午後4時。


空が夕日で真っ赤に染まる時間、ひと気の無い校舎の廊下をひっそりと歩く生徒がいた。





「……………ふぅ…」





彼女、は人目を避けるように慎重に廊下を進んだ。


そう、全てはあの俺様男をぎゃふんと言わせるために……。
































































< プログラム >








































































「よぉし…誰にも、見られてない、と…」





辺りを見渡し、すばやく入った教室は―――生徒会室。


この時間、跡部は部活で生徒会室にはいない。それを事前に調べた上で、はこの場所を選んだ。






「えっと…あったあった」





部屋の奥に設置されているパソコンの前に座り、は電源を入れた。


立ち上げている間もきょろきょろと辺りを伺い、誰もいないことを確認する。






「はぁ……なんでこんなコソコソしなきゃなんないんだか…」





それは、今日の情報の時間のこと。


簡単なソフトのプログラミングの授業だったのだが、はどうやっても上手くソフトを起動できずにいた。


何度見直しても、どこが間違っているのか解らずに一時間を過ごしてしまい、跡部にも鼻で笑われたのだ。






『何だ…お前、こんな簡単なプログラミングもできなかったのか?』


『でっ、できないんじゃないもん。寝てたら授業が終わっちゃってただけですー』


『ほう…? じゃぁ、これ作ってみろよ』


『……何これ』






そう言って跡部から手渡されたのは、一つレベルが上のプログラミング図だった。






『寝ていられるほど余裕ななら、これくらい朝飯前だろ?』


『あ、当たり前じゃない。こんなの、ちょちょいと終わらせちゃうわよっ』


『言ったな…? じゃぁ、期限は明日だからな』


『望むところよ!』






……と、ケンカを買ってしまったわけで。


家のパソコンではメモリが足らないので学校で製作しなければならないのだが、


こんな難しいプログラミングを一人で必死にやっている姿は当然見せられないから、コンピュータールームは使えない。


それなら裏を掻いて、敵の本陣なら見つからないのではないかとは考えたのだった。







「えーと…これを、こうして? で…あ、ここで組み合わせないとだめなのかな…」






図面とにらめっこしながらキーボードをカチカチと打ち続ける。






「…お? 何かいい感じじゃないの…?」





特に詰まることなくプログラムし終え、基盤は作り上げた。これでソフトは起動するはずだ。


……が、何度ソフトを立ち上げても、真っ黒なウィンドウしか現れない。






「えぇー!? ちょっと何でよどこも間違ってないでしょー!?」






クリックしてみたり、ウィンドウを動かしてみたりしても何の反応も無い。






「このポンコツっ、いじわるー!!」





は思わず、斜め45度の角度からパソコンの画面をはたいた。


途端、画面が変な色に変わったまま、動かなくなる。







「……………へ? ちょっ、まさか…壊しちゃった、とか…?」






さぁっと血の気が引いていき、は頭が真っ白になった。


生徒会室のパソコンだ。きっと色々なデータが入っているに違いない。






「……ど、どうしよ…跡部に怒られる…!!」





だんだん涙目になっていき、すでに思考はパニック状態。


そんな中、は一つの解決策に行き着いた。






「……………私は何も見てない…!!」






満面の笑顔で電源に向って指を向け…






「あーいきゃーんふらーい☆」


「飛ぶな馬鹿が」


「へっ!?」







電源を切るはずだった指は、大きな手に掴まれていた。


その声、香水の香り、気配が、の心臓を掻きたてる。






「あと…べ…っ…」


「…お前何してんだ」






跡部はを後ろから包み込むようにデスクに両腕をつき、ため息をついた。





「…このパソコン、ディスプレイが壊れてんだよ。ちょっとした衝撃でこうなっちまう。…何かしただろ」


「………………殴りました」


「ったく…まぁ、明日修理に出す予定だったからいいが…」






言いながら、跡部はまだその体勢を崩さない。


は自分の心臓がどんどん大きな音になっていくのを感じながらも、この状況がいまいち理解できなかった。






「あ、ぁあのさぁ…!!」


「あーん?」


「そっ、そろそろ離れてくんないかなぁ?」


「何故だ?」


「な、何故って…」






耳元で、跡部の低音の声が響く。


それだけで、は顔を紅潮させていた。






「……クックック…」


「なっ…」


「なーにガチガチに固まってんだ。馬鹿」


「だっ、だって…!!」


「だって、何だ? ……言ってみろ」


「〜〜〜〜〜ッッ」






いかにも楽しそうな表情をする跡部にむっとし、は思い切り振り返った。






「パソコン壊しちゃったのは謝るわよ!! だからってこんな風にからかうこと無いでしょ!?」


「俺がいつお前をからかった?」


「今! 今現在!!」


「からかってねぇよ。俺はいつでも本気だ」


「…っ…大体あたしが本当はプログラミングできなかったこと解ってて、こんな難しいのやれだなんて…っ」


「……そうやっていつも素直にしてりゃいいんだ」


「え…?」









言葉を理解する間もなく、時が止まった。







唇に、やわらかい、感触。










「……気の強い女は好きだが、つまんねぇ意地張ってんのは可愛くないぜ? 


「……………え? ちょ、ま、は…?」


「何混乱してやがる。…俺様のキスに酔ったか? あーん?」


「なっ何、して…」


「キスに決まってんだろ? …それとも続きがほしいか?」


「ちょっ、ストップ!!///」







迫ってくる跡部を寸でのところで止める。






「ねぇ、何でこうなってんの…? この状況の流れがマジで理解できないんだけど」


「…今日の授業、お前のソフトが起動しなかったのは俺が仕組んだからだ」


「………はい?」


「ちなみに渡したプログラミング図も適当に作ったもんだ。どうやったって起動するはずがねぇんだよ」


「…何それ…アンタ、何がしたいわけ!?」






怒りを露にするに、跡部はふっと笑う。






「お前なら、誰もいないこの生徒会室を使うだろうと思ってな…初めからここにいた」


「嘘っ!?」


「嘘じゃねぇ。…こうでもしねぇと、お前はいつもすぐに帰りやがるから…」






一瞬、年相応に見えた跡部の表情に、はまた、どくんと心臓が高鳴った。






「……、俺様の誕生日、知ってるか?」


「え…10月、でしょ」


「そうだ。…だが、一番祝ってほしかったヤツから、俺は何ももらってない」


「………」






そりゃ、だって。たくさんの女子が教室に押し寄せる中、自分がプレゼントを渡せるわけが無いじゃないか。


は10月4日の惨劇を思い出して、小さくため息をつく。






「……くれよ。プレゼント」


「…さっきキスした…」


「あんなもんじゃ足りねぇ。…もっとだ…」












「…俺は、が欲しいんだよ」












耳元で呟かれ、は小さく反応する。


それを見て気を良くした跡部はを持ち上げると、跡部専用の豪華なソファーに移動した。






「……どーゆー意味よぉ…」






「あーん?






 ……愛してるってことだろーが」














































どんなに気持ちを誤魔化しても、



最後は貴方の眼力(インサイト)によって暴かれる。

















そう、全ては彼の、計算(プログラム)通り。


































































end.




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お友達のパソコン復活祝い!!

おめっとー!!☆彡



この後二人が何してたかはご想像にお任せ…((ぉぃ

でもなんか勢いで書いたせいか微妙ぃな!!

ごめん、意味不でwww(´∀`*ゝ)

とりあえずアンタ跡部に誕プレやっちゃいなよ☆笑



最後まで読んでくれた貴女にも感謝です!     拝。