「っはぁ……っ!!」
胸が苦しい。
痛い。
どうして?
「聖様……様苦しそうです…」
「『一体化』が抜けないまま行動し過ぎましたねぇ…」
「一体化って何ですか?」
「の脳内に、の遺伝子情報から採取した記憶を注入し、取り込ませる……記憶の一体化ですね」
「……難しくてよく解りません……」
痛い。
痛い。
痛い………―――
<story 8 〜輪廻〜>
「―――長……団長っ…!!」
「!!」
クロロは はっとして目を覚ました。
「ここは……」
気を失う前の景色はそこには無く、よく見るとアジトの中だと解った。
「傷は、アタシが治しておいたよ……」
「…そうか……」
クロロは、貫かれた筈の腹に手を当てた。
「は……行ってしまったか」
「それが、あの……団長。…団長にも、聞いておいて欲しい事があるんだ」
「何?」
「……あの後、アタシ、に問いかけたんだ」
「!! 待って、待ってよ!!」
「……何? その糸なら、貴女の力なら数分で解けるでしょう?」
糸で身動き取れないアタシを、は崖上から見下ろした。
「その子……どうして『盗賊の極意』を……」
「…コレはがクロロに教えたものよ。の記憶から取り出したに決まってるでしょう?」
「じゃぁ、その子も……クローンだって言うのか……?」
「違うわ」
は、ロウを抱きしめた。
「この子は……―――と聖の子よ」
「!!」
「の身体から、生きた卵細胞を取り出し、人工授精させて作った……正真正銘の子供よ」
「……そ、んな……」
言葉を失った。
連中は…狂ってる。
「………」
クロロは目を見開いて放心していた。
信じられなかった。
「…、言ったんだ。『の子供は、あたしの子供だ』って…………を受け入れてるんだ……っ」
マチは目頭を押さえた。
その肩を、シズクが抱いた。
「すいません、団長。…気を失っていなかったら、何としてもを止めたのに……」
「いや、にあのロウという少年…それに、聖という男……三人相手では不利だ。到底止められまい」
クロロは頭を抑えながら言う。
表情は固い。
「………」
クロロは、の最後の言葉を思い返していた。
―――『』を拾ってくれて有難う、クロロ
(…あれは……)
………?
「………はぁ……」
一体化が抜けたのだろうか。痛みが治まってきた。
「……」
この手で、
クロロを貫いた。
「……クロ…ロ…」
「」
「…聖」
部屋に入ってきたのは、聖とロウ。
「もう大丈夫かい?」
「えぇ…平気よ」
「でも様…元気ないです」
「そんな事無いわ。心配しないで?」
「…ロウ、席を外してもらえますか?」
聖の声が響き、ロウは表情を強張らせた。
「あ、はいっ」
ロウが出て行ったのを確認して、聖は口を開く。
「何故、あの男を殺さなかったんだい?」
「…殺すつもりだったわ。少し手元が狂ったのよ」
「……あいつに何を吹き込んだ?」
「!」
「!!」
「きゃっ!!」
聖はあたしの肩を掴んだ。
「君は少し疲れているんだね…そうだろう?」
「聖っ……!!」
「…眠るといい」
あたしの目の前に、また、聖の掌が翳される。
駄目。
また、
眠くなる………
―――……
黒い、
真っ暗な空間。
「誰……?」
漂うような…流されているような……
そう、ここは、
…あたしの中。
―――…!!
「…あなたは……!」
目の前に、白い光が見える。
暗闇の中、淡い光を放った…とても綺麗な…
あれは……
「…………?」
『ええ…』
声、表情、存在感。
その全てが、遺伝子からは感じ取る事ができなかった――自身が、そこにいた。
その時初めて……初めてあたしは、に出会えた気がしたんだ。
TO BE CONTINUED