「キルア、今日からこの子が家に住む事になった。仲良くしてやれ」













そういった親父の隣にいたのは、


















「初めまして、です」

















今まで会った事の無い、綺麗な女の子だった。









































<最果てより愛を込めてo>







































「ねぇキルア、遊ぼっ」



「うわっ、…なんだ、か…」



「うわって何だよー!!」





は庭の木から飛び降りる。







「…相変わらず、お前気配消すのうまいなー」



「ふふんw キルアはあたし以上にならなきゃ駄目だよ?」






…まただ。







「キルア、まだまだ気配察するの遅いもん。もうちょい早く気づかないと…」








、最近変だ。








「よし、かくれんぼしよう! あたし隠れるから、キルアはあたしの微妙な気配を探して…」





「――やめろよ」



「…キルア?」







「どうしたんだよ…最近の、変だぜ」



「あたし、別に…」



「違う。最近のは、オレを強くしようとしか考えてない」



「な、何言って…」



「だってそうじゃんか!! 前まではただ遊んでるだけだった…なのに最近は、その裏でオレの成長を考えてる!!」














数年、一緒に住んできた。





毎日二人で遊んでた。





未来なんてどうでもいいって。





ずっと二人で遊んでいようって。












なのには…









どうして暗殺者(みらい)のオレを望むんだ…?











  




「キルア…落ち着いて?」



「!」





言われて、少し我に返る。







「ごめん…」



「謝んなくて、いいよ」



「え?」



「あ…何でもないっ」






は笑顔を見せると、オレの手を取った。







「ごめんね」








何で、そんな悲しそうな顔で微笑むんだ…?










オレはその理由に、まだ気付けないでいた。





































「…シルバ様」






ある夜、あたしはシルバ様に呼び出された。








「今日で何年だったか?」



「5年になります」



「もうそんなに経つか…」



「…はい」







暗い部屋に、沈黙が響く。








「そろそろ、ですか」



「それを考えていた」




シルバ様は振り返り、あたしと目を合わせる。







「何を迷っておいでですか」



「いや…お前、キルアと5年間暮らして…アイツをどう思っている?」



「キルア様はお強くなられました。あとは、当初の予定通りあたしを…」



「そうじゃない」






シルバ様はため息混じりに言う。










「お前の、キルアへの気持ちだ」



「………」






「どう思っている?」




あたしは、声を絞り出すようにして言った。









「…恐れながら……お慕い、申しております」



「それなら」



「シルバ様!」





あたしは思わず、声を上げてしまった。






「それは…なりません」


「しかし…」





「あなたはお優しい。あたしを、本当の娘のように扱ってくださった。けれど……当初の目的を見失ってはいけません」



「………」





やがて、シルバ様は困ったように微笑んだ。








「全く……良く出来た娘を持ったものだ」





その言葉に、あたしも笑みをこぼした。




  


































「キルア」







庭に出ると、いつも木の上にいるはずのが、木の下で突っ立ってた。






「何、どしたの?」



「あたしね…行かなくちゃいけなくなったの」



「!」





オレは思わずの肩を掴んだ。






「どこにだよ!? 何で急に…!!」







オレの言葉を遮るように、








「!」







は、親指を下につき下ろした。











「…地獄だよ」










「何…言って…」






声が、手が、震える。









「…急な事じゃないの。あたしがここに来た日から…決まってた事なの」




「それ…どういう…」




















「…あたしを、殺しなさい」

















突如、









「…え?」












世界から、音が消えた気がした。















「な、んで…そんな…」






「あたしはね、あなたを暗殺者として育てるために、連れてこられた…A級首なの」




が…!?」






は、ゆっくり頷いた。









「シルバ様に捕られた時、あたしは死ぬ事を覚悟した。だけど…シルバ様は、あたしにキルアという友達をくださった。…いつか殺されるために」



「なんでそんな!!」






「あなたを完璧な闇人形に仕立てるため。友さえ簡単に殺せるような」





オレは悔しくて、言葉に詰まった。








「…親父んトコ行こう」





オレはの手を引いた。







「キルア」


「だってこんなの…!!」




声が裏返った。






「ほんとに…みんな、優しいね」



「え…?」






「シルバ様も…あたしを娘のように思ってくださっているもの」



「だったら、親父を説得したら!!」



「そうね、あたしが望めば、シルバ様はあたしをずっと、ここにおいて下さるわ。…だけどね、これはあたしのケジメなの」







はずっと笑ったままで。



オレは足を止めた。



 



「あたしはこの歳で多くの人を殺しすぎた。その償いを、キルアに殺される事で果たそうとした」





は、オレと手を離した。







「それが…キルアの成長の糧になるなら…あたしは構わない」




が良くても、オレは嫌だ!!」



「!」







を…オレが殺すなんて…









「オレ…オレはが好きなんだ…!!」










そんなの…耐えられない…
























「……かくれんぼ」










「え…?」





「かくれんぼ、やろ」


「何、言って…」






「制限時間無し。場所は全世界。…あたしは今日からチカラ(念)を使わない。気配なんか少しも残さない。キルアなんかが見つけらんない所まで逃げてやるから」



…?」







「思ったんだけどさ、あたし、シルバ様を裏切れない」



「!」





「シルバ様の当初の命令は絶対…だけど、あたしを娘と思って下さるそのお心も、決して裏切れないの」







真っ直ぐに見つめる、の瞳。




迷いなんて、なくて…







「あたしを見つけることができたら、大人しく殺されてあげる。じゃなきゃ、簡単に殺されやしないんだから」







オレは、悔しくて、唇を噛んだ。









「言ってる意味…解るよね…?」










あぁ…、解るよ。








――捜すな、って事だろ。











「……10秒、数えて」




…!!」




「数えてッ!!」







見上げたの頬に、涙。










「あたしも…好きだよ…?」




「…っ…!!」









オレは、必死に微笑むを見て、目を閉じた。
















「…1…2…」











きっと、












「…5…6…っ…」












目を開けたらもう、はいないんだろう。












「7…は、ち……」












気配どころか、














「9……10……っ!!」






















残り香さえ、残さずに。







  


















「………」






オレは辺りを見渡した。



上を見上げて、がいつもいた木の枝も見た。








だけど…いない。










「…っうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」









オレは、一目散に親父の部屋に向かった。


















「……」







そこに、









「キルア…」










まだ、がいたとは知らずに。











「これで…あたしはもう、念の使用をやめるね…?」











オレがまだ知らない力で…が隠れていたなんて…知らないで…























「…ばいばい…」
























































「どうしてだよっ!? なんでが…こんな…!!」



「行ったのか…」




「答えろよ…答えろよ親父!!」




「答えるまでも無い…お前のためだ」



「っ!!」





オレは親父を睨みつけた。







「何だよそれ…親父だって…の事…だんだん、そういう利用に使えなくなったくせに!!」




オレは言い捨てると、思い切り部屋を飛び出した。








「野暮な事を言うな……」





一人つくため息の裏には、の、微笑み。

























「あらキル、あの女を殺しに行くのね」



「……」






「でも、ちゃんとお義父様にご挨拶したの?」







そういや…お袋は、を嫌ってたな…









「キル? 聞いてるの!?」



「…うぜぇよ」




「!? っきゃぁぁぁぁぁ!!!」







オレはお袋の顔に一太刀入れ、その場を後にする。









「待ちなさい!! キル、キル!!!」










待たねぇよ。




オレはを殺しに行くんじゃない。














一緒にいるために、捜すんだ。








  







































「――ルア…キルア!」



「!」





「もー、どうしちゃったの? ぼーっとして」



「あー、…ゴン…」









あれから、本人はおろか、陰も形も見当たらない。





ハンターじゃなきゃ入れない国にいるかもしれないと思ってハンター試験受けたけど…結局、ゴンに付き合って親父さん捜してるし…





でも、を見つけたいのと同じで…オレは、ゴンの側に…いたい。



…オレ、ゴンと世界を回りながら…お前の事、きっと見つけてみせる。



ゴンが親父さんに、オレを友達だって紹介しようと思ってくれたように…



オレもに、『これがオレの友達だ』って…言ってやりたいから…












「キルア!!! またぼーっとしてる!!」


「…悪ぃ悪ぃ♪」




オレは後ろからゴンに飛びついた。







なんかゴンって、に似てんだよな。










「行くよ、キルア!」



「おう!」







































お前がどこにいたって、





















オレは最果てからだって、お前を見つけ出してやっから。









その日まで、



































さよなら。




























end.