「ねぇ、今暇かい?」
「暇だねぇ。どうしたの?」
「前、蜘蛛に会いたいって言ってたよね?」
「言ったけど……会えるわけ無いじゃん。そんな顔も解んない奴ら」
「今から行くけど」
<コーヒーベーゼ>
どく、どく、どく……
ええい、うるさいぞ心臓!!
さっきからすっごい高鳴ってる。
今こうして走ってる間にも、
あの蜘蛛に近づいてるんだ!
「、顔赤いよ?」
少し前を走るイルミが振り返って言う。
「そんな事ないっ!!//// それより前ッ! 前見て走って!!」
イルミと同じで、私も裏の世界に生きる人間だ。
ただ違うのは、暗殺家に情報を売る仕事を賄っているという事。
イルミの家にはミルキがいるけど、前に1度だけ共同戦線を張った事がある。
イルミとはその時から仲良くなった。
ミルキでさえも見落としてしまう情報を私が持っている事は、そう少ない事じゃない。
逆もあるけど。
「ねぇっ! ホントなの? 蜘蛛に会えるって!」
イルミは蜘蛛の中の一人と知り合いらしい。
けどイマイチ信用に値しない。
「行ったら解るよ」
曖昧な返事をされ、少しむっとしながら、私はイルミの後に続いた。
しばらくそのまま走っていると、廃虚のようなビル郡が立ち並ぶ場所に入った。
「あ。…引っかかっちゃったや」
「へ? 何に……」
「、うまく避けるんだよ」
「え、だから何……ってうわぁっ!!!!」
な、何か今目の前を小動物が横切った!
「…避けたか」
声の方を振り向けば、小動物…じゃなくて、ちっちゃい男の子がいた。
……目つき悪いなぁ。
「ボク、こんなトコで何してるの?」
その言葉に男の子はむっとしながら殺気を漂わせる。
「、彼も蜘蛛の団員だよ。あと、知らないけど多分キミより年上なはずだけど」
「えぇ!? く、蜘蛛……?」
「…お前、何故ワタシが蜘蛛の団員て知てるか」
「知ってるから。…じゃ、ダメかな?」
「ハ、別にいいよ」
すると少年(じゃないらしいけど)はイルミを目標にして跳んで来た。
「拷問して吐かせるだけね」
二人の手が交わるその時――
「ストップv」
急に声が響き、二人は距離をとった。
「ヒソカ…呼ばれたから来たのにこの扱いは酷くない?」
「ゴメンゴメン☆」
「ヒソカ、こいつらお前の連れか? なら余計気に食わないね、殺すよ」
「ん〜、ダメダメvv 団長に話して、正式な客人として招けって言われたから♪」
そう言って、ヒソカは私の方を見た。
「?」
「…団長命令じゃ仕方ないね」
すると少年(じゃないらしい)はすたすたと廃虚の奥へ消えた。
「彼女が、例の?」
「うん。言った通りだろう?」
「ちょ、言った通りって何……っうわ!!」
私は一歩踏み出し、瓦礫に足を取られて転ぶ。
「「面白い」☆」
「…ひっど」
そして私達は、ヒソカの後に続き、アジトへ向かった。
「!」
高鳴る胸を抑えながら進むと、周りと同じようなビルの入口に、三人の男が立っていた。
一人はさっきの人だ。
「お出迎えかい?」
「客人だからな」
「あ、そっか。クロロって団長だったね」
「…団長、知り合いか?」
「ヨークシンの時、十老頭殺害を依頼した時にな」
「へぇ、あの時オレが調べた暗殺一家の?」
「……調べた?」
私はその言葉に反応した。
「パソコンで? 所要時間は?」
「え……一日かかったけど…」
「!!!!!」
わ、私でも3日かかったのに……!!
「でっ、弟子にしてくださいっ!!!!」
咄嗟に飛び出た言葉は、それだった。
「…ね? 言っただろう?」
「ああ…面白いな」
そしてその日から、私は蜘蛛に入った。
「シャルシャルシャルっ!! お疲れ様っ」
私はシャルにコーヒーを入れ、部屋に入った。
「…もー、また部屋の電気付けないで…目ぇ悪くなるよ!!」
パソコンの電気が浮かんでいる方に叫んだけど、返事が無い。
「シャル?」
私は近くまで行って、椅子の向こう側を覗き込む。
「……寝てる…」
シャルは椅子に座ったまま眠っていた。
「ふふっ、可ぁ愛いvvv」
私はコーヒーを机の上に置いた。
「んー……」
「お。…シャル、コーヒー入れたけど飲………っ」
「――……」
「!!??」
呟くと、シャルは一気に私を引き寄せ――抱き締めた。
「!? //////!!??」
私は訳も解らず、シャルに前のめりにもたれるようにしてフリーズした。
「シャ、シャシャシャシャシャシャシャ……っ//////!!??」
「んっ……」
シャルは私の声に目を覚ました。
「!! え、な、っ//////!? ど、どうして…ッ//////」
「とっ、とりあえず、手、離して…//////」
「え…あぁっ////!!」
シャルは腕を ばっと離すと、赤い顔をしてコーヒーを飲み干した。
「オ、オレ…何か、したの…?//////」
「抱き付かれて…な、何か、名前呼ばれたけど……」
――……
「////////」
私は思い出して顔を赤くする。
「……あ、の……シャル? 私……//////」
「あぁっ待って! …オレに、言わせて」
シャルはそう言うと椅子を立ち、私を抱き締めた。
「…が好きなんだ//////」
そして、軽く触れ合う程度の、
「!」
一瞬の、口付け。
「シャル……//////」
ちょっと苦い、コーヒー味のキスのお返しは、
「…あたしもっ//////」
甘い、とろけるようなキス。
end.