『――人は生死の境を彷徨い、パニック状態にある時、自分を助けてくれた人に恋心を抱く事がある。』












――人間精神論〜乙女チック編〜より抜粋。


















































<レスキュー?>


















































「ふーん…ナルホド。だから自分を助けてくれた救急隊員に抱かれたいとトキメク女性が多いわけね?」




は持っていた本を机に置くと、すぐに考えを巡らせた。









(だったら…シャルを事故に見せかけ半死状態にしてェ、あたしが助けたら…)






はたらしていたよだれをふき取ると、不敵な笑みでガッツポーズした。











「イケるッ!! シャルを落とそう大作戦…イケる!!!」






次の瞬間には部屋を後にし、何やら仕掛けをしにいった




意中の彼が振り向いてくれる事だけを信じて…
































「ふふふっvvv もうすぐシャルはここを通るはず…」




は大岩に巻いたロープを木に吊るし、大岩を木の葉に隠すようにしてロープを引っ張っていた。









(これを落としてー♪ シャル半殺しにしてー♪ あたしが助けてー♪)





何やら不可解なメロディーを頭の中で繰り返しながら、はシャルの姿を待っていた。









(…お! 来た来た…vvv)





向こうから、シャルが何食わぬ顔で歩いてきている。











(もうちょい…もうちょい…)



心臓が高鳴る中、必至に気配を抑える








(今だ!!!)



タイミングを見計らい、は一気にロープから手を離す。












――どごぉ!!!










「おっと……っ」



「!!」





しかし、すんでの所で避けられてしまった。











「な…ッ…何で避けちゃうかなァ!!??」




「あれ、?」




「!」






つい勢い余って姿を現してしまった








「そんな所で何してるの?」





「せ……」




「せ?」










「…戦略的撤退―――――!!!!!!!!」






「えぇっ!!??;」







はそれだけ叫ぶと、最大出力で駆け抜けていった。









ッ、ここ地盤沈下で崖多いから気をつけてーー!!!???;;;」







シャルの叫び声を、耳でスルーしながら……



 







































 






「や、やばい…あたし、仮にも半殺しにしようと思ったんだよ…? なのにあの笑顔……//////」





仮ではなく本気なのが恐ろしいが。


は赤い顔をしながらも、必至にシャルの笑顔の残像を頭から消そうとした。








「惚れてもらう前に…あたしが惚れ直してどうするッ!!////」



首をぶんぶん振り回し、暴れる












「――って、きゃ……っ!!」




急に体が落ちる感覚を覚え、の思考が止まる。









――崖が多いから……









聞こえていなかったようで聞いていたシャルの言葉を思いだし、自分の状況を理解する。











――あぁ、あたし落ちてる。





崖ってこんなに深いの?





だんだん地上の光が遠くなって……





もしかして、死ぬ?





やだなぁ、全部計算外。





精神論なんか無視したらよかったかも……














「あぅッ……!!」








背中に味わった事の無い程の痛みを感じ、の意識は暗転した。





必至に消そうとした、シャルの残像を脳裏に浮かべて――











 















































……!!




(シャルの声…)




!! 大丈夫!? !!!




(やだなぁ…ついに幻まで…)










「幻でも……いいや……側にいて……」





「幻…? ふざけるな!!!」



「!!」






その声に はっと目を覚ます。









…!!」


「シャ、シャル…!?」




そこには、真剣な眼差しをしたシャルの姿。






「ど、して……」




「気をつけてって言ったじゃないか!! 何でホントに落ちちゃうかなぁ……」




シャルは安心したように溜め息をつき、を抱き締める。







「シャルっ!?//////」



抱き締められた背中に痛みを感じつつ、その喜びではフリーズした。
















が好きなんだ…無茶しないでよ……っ」







「!!!」








一瞬耳を疑って、もう一度思い出す。















好き、ですと?












「はぁっっ!?//////」





「わっ!?;」






耳元で叫んだに、シャルは驚いて手を緩めた。











「うううううう嘘!!??//////」




「ほ、ホントだけど…//////」










瞬間、の脳裏にある数式が浮かんだ。












あたしシャル好きw + シャルもあたし好きw = 両想い!!!













「ああああたしも好きだ!!!!//////」




「…知ってたよ//////」




「え…」











「だって岩落としたの、でしょ? それと、部屋に変な本、開きっぱなしで置いてたし…」







「…あたし、単純デスカ」



「…ですね//////」









 



それから、結構忘れてた背中の痛みが急に来て、あたしは苦痛に暴れた。




シャルにおぶってもらって崖を脱出すると、いつの間にか外は夜になっていた。


















、背中痛い?」




「い〜た〜い〜……」




「部屋まで行ける?」




「このあたしに歩けと? 無理ッ」











「じゃぁ…オレの部屋に」





「……ん?」













「今夜は帰さないよ?」

































惚れさせるつもりが、惚れ直させられてしまったり。





助けるつもりが助けられてしまったり。









そして今夜は、

























背中痛いのに、腰痛くされそうだッ//////


























end.