「決めた! あたし、家出する!!」
は叫んだ。
しかも、保護者の眼前で。
<向日葵と黒薔薇>
事の始まりは数十分前。
「あのね、クロロ。話があるの」
は10歳の時にクロロに拾われ、以後ずっとクロロの世話になっている。
「どうした? 二人して」
クロロの前には、と共にシャルが立っていた。
「あたし達ね、付き合ってるんだけど」
「認めん」
「…………」
重い空気が流れる。
はこの事態を予想していたのだろう、平然とクロロを睨んでいる。
(うわー、速攻だよ……)
一方シャルは、自分がここに立っていていいのかどうかさえ不安になってきていた。
「認めて」
「認めん」
「認めろ」
「認めん」
「認めんと殺すぞコラ」
「…どこで覚えた、そんな言葉遣い」
「煩い駄目親父」
シャルは二人の険悪な空気に息苦しくなる。
「…とにかく頭を冷やせ! …シャル、今日は帰ってくれないか」
「は、はいっ」
シャルは返事をすると、の頭を一撫でしてから家を出た。
「…、ちょっとこっちに座るんだ」
「…はぃ」
は少しふてくされながら、クロロと向かい合ってソファーに座った。
「どうしてシャルなんだ?」
「シャルじゃなきゃ駄目なの」
「いつから付き合ってたんだ?」
「かなり前から」
「やめておけ」
「絶対ヤダ」
「……」
「……」
クロロは溜め息をつき、はクロロを睨み続けた。
「…ふぅ、このままじゃ埒が開かないわね」
はそう言って席を立つ。
「決めた! あたし、家出する!!」
「は?」
「は、じゃないよ。この家出て行くの。今までお世話にナリマシタ」
「な、なんだ、その感謝の欠片もない棒読み口調は!」
「感謝はしてますよ? してますともさ。それとこれとは別。
あなたとあたし、所詮、他人」
「……っ!!!」
の冷ややかな目と言葉で、クロロは放心した。
それはもう真っ白に燃え尽きた。
「……嘘だよパパ☆」
「パパっ!?」
はタックルの如くクロロに抱きついた。
「ぐはッ!!」
むしろ飛びついた。
鳩尾目掛けて。
「も〜冗談だよ〜、……だ・か・ら。……認めて、くれるよね?」
「う……っ、……仕方ない……っ」
「やったw クロロ大好きw」
後日。
「――って事で、今日からシャルも家に住むことになったのでした〜」
「ッ!? 『でした』って何!? 何で俺引きずられてるの!!??」
「強・制・連・行w」
「嫌だっ、の家に住むって事はすごい嬉しいんだけどっ! 団長に姑のごとくいびられるのは嫌だーーーーー!!!!!」
「姑…そうか、嫁のごとくいびられたい、と…」
「!!」
叫んでいる内にとクロロの家の前まで引きずられていたシャル。
「という事はあれか。『お前なんか豚だ豚』と罵ったり、ハンバーグをたわしに変えたりしても許されるわけだな?」
「そ…っ、そんなドロドロの昼ドラみたいな展開望んでない!! 、助けて!!」
「も〜、男なら根性見せてよ!」
「!!!!!!」
そんな根性を見せるくらいなら、手っ取り早くをクロロから盗んだ方が早いのかもしれない……
シャルは脳裏に理想を描いていた。
「言っとくが、結婚まで清い交際をするように」
「どこまでならいいの?」
「手を繋ぐ所までだ」
「…………えいっw」
「ぐはっ!!」
はクロロのセリフ後、鳩尾にパンチを食らわした。
「……さァ行こう、シャル!!」
「えっ!?」
気絶しているクロロを他所に、はシャルの手を引き歩き始める。
「だ、団長、置いといていいの!?;」
「あぁもう、親離れよ親離れ!!」
そして、シャルの理想は、すぐに現実のものとなるのだった。
もっとも、実行者はだったが。
end.