「…………………教えてあげる。






 私がアナタに、隠してる事を、一つだけ」

















そう言ったの表情は、




無表情で、


でもどこかで、







悲しそうやった。







俺は何も言えんと、の次の言葉を待ってた。








「…………行こっか」







は、それ以上、何も言わんかった。




















「あー………」








外は、まだ雨が降ってる。


明日は晴れるか、降ってるか……





どっちにせよ、ゲームは明日や。


俺は眠気に身を任せた。



























































The reason for being.

     The value of being.






  ――12th.



































































「おはよう、長太郎」


「おはようございます! 雨、止んでよかったですね」





あと何分かで朝日が顔を出すだろう、空は朝焼けでほんのりと赤く染まっていた。


昨日の雨の残り雫が木の葉を濡らし、コンクリートの地面は特有の匂いを漂わせていた。






「朝練は?」


「もうそろそろ皆さん来る頃ですね。ほらさんっ、早く入りましょう!」





学園の前で話していた私は、長太郎に背を押されて校内に入る。


そんなにテニス部の人に会いたくないのか…。






「で、仕掛けだよね。その前に使えそうなところ一通り案内してくれない?」


「はい! お任せ下さいww あ、でも朝の内に全部回れますかね…?」


「長太郎さえ良ければ、休み時間とか手伝ってほしいんだけど」


「もちろん構いませんよw 俺の事は好きに使ってくださいね?」





少し顔を赤くしながら言う長太郎。


何となく頭を撫でようとして、つま先立ちになるけど、届かない。


くそう、この巨木。






「背比べですか?w」


「違………手、出さないでね。これは自分への挑戦なんだから


「解りましたw (可愛いなぁ……)」





もう少し…あと、一センチくらい…。


ふるふると足が震える中、私の指が長太郎の前髪に届いた。





「っ届いた!」


「っ…!///」





その瞬間、長太郎はいきなり私に抱きついてきた。





「ちょっと……どうしたの?」


「ど、どうしたのって………///」





支えるように抱きしめられてるから、まだつま先立ちだけど、足は辛くない。


伸ばしたままだった腕の居場所が無くて、私はとりあえず長太郎の首に腕を回した。





「長太郎?」


「かっ……」


「か?」





「可愛すぎ、ですよ……さん……///」





言って、自分でも恥かしかったのか、長太郎はさらに腕に力を入れた。






「ちょ、長太郎? 痛い……」


「離れんかいっ、阿呆!!」





突如聞こえた声に後ろから引っ張られ、私は違う温もりに包まれた。


この香りを、暖かさを、私は覚えてる。





「…忍足、おはよう」


「おはようさん……やなくて!! 何抱きあっとんねんっ」


「何って、一応不可抗力なんだけど」


「そうですよ! さんがあまりにも可愛くて、思わず抱きしめちゃっただけですからw


「それは不可抗力言わんのや。ってか長太郎、反省の色は無いようやなぁ…?


「別に忍足先輩のモノじゃないでしょう、さんは」


「俺のモンや」



「人をモノ扱いするな」





忍足は私の発言に少なからず怯んだ。





「ちょ、ホンマずるいって! 何で俺だけ怒られて長太郎は許されんねん!」


「アンタ先輩なんだから、少しは大人になりなさい」


「そうですよ先輩w」


「お前に言われたないわ!!」









「何騒いでんだ? あーん?」







その時、多分私が今一番どうでもいい人の声が聞こえた。


振り返れば、レギュラー陣がぞろぞろと列を成している。






「揃いも揃って何やってんだ?」


「ちょっと後輩に制裁をやなぁ……」


「長太郎、何したんだよ?」


「あ、宍戸さん。何って、抱きついただけですよ?」


「はっ、それくらいで『制裁』だぁ? 忍足、お前も随分必死だな、オイ?」





跡部はククっと笑うと、ちらっと私を見た。





「…おはよう」


「ああ。…話は聞いてるな?」


「……鬼ごっこ全員参加要請?」


「要請じゃねぇ。強制だ」


「この際何でもいいわよ」





私はまだ抱きついていた忍足から離れ、そこにいた全員を見渡した。






「誰が来ようと同じよ。私は勝つわ」





その真っ直ぐな視線に、ある者は見惚れ、ある者は微笑んだ。






「で、私あなた達の名前とか知らないから。勝った時の条件と名前、教えてくれない?」


「勝つつもりなんだろ? だったら聞かなくていいじゃねぇか」


「万が一捕まったら嫌じゃない。先に聞いておいたほうが死ぬ気で逃げれるもの」





そう言うと、跡部はまた笑った。


その笑い方、ムカついてならない。





「それなら俺から行くぜ? 名前は知ってるだろ、跡部 景吾だ。条件はの持ち帰り


名前なんか忘れたかったです。そして私はモノじゃないってさっきも言ったのよね」


「あーん? って事は、忘れられなかったって事だよな? そんなに俺のキスは良かったか?」


「ここで感想言っていいの? 微妙でした





ぴく、と、跡部が反応したのを私は見逃さなかった。





「あら、よほど自分に自信があったみたいね? ご愁傷様」


「……お前みたいな女、好きだぜ? ……必ず一晩で落としてやるよ」





跡部は すっと私の顎に手を添え、すぐに離した。


残念ながらナルシストはあまり好かないわ。






ちゃんちゃんっ! あ、って呼んでEー?」


「構わないけど。で、誰?」


「俺、芥川 慈郎!」


「芥川君ね」


「同い年だろ? ジローって呼んでほCー…駄目?」


「…(あ、可愛いかも)………ジロー?」


「そう! へへーw って可愛Eね! 昨日コートに来た時も思ったんだけどw」






「おい…ジローの奴ナチュラルに名前呼ばせてるぜ?」


「クソクソ! ずりーぞジロー!!」


「ていうか、ってもしかして可愛いもん好き…?」


「もしかしてっつか、そうだろ」


「じゃぁ忍足先輩は到底無理ですねw」


「何やと!? 俺だって可愛い系目指せば…」


「侑士、それはキモイからやめてくれ」


「……………何やねん、みんなして…酷いわ…」






周りの抗議も気にせず、ジローはにこにこと笑ってる。






「えっとね、俺が捕まえたら、膝枕してほCーw」


「そんな事でいいの?」


、ジローの膝枕嘗めたらあかんで? 寝ぼけてるジローは何やらかすか解らんからな」


「…………そうですか」






ああ、この子も普通じゃないんだ…。


むしろ、テニス部に普通は要求しちゃいけないのね。







「次、俺なっ! 俺は向日 岳人!! 、一緒に跳んでみそ!」


「跳べません」




私は向日が手を握った瞬間に言葉を放った。


さっきから気になってたけど、この人一人で軽く3mとは跳んでたって。


さすがにそんな世界は拝みたくない。





「向日ね。条件は?」


「えーっ何で俺は苗字なんだよっクソクソ!!」


「……じゃぁ、岳人」




私が名前で呼ぶと、岳人は急に表情を明るくした。


…あ、可愛い…かも。






「おい…がまた反応してるぞ」


「嘘やん……岳人可愛い系か? あれでええんか……?」


「忍足惨めだCー…」






「俺の条件は、2人でどっか遊びに行くこと! カラオケしたり買い物したり…の好きなトコ行こうぜ!」


「つまり、デート?」


「そういう事!」





別に構わないけど…一日このテンションに引っ付かれて体力が持つだろうか。






「激ダサだな、お前ら」





そう言って出てきたのは、帽子を被った人。


身長は、長太郎ほど無いけど、私より10cm以上は高いだろう。


切れ長の瞳に見下ろされ、私は少し身構えた。





「激ダサなのはお前だろ、宍戸? さっきまで条件何にしようか迷ってたクセに〜」


「なっ……馬鹿野郎っ、本人の前で言うんじゃねぇよ!!///」


「……あら」





何、意外と可愛いんだ。


あれ? この部活ってもしかして可愛い人多い?






「あれ……、また何か反応してるC……」


「あー…まぁ、宍戸は女受けしそうな感じではあるが…」


「無理…俺立ち直られへん…」






「えっと…宍戸君?」


「あ、ああ…宍戸 亮だ。条件は……(うわ、どうしよう俺……激ダサ)」





「条件も考えてねぇのによく参加する気になったなぁ、オイ?」





その時、跡部がにやにやと笑って宍戸君を見た。





「ちょっと跡部、そんな言い方…」


「俺だって欲しいもんがある時は形振り構ってらんねぇんだよ」


「!」





振り返ると、宍戸君はさっきまでの照れた顔は残してなかった。






「……、ビリヤード好きか? 一緒にやろうぜ」





私と視線を外しながら言う宍戸君。


可愛い、と思いつつ、私はその言葉に反応した。





「ビリヤード? うわー懐かしい! 最近やってなかったなぁ」


「!///」




私の満面の笑みを直に見た宍戸君は、一瞬で真っ赤になった。


ギャラリーは私の後ろ方向に居るので、見えてない。





「し、宍戸!?」


「宍戸さんがどんどん赤くっ!?」


「ずりーぞ宍戸! 一人だけ何見た!?」





思えば、私が心から笑ったのなんて久しぶりかもしれない。


それほど、ビリヤードは懐かしい遊びだった。





「宍戸……あ、宍戸でいい? 私もビリヤード好きだよ。今度、このゲーム関係なくやりたいな」


「……おう…///」





後ろから不平不満な声が聞こえてきたけど、全無視。


まだ名前を聞いてない人を見渡した。






「貴方は?」


「俺は滝 萩之介だよ。ヨロシク、ちゃんw」





滝君は私の手を握り、甲に軽くキスを落とした。





「滝っ、何やっとんねん!!」


「は? 何怒ってるの?」


「「「え!?」」」





全員が固まった。


止めたのは私だったから。





「あ、そっか。ここ日本だもんね。アメリカでは紳士な行いよ?」


「そういう事。君たち、好かれたいならもっと勉強すれば?」





滝君の言葉に、忍足辺りが青筋を立てていた。





「で、滝君の条件は?」


「そうだなー、……写真、撮らせて?


「は?」





滝はマニアなんだよー。裏写真部からよく写真買ってるCー


「………は?」





ジローの発言に、私は思わず滝君から距離を取った。





「やだな。写真なら鳳も買ってたじゃないか」


「滝さんみたいに毎日新しいのチェックしてる人と一緒にしないで下さいw





本格的に、この人やだよ……。


私の本能が叫んでる。



この人にだけは捕まっちゃ駄目だ。







「で、そこの貴方は……?」





「コイツは樺地 崇弘。参加はしねぇが俺のサポートだ。なぁ、樺地?」


「ウス…」


「何でアンタにサポートが着くのよ?」


「樺地はいつでも俺のサポートなんだよ。俺が決めた事だ。文句あっか」


「もういい、跡部は黙って」





私は跡部を押しのけ、樺地君の元へ移動する。





「貴方には自分の意思は無いの? こんなのにいつも命令されてていいの?」


「………………本当は…」





樺地君が口を開いた瞬間、その場の空気が変わった気がした。






「…先輩と………お話、してみたかった………です」


「…そっか。ん、いい子ね」





私が頭に手を伸ばすと、樺地君は身体をかがめてくれた。


頭を撫でてあげると、周りからはブーイングじゃなくざわめきが巻き起こる。





「か、樺地が喋った…」


「しかもナデナデされてるCー…樺地ズルイ!!」



「外野、うるさい」





私はため息混じりに外野を一別する。




「でも……話せたので……サポート、します」


「そ、そう?」





どこまでも忠誠を誓うのね……。


樺地君はいい子だと思うけど、私には、その気持ちが解らない。





「で、最後はあなたね?」


「…二年の、日吉 若です。あの………」


「何?」




「…俺、先輩の下克上を応援します。だから、参加はしません」


「「「「「は?」」」」」





私だけじゃなく、その場の全員が声をそろえた。


下克上て……別に天下を取るつもりは無いんだけど。






「その代わり、長太郎と一緒にサポートさせて下さい。部長が樺地をサポートにつけるんだ、長太郎だけじゃ力不足でしょう?」


「日吉…誰が、力不足だって……?」


「そうね、分が悪いわ。日吉君、お願いしていい?」


さんっ!?」


「…一応言っとくけど、力不足なのは私。長太郎じゃないから、いちいち黒オーラだしたり一人で落ち込んだりしないで


「はいっ、解りましたw」





扱いやすいのか扱いにくいのか……。


とにかく、これで役者は揃ったわけだ。











「……放課後が楽しみね………?」











そのセリフに、全員が表情を変える。






(…あ、またやっちゃった)






私はもう特に気にすることなくその場を後にした。


少し遅れて、長太郎と日吉君が着いてくる。






















「何、や……今の……///」


















































―――さぁ、ゲームを始めましょう?




















































TO BE CONTINUED...











 「あんな声、聞いた事無い…///   この話が面白かったら俺を押してな?」