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「イルミ=ゾルディック!!」
月灯りの綺麗な夜、
「…誰?」
ただそれだけが灯りとして輝く中。
「私と、勝負!!」
彼らの戦いは、始まる。
<気まぐれテイクアウト>
イルミは仕事を終え、帰宅しようと山を越えていた。
「さぁ、かかってきなさい!」
そこへいきなり現れ、勝手に臨戦体制に入っている彼女を、イルミは知らない。
「何何? もしかして怖気づいた?」
「別に戦ってもいいけど、キミ死ぬよ?」
「はんっ、死ぬのが怖くて勝負できるか!」
「ふーん。そう」
ぱしっ。
「んにゃッ」
「…足払いくらいで倒れないでよ」
「なっ…ちょ、ちょっと油断しただけだいっ」
「……ふーん」
ぺしっ。
「んにッ」
ばしっ。
「うひゃぁッ」
ぽい。
「あうー……」
「…本気?」
イルミは無表情な顔で問う。
「な、何だよ大マジだようるさいなっ////// お、覚えてろっ!!」
そういうと、彼女はその場を走り去ろうとし…
「――わっ」
イルミはその腕を掴んだ。
「何だよっ//////」
「名前」
「は?」
「オレ、キミの名前知らないから。キミはオレの名前知ってたろう?」
イルミの淡々とした喋り方に、彼女は溜め息を一つ付き、答えた。
「……綾乃。――華美夜 綾乃」
「綾乃ね。覚えとくよ」
そしてイルミは、そっと綾乃の腕を離した。
「イルミ=ゾルディック!!」
あの日から三週間。
綾乃はまた、現れた。
その頬に、黒いあざを持ちながら。
「ここで会ったが百年目! 因縁の対決、いざっ!!」
「綾乃さ、何でオレの事知ってるわけ?」
「知ってるから!」
「何で勝負なの?」
「強い奴と戦いたいから!」
「綾乃弱いのに?」
「あんたが強すぎるんだよ!」
「…殺されたいんでしょ?」
「!!」
その言葉に、綾乃は反応する。
「死にたい奴って、目で解るんだよね。…依頼してくれたら受けるけど」
「そんなお金ないから戦いに来たんでしょ」
綾乃はファイティングポーズを解くと、うつむき加減に言った。
「私にはこの命しかもう残ってない。だけどあんたに殺してもらいたいし、強い奴と戦いたいのも本当。だから、戦いで殺して欲しかったの」
渇ききった瞳からは涙さえ流れず、綾乃は語った。
「オレここまで弱い奴と、仕事でもなく戦って殺すの嫌なんだけど」
「な…ひどっ! 私そんな弱くないもん!!//////」
綾乃は顔を真っ赤にして言った。
「…綾乃って面白いね」
「は、はぁっ!?//////」
「死にたいって目をしてるかと思ったら、急に光を持った瞳をする」
「な、何まじまじ観察してるのよキモチワルぅっっ!!!」
綾乃は一歩引くと凄い目でイルミを睨んだ。
「調べさせてもらったけど、綾乃がいる施設って…最低な所なんだろう?」
「!」
そう、綾乃は施設で生まれ育った。
しかし、指導員は皆、子供に手を上げるような最低な者達で、綾乃はそんな子供をかばってあざを作ったのだった。
「オレ、綾乃を殺す気なんかないよ」
「…殺してよ」
「殺さないって」
「殺して」
「殺さない」
「殺せっつってんだろ馬鹿」
「口悪いよ? 綾乃」
「アンタに言われたくないです。ほらさっさと殺せ」
「んー、じゃぁ体で払ってもらえる?」
「………あ?」
「だから、体で」
「なッ……あ、アンタ頭おかしいんじゃ……////////」
「殺すのに見合う額まで払ったら、殺すって事で。うん、そうしよう」
イルミは人差し指をピッと立て言う。
「ちょ、ちょっと私の話スルー!?」
「だって施設には戻りたくないだろう?」
「そ、そりゃそうだけど…でもッ//////」
「拒否権は無し。さっさと行くよ」
そうしてイルミは綾乃を引きずるようにして持ち帰った。
「ん…っ…あぁっ!」
「殺されたいんでしょ? 我慢しなって」
そして、どれ程の月日、夜が過ぎようと、イルミが綾乃を殺す事はないのだった。
end.