を恐れていた?
腐った奴らが大嫌いだった。
頭のおかしい奴らが大嫌いだった。
なら何で貴方が側にいる?
本当は、とても簡単な事。
期限付きでもいいからと。
…Baby I think.
Please, stay my side.
end.