例え目の前で言えなくとも










心さえ繋がっていれば、























―――キミを必ず迎えに行くから。





































<黎明ストライプ>




































――私は








――…私は神なんて信じません








――この手で生き抜いていくから








――愛してます…誰よりも、神よりも…





















――あなたを待たせてもらっても、いいですか……?
























あの日の思い出。



の言葉。







忘れた日などない。








シャルはずっと、探し続けていた。


彼女の名前、髪や瞳の色、全ての情報から、の居場所を探していた。







だけど、は見つからなくて。









……」




シャルはパソコンの電源をつけたまま、いつの間にか眠ってしまい、寝言を呟いた。






その時、








――ポーン








画面に、ある表示がされた。


シャルは気付かずに眠りつづけていた。



















「ん……」




朝になって目覚めたシャルは、パソコンに新しい表示がされているのを見て意識を起こす。





「な…っ」




メールが一件。

題名は――『







シャルは慌ててそのメールを開ける。






『突然のメール、お許しください。

題名に書いた名前…お忘れでないですよね?

を、助けて下さい。』









「……忘れるわけ…ない」



シャルは葛藤する頭を落ち着かせ、まず何者かを問うメールを送った。








――ポーン




返事はすぐに来た。







『僕はの警備役です。

このままではは殺されてしまいます。

メールでは詳しい事は言えません。

至急、グリッテェ島にお越し下さい。

を救えるのは、あなただけです。』








それ以上は、いくらメールを返しても、返事は無かった。











「……」



罠か。



「…」



真実か。



「……っ」








それでも決まっている。








「…団長? しばらく単独行動させてもらうよ。…うん、あの子がらみだから」




シャルは電話を切ると、部屋を飛び出した。










グリッテェ島に向かって。










 



























島に着くと、そこは霧に包まれていて、景色は見渡せなかった。



実際、地図にも載っていない島だ。


シャルが見つけるのに、10分もかからなかったが。












…どこに……」






「あなたが、シャルナークさんですか?」


「!!」






霧と焦りの中、気配を感じれなかったシャルの後ろに、人影。





「キミは…?」


「僕はドルニチェ。メールで言った通り、の警備役です」


「警備って…一体…」


「僕の口からは言えません。これは傍から見たら、部外者に警告している警備員の図ですから。…解りませんか? 複数の視線が此方を向いている事を」




「!」



シャルはすぐに円で確かめた。







「…本当だ…」



数体の気配がある。








「…言ってみれば、僕も監視されている身です。あなたをこのままの元へ連れて行くわけにはいきません。…ここから来た道を100m程戻ってください。そしたら彼らも追いません」





「……一つ、聞かせて。……は、ちゃんと生きてるんだろうね?」






「もちろんですよ。…さぁ、早く。そして、の捕らえられている塔を、お探しください」








そう言って、ドルニチェは剣を構えた。



周りへの演技だろう。






シャルもそれに乗じ、来た道を後にした。















一体この島で、何が起こっている?













 



















夜になり、霧が落ち着いた頃。





シャルは慎重に絶と円を駆使して道を進んだ。


まだ気付かれていない。






「!」




すると、前方に一つの気配。


覚えのある気配だ。きっとドルニチェだろう。






少し進むと、霧が全て晴れ、広い草原に出た。







「お待ちしていました」



そこにはドルニチェが立ち、シャルを見ていた。







「後ろの塔…あの屋上に、がいます」


「解った。有難う」



そう言って、シャルがドルニチェの横を通り過ぎようとして――首元に剣を宛がわれる。







「…何の真似だい?」


「…そこから5mの、ある線を越えたら、死ぬ。それが僕の念です」


「念使いか。…で、やっぱり罠って事?」











「違います。










――僕を殺してください」













シャルは特に驚く事もなく、隣にいるドルニチェを見た。




「…殺さなきゃ、通れないって事だよね。…でもいいの? オレ、キミに何の情もないから、簡単に殺っちゃうけど」


「いいんです。……あなたの事は、ずっとに聞いていました」



ドルニチェは剣を降ろしながら言った。






「あなたの事を話している間だけ、は笑顔でしたよ。だからあなたをに会わせたかった」


「……そう」


「だからこそ、中途半端な気持ちで会って欲しくありません。…本当に、に会うつもりで来ましたか?」




ドルニチェの言葉に、シャルは軽く笑いをもらす。











「会う? まさか。…――取り戻しに来たんだよ」








シャルは、笑顔で言った。











「でも、他人のために投げる命って…正直解らないけど」



「あなたがに持つ気持ちがあれば解ると思うんですが…。僕は、がとてもいい人だと解っているからこそ、あなたに会って頂きたいんですよ」







ドルニチェも苦笑いを返し、







「……有難う」






次の瞬間には、ドルニチェの意識は消えかけていた。

















が愛した人が、あなたで…良かった」








塔に向かって走っていくシャルの背中を見ながら、ドルニチェは意識を手放した。








 














 





シャルは難なく塔を駆け上がる。



気配は最上階にたった一つ。









間違いなくだ。














!!!」





最上階まで登りつめ、暗い廊下を進む。



右は壁、左は牢屋が続いている。








!? !!」






「…! その、声……」







シャルは一番奥から聞こえた声に反応し、全速力でそこまで走る。









……!!」








鉄格子にしがみ付き、中を覗く。






「!!」






そこにいたのは、間違いなく、で。







「シャ、ル……?」




だけど、その姿は、痛々しいものだった。











天井から繋がれた鎖で、血の気を失っている両腕。



ボロボロに引きちぎられたワンピース。



まとまり無くうなだれる、美しい黒髪。



傷だらけの、白い肌。









シャルを見つめる、空ろな瞳。









「シャル…シャルっ!!」



その瞳は一瞬で光を取り戻し、涙を溢れさせた。







!!」



シャルは鉄格子を壊そうと試みるが、念で強化されたそれはびくともしなかった。








「どうして…そんな姿に……っ」




「私…生け贄に、なるそうです」


「生け贄…?」





「この島は見ての通り、ずっと霧に包まれています。そこで、生け贄を捧げるという考えが、島の人々で決定されたそうです。…怪我をしていた島の人を、たまたま念を使って治した私は…その力を見込まれて、生け贄にされました」



「そんな……っ」






「でも、私はそれでもいいんです。少しでも皆さんの気持ちが落ち着くなら…別に、生け贄になっても…最期に、あなたに会えた事ですし……っ」




「そんなの駄目だ!!」





シャルは力強く言い放つ。










「キミにはキミの人生がある! こんな所で終わっちゃ駄目なんだ!」


「シャル…でもっ」







「オレはキミを迎えに来たんだ。…キミを連れていく」



「……シャル…私…」













「おい、誰かいるのか!」


下から、複数の声がする。きっとドルニチェが殺されたのに気付いたのだろう。





「テメェ、生け贄に何してやがる!!」


男の姿が見えたのに反応して、シャルは携帯を手にする。






「あっ!!」



だが、男が投げたナイフが手に命中し、携帯を落としてしまった。








「生け贄を捕獲したぞ!」



その内には捕らえられ、シャルも男4人に取り押さえられる。



 




「生け贄を連れて行け!!」


「シャル!!」



は鎖を引っ張られ、重い足取りで抵抗する。









「っ!! ! キミはもうずっと前から自由なんだ!! 誰かのために命を捨てる必要なんか無いっ! ……――キミにはもう、キミを縛る神なんかいないんだ!!!」



「!!」



は はっとして目を見開く。





「小僧、黙りやがれ!」












「ねぇ、シャル…人間とは、愚かで醜い存在ですよね…」










は悲しい目でシャルを見つめ――次々と涙を落とす。



















「私、本当は死にたくなんかないっ!!







――何故私がこんな人達のために死ななければいけないのっっ!!!!」



















その時、から光が溢れ――











「な、なんだ!?」



!!」












光が全てを包み、静寂へ帰る。




























「……」





目を開けると、まだ淡い光を纏った、の姿。



傷は全て癒え、周りの男達は倒れている。

シャルの手も治っていた。





「…シャ、ル……」



一気に力が抜け、その場へ倒れる









!!」


シャルはの元へ駆け寄った。




「へへ…オーラ、全部搾り出しちゃいました…」


疲れた表情を見せながらも、笑顔を見せる。





……」


シャルはを強く抱き締めた。







「――会いたかった」



「…私もです」





シャルはを姫抱きにし、塔を降りた。
























「助けに来て下さると…信じてました」



「生け贄になる覚悟はできてたみたいだけど?」



「そ、そんな事ないですよっ! いざとなったら逃げるつもりでした!!//////」



「あれだけ弱ってたのに?」



「そんな事……ないですってば!!//////」







シャルは頬を赤らめるに口付けし、微笑んだ。



















「もう…逃げないでよね」




「…逃げれませんよ」







は身を乗り出してシャルの頬にキスを返す。




















「どこへ逃げても…あなたは来てくれちゃいますから」































言葉を交わしていなくとも













心さえ繋がっていれば、




















――どうか愛しい人。































もう離さないでいて。



























end.