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「っ皐月!! 待てって!!」



「うるさいなー、キタローのくせに



「だっ誰がキタローだよ!?」



「誰も何もそんな髪型してるのお前だけじゃん……本当自分の事くらい理解しろよな…全く…」



「深司も話にノってねぇで皐月止めてくれよ!!」



「だって俺皐月が怒ってる理由知ってるし…だいたいこうなった皐月止められる訳無いだろ。

 自分で止めればいいじゃないか、お前が全面的に悪いんだから……」



「それが解らねぇから話をだな…あーもう!!」






さっきから一向に足を止めてくれない女の子。


彼女の名前は、伊武 皐月。


深司の一つ上の姉で、そして…






俺の、最愛の彼女だ。









































































< 穢れ無きカノン >




























































































「はぁぁ………」





結局、俺は皐月を引き止めることができないまま自分のクラスへとたどり着いた。


学年が違うから校舎も違うし、昼休みとか長い休み時間のときにしか会いにいけない。


って言っても…今日は会ってもくれなさそうだけど…。






「深司…お前、皐月が何で怒ってるのか知ってんだろ?」


「言うわけ無いだろ、俺だってそれに関して怒ってるんだから。本当に何考えて生きてるんだよ、信じられないなぁコイツ」


「…何かすっげムカツクんだけど」







朝、顔を合わせたときまでは笑顔だったんだ。


いや、いつも以上に笑顔だった。


だけど、俺が挨拶をした後から少しずつ元気が無くなっていって、


最終的には『もういい』って言って、早歩きで先に行ってしまった。







「訳解んねぇ……」





今まで、こんな事一度も無かったのに。


昔から仲の良かった深司とその姉の皐月。


始めはやっぱ、相手は年上だし、一緒に遊んでても敬語使って話してたけど、


付き合うようになってからはタメ口になって、隠し事なんか無いくらいいつも一緒にいて、


……なのに、何でこうなっちまったんだよ…。






「…本当に解らないの?」


「解らねぇから頭抱えてんだろうが」


「キタロー頭を?」


「違うっつの!!」






深司の態度にイライラしながらも、俺は深司の次の言葉を待った。





「…嫌だなぁ、何か俺が教えなきゃいけない空気になってるじゃないか。別に言うつもり無いんだけどなぁ。


 教えたら教えたで皐月に怒られるし、教えなきゃ教えないで面倒な事になるだろうし…面倒だなぁ」



「だから何なんだよ」


「…じゃぁ問題。どんな生き物にも必ずあるものは何?」


「…は?」


「ちなみに年に一回」


「何が言いたいのか解んねぇ」


「大ヒント。去年の今日、何してた?」


「去年の今日……? んなもん覚えてるわけ…」


「だったらもう知らないよ」






そのまま、深司は俺の席から立ち去った。


何だよ、去年の今日何があったって言うんだ?


そのまま、俺は不機嫌に窓の外を見た。この校舎の窓側には、中庭が広がっている。







「……え?」






何気なく中庭を見下ろすと、木陰で楽しそうに笑っている皐月の姿。


しかも、一緒にいるのは…男。


顔は見えないけど、制服は男物だ。







「何、で……」






呆然とその様子を見ていたら、男が皐月に何かを手渡した。


可愛い袋のそれを受け取って、さらに皐月は嬉しそうな顔をしていた。


……何だよ、あれ……。






「っくそ!!」





俺はもうすぐ始業のチャイムが鳴るのも気にせず、教室を飛び出した。














































































「うん、そうなんだ。酷い話でしょ」


「それであんなに不機嫌だったんだな…」


「本当もうありえないよね」







「っ皐月!!!」






階段を駆け下り、渡り廊下に出てすぐに皐月の姿を確認する。


驚いた顔の皐月も気にかけず、俺は思い切り相手の男の肩を掴んで振り向かせた。







「テメェ、俺の彼女に何手ぇ出して……!!  っ!?」






その人の顔を見て、俺は全身の血の気がさぁっと引いていくのを感じた。


その人は…。





「橘さん……!?」


「…いい態度だな、神尾」


「す、すすすスイマセンっっ!!!」


「まぁいい、怒ってないからそう謝るな。それに、俺よりも謝らなければならん奴がいるだろう?」


「へ……?」


「無駄よ桔平。ソイツ、覚えてないんだから」







刺々しい皐月の言い方で、橘さんまでも言葉を詰まらせた。






皐月…お前のほうが年上なんだから、もう少し大人になってやれ」


「中三にそんな事期待するな奈良の大仏様が


「相手は中二だぞ不良娘


「所詮どっちもガキって事でしょ。っつーわけで私からは絶対折れない」






手をひらひらと振って3年の校舎へ向かおうとする皐月。


…一度も、俺と目を合わせない。






「あーその、何だ。アイツのあの態度もどうかと思うがそれだけ傷ついてるんだ。…早く思い出してやれ」


「何かよく解らないっスけど…。…皐月!!」





俺の声で、初めて、皐月が足を止めた。


けど、何も言わない。振り返ってもくれない。





「…所詮、どっちもガキなんだよな?」


「それが?」


「俺、ガキだから。…こういう事しても許されるよなって、意味!」


「っきゃ…!?」






俺は持ち前のスピードで皐月の元へ走ると、一瞬で皐月を腕の中へ抱え込んだ。


いわゆる、お姫様抱っこだ。







「ちょ…ふざけないでよ!! おろして!!」


「じゃぁ橘さん、失礼します!!」






俺は呆然とした橘さんをその場に残し、皐月を抱えたまま階段を駆け上った。





「どこ行くの!? 授業始まるじゃない…!!」


「いいからリズムを上げるぜ!!」


「よくない下げろ!!」






言ってる間に、目的地にたどり着く。


バンっ!! と大きな音を立てて、屋上の扉は開いた。






「おおー、今日も空が青いぜ!」


「何言っちゃってんの、馬鹿……」






観念したのか、皐月は急に腕の中で大人しくなった。


俺はそれに気分をよくして、皐月を地面へと解放する。






「さてっと。何で今日あんなに機嫌悪かったんだ? 教えろよ」


「教えない」


「じゃぁ帰さない」


「……………」






皐月は膨れっ面になると、フェンスにもたれるように座りだした。


俺もその隣に座る。






「…本当に覚えてないんだ?」


「悪ぃ、本当に解んねぇ」


「アンタの事だから、ドッキリでも狙ってるのかと思ったのに違ったんだ。なんかショック。ショックすぎて呆れてきた」


「ご、ごめんって…」


「アンタの事だから、携帯のカレンダーにもしっかりチェックして本人よりも楽しみにしてるもんだと思ってたのに違ったんだ」


「携帯?」


「去年は一週間くらい前からそわそわしてて解り易かったのに。今年忘れたのはその反動とでも言うわけね。ああそうですか解りました一回死んでみたら?


「ちょ、ちょっと待てって!!」






俺は勢い良くポケットから携帯を取り出し、カレンダー画面を呼び出すと急いで去年の今月までページを捲った。


……えーと……あったあった!!


……………………………え?








『○月×日 皐月の誕生日!!リズムが上がるぜ!!』







たん、じょう…び?






「…え? え?」


「…このスカポンタン。妖怪。リズム馬鹿」


「っ本当ごめん!!!!」






俺は携帯を放り出し、その場で土下座した。


さすがの皐月もびっくりしたみたいで目を見開いていたけど、そんなの関係ない。


俺は…大好きな彼女の誕生日を、完全に忘れていたんだ……。






「何でもする、何でも買う、何でも聞く!! 皐月が俺に望むこと、何でもやるから頼むっ嫌わないでくれ!!」


「ちょ、ちょっとアキラ…!! 顔上げてっ土下座なんてやめてよっ」


「だって俺…!!」






思い切り顔を上げた俺を見て、皐月は間を空けて笑った。





皐月…?」


「ご、ごめっ…だ、だって、そんな泣きそうな顔してるからっ…! あははははっ!!」


「わ、笑うことないだろっ!?」


「だって……あっはははは!!!」






ついには腹を抱えてその場に転げ笑いだしてしまった皐月。





「っはぁー…笑った笑ったー」


「………………」


「私もガキだからさー、一言言えば良かったのにね。…今日は私の誕生日だぞ、まさかお前忘れてんじゃないだろなっ! …ってさ」


「…………ごめん」


「うん。私も、ごめん。大人げ無いのは解ってたけど、ついね」






寝転がったまま、俺を手招きする皐月。


おずおずと、俺はそんな皐月に近づいて、






「えいっ」


「わっ…!?」






ぐいっと引っ張られ、気づいたときには、俺は皐月の胸の中にいた。





「ちょ、皐月!?///」


「ぎゅー。」


「ちょっ…(可愛いから!!///)」


「あ、苦しい?」


「い、いや大丈夫! むしろ気持ちい…」






言いかけて、口を閉じた。


皐月はそんな俺にくすりと笑うと、少しだけ腕の力を強めた。






「…今はこれでいい。放課後、一緒にケーキ食べに行こ? 深司も今日は二人きりにしてくれるって言ってたし」


「あ、ああ…」


「今朝の時点ではね」


「本当ごめんなさい」







とくん、とくんと耳に響く、皐月の鼓動。


このリズムが、俺は好きだ。


……少し、リズムを上げるか?






「…皐月」


「うん?」


「好きだぜ。…誰よりも」


「ん…っ…」








少し首を伸ばして、キスをする。


お互い抱きしめあっているから、こうしていても身体で鼓動を感じることができる。


……ほら、皐月のリズムが、どんどん上がっていく。






「…今はのんびりまったりしたい?」


「うん…」


「じゃぁリズムは変えない方向で」


「……このリズム馬鹿…///」







うとうとと、どちらとも無く眠りに落ちる。


皐月のリズムは俺の、俺のリズムは皐月の、一番落ち着ける子守唄だ。







誕生日、忘れててごめんな?



その分、今日はずっと一緒にいようぜ。







































そして俺たちは、探しに来てくれた深司に大きなため息を吐かれながら、昼休みに起こされた。














































end.







** あとがき **



 初アキラ夢!


 いやぁ、ドキサバや学プリのアキラちゃんにはたまに鳥肌物でしたが、何だかんだ言って大好きな人です。


 だってさ、『リズムにHigh!』って生で聞いたらホント爆笑できるよ??


 そんなアキラちゃん。私とは中々縁が深いお方なのです。


 この間カラオケに行った際、適当に開いたページにアキラちゃんがいたり。はたまた不動峰全員の歌だったりでまぁ笑った笑った。


 そんなアキラちゃん。でも大好きですvv




 あ、ちなみに皐月さんが橘部長からもらったプレゼントはリストバンドです。


 気が向けばそれに纏わるアフターストーリーでも書こうかと思ってますのでそちらもお楽しみに!


 でもまぁ、予定は未定なので。笑