どうか聴いて
どうか響いて
その心に届いてください
<二人のタナトス>
は一大決心をしていた。
(無理だったら…どうしよう…)
彼女はクロロの事を愛するあまり、仕事に手がつかなくなってしまった。
クロロに迷惑をかけたくなくて、気持ちを知ってもらいたくて、今クロロの部屋の前に立っている。
…しかし、ノックをできずに、すでに10分が経とうとしていた。
(だって、団長は私の事なんか団員だとしか思われていないはずです…やっぱり、きっとダメ…)
消極的な考えだけが頭に浮かび、震える手が何度も扉と足元を往復する。
(も、行っちゃえ…っ)
は覚悟を決め、とても小さく、二度ノックした。
「…入れ」
「っ//////」
クロロの低い声が聞こえ、は扉を開ける。
「やはりか」
「え…//////」
「10分近くも扉の前で気配を漂わせていたんだ。解るさ」
クロロはくすっと笑い、ソファーに腰掛けた。
「どうした? 座るといい」
「あ、いえっ、ここで……//////」
はクロロと扉の中間ら辺に立ち、俯いた。
「あの…団長、私…お話が、あって、来ました////」
「話? 言ってみろ」
「でっ、でも…言えないんです…//////」
「?」
顔を真っ赤にしているが、暗いクロロの部屋ではそれも見えない。
「何か、オレが怒るような事をしたのか?」
微笑んで言うクロロだが、はそれさえも見れずに俯きつづける。
(今言わなくて、いつ言うんですか…?)
自分に言い聞かせ、は ばっと顔を上げた。
「わっ、私! …団長が、好き…です……っ//////」
ついに言ってしまった。
は羞恥と期待で、自分がちゃんと立っているのかも解らずにいた。
「…――オレはお前にそんな感情は無い」
「!」
一気に思い知らされる、現実。
解ってたことだったのに。
「わ、かりました…では…」
泣きそうなのを堪えながら、は扉に向かう。
「待て」
思いがけず、クロロの声が静止をかける。
「お前は欲しい物を自分の物にしようと思わないのか? すぐに諦められるのか?」
「そんな…っ、諦める、なんて……でも、無理なのは理解できてます…から……だから…っ」
「『欲しい物は奪え』…欲しい物さえ奪えない奴は、蜘蛛にはいらんがな」
「!!」
はその言葉に振り向き、クロロの元へ駆け出す。
「そんなっ! わ、私、仕事は絶対に失敗しませんっ!! 団長が求める物は全て手に入れてきます!! だ、だから…お側にいさせてください……っ」
ついに泣き出してしまう。
離れたく、ない…。
「……お前は何処まで鈍いんだ」
クロロは ふぅっと息を付き、自分の前にへたり込むを頭を撫でた。
「解りやすいように付け足してやる。…オレはお前にそんな感情は無い。……“今は”、な」
「!! それって…!!」
「どうする? 蜘蛛を辞めるか?」
いじわるそうに微笑むクロロに、は涙を溢れさせて叫んだ。
「います! 絶対に辞めませんっ!! 私の欲しい物、必ず奪ってみせます!!!」
「ほう? …楽しみだ」
あなたの優しさは、私には時に難しくて、
それでも、あなたは私の理解を誘ってくれる。
いつの日か、
その心を、掴まえてみせるから。
end.