あなたのその優しさに
包まれていたいと思うのは
――あたしだけじゃない。
<ぎゅってして。>
「〜♪」
今日は久しぶりにキルアとデート。
お弁当作ったし、メイクもばっちしvvv
後はキルアが来るのを待つだけ!
――ぴんぽーん♪
「あ、キルアだっ」
あたしはチャイムの音に反応して玄関に向かった。
「はーいっ!! …って、あれぇ?」
勢いよく開けた扉の先には、誰も居ない。
「イタズラ……? もぅっ」
「、こっち」
「へ? っわぁっ!!」
振り返ると、そこにはキルアの姿。
「おっと…悪ぃ、大丈夫か?」
びっくりしてこけそうになったあたしを支えるキルア。
「も、もう! 気配消して勝手に入って来ないで!! …びっくりするでしょ……!!」
「あれ? いつもより怒るの迫力ねぇぞ? やっと女らしくするようにしたわけ?」
支えた手を離さないまま、にやにやとキルアは言う。
「ち、違……っ//// ほ、ほんとに久しぶりだから……怒る気、あんまし無いだけ…//////」
顔を赤くしてあたしは言った。
「……やっぱってかわいいなっ」
ひょいっと顔を上に向けられ、キルアはあたしに口付けた。
「//////!!」
「もーらいっ♪」
やっと手を離し、キルアは手でピースを見せる。
「も、もおっ!!//////」
嬉しすぎて、変に泣きそうになりながら、あたしはキルアと街へ繰り出した。
――デパート。
「キルアキルアっ! コレ、どう?」
あたしはスカートを手にしてキルアに見せる。
「お、似合ってんじゃん」
「ホントに!? じゃぁ買って来るっ」
「あ、オレが買ってやるよ」
「え、いいの? ありがとーっvvv」
あたし達は腕組みしながらお店を回った。
「――ねぇあの子かっこよくない?」
「ヤバ、もろ好みvvv 声かけちゃおうよ♪」
「あ、でも彼女持ちじゃん」
「マジ!? つり合わねぇ〜」
「………っ」
そんなこと、
あんたらに言われなくても、――解ってる。
「?」
でも、キルアはあたしを見てくれてるから…。
「……もう、行こ。買い物はいいよ」
キルアの隣でだけは、自信を持って歩きたいの……。
「荷物持ってやるよ」
「ありがとvvv」
デパートを出て、公園までの道を歩く。
「公園でお弁当食べようねっ♪」
「あ、これ弁当だったの? 食う食う♪」
キルアはあたしの鞄を見てにこにこしている。
「そーだ、さっきお前どうした……」
「ちょっとそこの男の子!」
キルアの言葉を遮るように、突然大人のお姉さんが声をかけてきた。
「私、今モデルのスカウトしてるんだけど、そういうの興味ない? 良かったらあっちで話でも…」
「興味ないし。てか今デート中なんだよね。オバサン彼氏もいないの?」
「な…っ//////」
「行こーぜ、」
キルアはあたしの手を引っ張り、その場を後にした。
「モテるのも困るよなー♪」
(……人の気もしらないで…)
心が、痛い。
必死になって、考えてる。
――あたし、キルアにつり合わない。
そんなこと解ってる!
誰よりも解ってる……!!
「……? なぁ、どうしたんだよ」
キルアが心配そうにあたしの顔を覗く。
「顔真っ青だぜ? 気分悪い?」
「あ、うん…ちょっと日に当たり過ぎたかな……」
「ほら、公園着いたから、日陰で休もうぜ」
キルアに誘導されて、丘の上にある大きな樹の側に座る。
「お弁当、食べよっか?」
「もう大丈夫か? 食えるんなら食うけど」
「もう収まったから大丈夫だよ」
ほんとは、別に気分が悪かったわけじゃないし……。
「おっ、うまそーvvv 全部が作ったのか!? すげーじゃん!!」
「そ、そんなことないよーっ//////」
実はかなり早起きして作ったんだけど、ね。////
「じゃ、いっただっきまーすっ!!」
キルアがお弁当にお箸をのばしたその時……
「キルアー!!!!」
「ん? あ、ゴン!!」
丘の下には、ゴン・クラピカ・レオリオがいた。
「あ、もいる!! 久しぶり!」
三人はあたし達の所に走ってきた。
「久しいな、」
「、まさかオレらの事忘れたんじゃねぇよな?」
やめて。
「こんなとこで何してんの?」
邪魔しないで。
「三人で散歩してたんだ! 今日すごいいい天気だからさ!」
もう、やめて……。
「あ、お弁当だっ! 唐揚げもーらいっ」
「…――いい加減にしてよ……っ」
ついにあたしは、爆発する。
「…?」
「何なの…? あたし達の邪魔して……っ」
あたしの瞳に涙が溜まる。
「お、おい、」
「キルアだってキルアじゃないっ、久しぶりのデートなんだよ!? なのにちょっと騒がれたりナンパされたりでいい気になってっ……!!」
傲慢だ。
「何で……っ、ゴンたちとは毎日のように会ってるくせに……あたし、…キルアの何なのよ……」
こんなの、我侭だ。
「、おいっ」
「……帰る……っ」
これじゃ、
「ゴンたちとお弁当食べればいいじゃない……っ!!」
―――嫌われるだけじゃない………
「ひっく……ぅぅ……」
マンションに戻り、あたしはソファーに座って泣きつづけた。
「ふえぇぇ……っ」
キルア、困ってた。
あたしが我侭なこと言ったから。
もうきっと、キルア、あたしに愛想つかして……
「――おいっ、っ!!」
「!!」
ドアをどんどん叩く音。
そしてキルアの声。
「いるんだろ!? 開けろ!!」
「帰って!!」
あたしは玄関まで行って叫んだ。
「…ごめんっ、オレ調子乗ってたんだ。可愛いから、オレもつり合う位イイ男になんなきゃって……!!」
「キルアは始めっからかっこいいよ!! つり合わないのはあたしの方なの!!」
「そんな事無いっ!! オレだって必死だったんだ! ……あの三人が、の事好きだから!!」
「……は?」
あの三人?
それってまさか、
「ゴンとクラピカとレオリオ……あいつら前からの事好きなんだよ……っ」
「はぁ!?」
何、それ……知らない。
「だからさっきはあいつらに見せ付けてやろうって思っ……あぁもうオレ何言ってんだ……////」
「……」
いつだって、
「オレ、の弁当楽しみにしてたんだよ! あいつらじゃなくて、と食いたいんだ!!」
キルアはあたしを、
「……」
――ぎぃ……。
「……っ」
「キルア…ごめんなさぁぃ…っ!!」
見ててくれたのに……。
「ごめ、なさ……っ」
泣きじゃくるあたしの肩を掴み、顔を覗き込むキルア。
「オレこそ…ごめん」
キルアに誘導されて、部屋の中まで進む。
「とりあえず泣き止もーぜ? な?」
「キルア……っ」
あたしはキルアの服を掴む。
「お願い……ぎゅってして。あたしをキルアでいっぱいにして……」
「……うん」
キルアはあたしをぎゅっと抱き締めてくれた。
そう、あたしは誰に何て言われても、キルアの側で自信を持って歩きたかっただけ。
キルアはあたしを見てくれるから。
他はどうだって良かったのに。
何を気にしてたんだろう。
「キルア…お弁当、食べよ?」
キルアの笑顔だけで……あたしはもういっぱいいっぱいなのにね。
「……ごめん、も、耐えられない……」
「へ? …きゃぁっ!!」
「弁当より先に、食っちゃっていい?」
「えぇっ!? ちょ、ちょっと、待っ……っ!!////////」
ねぇ、もっと強く、
ぎゅってして?
end.