「団長っ、大変だよ! が………!!」
いきなり部屋に飛び込んできたシャル。
クロロは怪訝な顔をしていたが、の名を聞いた途端に表情を変えた。
「…がどうした?」
「説明は後っ、早く広場に!!」
状況が解らないまま、クロロはシャルと共に広場へ向かった。
< キズアト >
「痛…っ…」
「、大丈夫か!?」
広場に響き渡る声。
団員たちが群がる中心にはがいるんだろうが、囲われているせいでクロロからはその姿が確認できない。
「何があった?」
クロロの声に全員が反応し、振り返った。
その拍子に、の姿を隔てる壁が無くなる。
「! …!?」
その場に座り込み、瞳にうっすらと涙をにじませている。
背中には、衣服を切り裂き血のにじんだ、大きな傷があった。
「何をしている!? 早く手当てを……」
「…触れないんだ」
「触れない?」
マチの発言に、クロロは眉をしかめた。
「これはただの傷じゃない。念によって刻まれた、呪いに近い傷だよ」
「念だと?」
「はい。さっき、三人で仕事に行った時、ターゲットの男が死に際に……」
『その傷は、お前が心から愛し、そしてお前を心から愛する奴にしか触れることができない。
極悪非道の蜘蛛の団員であるお前を愛してくれる男が、果たしてこの世に存在するかな…?』
「……と、言ってました」
シズクは顔色を変えずに淡々と説明をした。
の傷はそれほど深いものではない。それを解っての口調だが、
そう慌てる事でも無い、とでも言うようなシズクの態度に、クロロは少し苛立ちを覚えた。
「私を……愛する男、だってさ」
は、少し乾いた声でつぶやいた。
「…ははっ……そんな奴、いるわけ、ないって……」
「「「「「 此処にいる!!!!! 」」」」」
「…え?」
を初め、女性陣が目を見開いて驚いている。
それもそのはず。
の発言に勢い良く答えたのは、その場の男たち、全員だったのだから。
「何だお前ら……俺のに触れれるとでも思っているのか?」
「団長こそ! に触れることができるのは俺だけだよ!?」
「何言ってやがる! は俺が好きなんだよ! なぁ、?」
「お前ら、醜い争いなら他所でやるね。ワタシは早くの手当てしなきゃいけないよ」
「クックック…☆ いいねぇ、楽しくなりそうだw」
「あぁ? まさかテメェもか?」
「そういうキミこそ…♪」
「……何…こいつら」
「への気持ちは知ってたけど、本人が怪我してる横で、なんて幼稚な争いを…」
「どうします? とりあえず黙らせますか?」
「…シズク、デメちゃん構えないで」
「……………」
女性陣のあきれ果てた声とは裏腹、は違うものを感じていた。
喜びとも、羞恥とも違う。
それは、安堵。
「………私…愛されてて、いいの…?」
の声に、全員が振り返った。
「…少なくとも、―――俺はを愛している」
「団、長…」
その言葉に、俺も俺もと次々に上がる声。
はそれを見て微笑み、涙を一粒流した。
「わ、たし……――」
その時、の視界は大きくゆがみ、彼女は地に手をついた。
「っ!?」
に駆け寄る男たち。
意識を手放す直前、は迷わずに手を伸ばした。
「!」
「私だって……人を、愛する権利…ある、よね……? ―――団長…」
コートの端を掴み、はクロロを見上げた。
「…私が、愛してるのは…貴方、だけ……」
「!」
そのまま意識を手放したを抱えるクロロ。
恐る恐る、背の傷に手を触れる。
「……触れる」
その右手についた血は、まるで証のようで。
クロロは周りの目も気にせず、何度も何度も、その傷にキスを落した。
それは、自分のものだと、主張するかのように。
end.
*** あとがき ***
砂茶様リク、クロロ寄り逆ハー、いかがだったでしょうか?
久しぶりのハンタ夢、何だかうまく書けなくてスイマセン;
リハビリも兼ねてこれからもちょくちょくハンタ夢が書ければいいな、と思います。
リクしてくださった砂茶様、そして、読んで下さった貴女に感謝の意を込めて。 拝。