「初めてだよね? 亮が家来るのって」
「あ、ああ…そうだな」
やべぇ……
「急に電話くれたからビックリしたよ。で、何か用だったの?」
「まぁ、何だ、その……話があってよ」
心臓がバクバク言ってやがる。
でも、伝えねぇと後では怒るだろうからな…。
今日は、俺の誕生日。
< 余りにも愛おしくて >
「何? 別れるとかは却下ね」
「わっ、別れる訳ねーだろっ!!」
「解ってるって。冗談じゃん」
椅子に逆向きに座り、背もたれに前かがみにもたれながら、はケラケラと笑った。
とはつい最近付き合いだしたばかりで、当然、今日が俺の誕生日だとは知らない。
こいつは結構鈍感だから、たぶん、今日一日俺が逃げ回っていたことも知らないだろう。
がいるから。のプレゼントが欲しいから、俺は女子たちから逃げていた。
だけど、逃げてる途中で思い出した。
は、俺の誕生日を知らない。
「そういえば、今日忙しかったみたいだね? 休み時間になったらすぐ教室飛び出してさ」
………やっぱり、気づいてないらしい。
「……あのよ、実は… ―――!!」
その時、
の首元に、俺は見たくも無いものを発見してしまった。
「…? どしたの、亮」
「は、はは……っ」
乾いた笑いしか出てこない。
俺は一歩一歩、に近づいた。
「……んだよ…これ……」
の首元には…赤い、――キスマーク。
こんなもの、俺はつけた覚えがない。
「え…何…? これって、どれ…?」
これって、俺が悪いのか?
が悪いのか、それとも、これをにつけた奴が悪いのかよ?
解んねぇ……っ!!
「亮…っ」
「チクショウ……」
「っ!?」
の両肩を掴み、俺はの首元へ顔をうずめた。
唇がその跡に触れた瞬間、がピクンと反応したのが解った。
構わずに、その上から新しく俺の跡を刻みつける。
「や、ちょっと痛い…っ亮!!」
「何だよ…」
「え!?」
「何で……こうなるんだよ……」
そのまま床にひざを落とす俺の方へ、は椅子から降りて近づいた。
「亮…? どうしたの? 何があったの…?」
「……お前、誰か男いんだろ」
「は……?」
「首元の……キスマーク………せめて、俺と会う時くらい隠せよな…」
苦笑いを、こぼす。
正直、笑えてない。
きっと激ダサな顔をしているに違いない。
「…………………………。
ほんっと可愛いなー、亮は」
「…へ?」
間抜けな声を出してしまった。
そう思いながら、ゆっくりと顔を上げる。
は、笑っていた。
「男なんて、亮しかいないっつーの。あー、おっかしー」
「え、でも、それ…?」
言葉と思考が追いつかない。
俺は震える指で跡を指差した。
「もう、ちゅーして気づかないの? これ、ただのアザ」
「アザぁっ!?」
「だから痛いって言ったのに……。
今日の体育テニスだったでしょ? んで、あまりに眠くてサボってたら友達にサーブ打たれてね、首にクリーンヒットさ。
一瞬三途の川を垣間見たよ。危うく渡っちゃう所だったー」
「そ、そんな理由で……」
一気に、身体の力が抜けた。
自分が情けなくなる。
「…疑って、悪かった。本当に悪ぃ…」
「もういいからさ。私も素直に言わなかったのがいけないんだよね」
「え…?」
「亮、誕生日おめでとう」
一瞬、何を言われたのか気づかなかった。
「亮? おーい、亮さーん?」
「何で…知って…?」
「鳳君がねー、こないだ教えてくれたんだ。
だから、せっかくだしドッキリでお祝いしてやろうと思ってね? 知らない振りして黙ってた。ごめんね?」
長太郎の奴……。
気が利くのか余計な事したのかどっちなんだよ…。
「でも、亮が自分で言ってくれるの、初めは待ってたんだよ?」
「それは…悪ぃ」
「あはは、もうそれはいーよ」
そう言って、は鞄の中から袋を取り出した。
「はい、プレゼント!」
「あ、ありがとよ……」
結局、一番鈍感なのは、
俺、だったんだな。
「あ、ちなみに私にサーブ打った奴、岳人ね。ボコボコにしといて」
「…殺しとく」
end.
*** あとがき ***
この後ガックンどうなったんだろね…。
ご愁傷。笑
むしろ誕生日に間に合わなくてごめんよ宍戸…!!笑
とりあえず何はともあれ、HAPPY BIRTHDAY☆彡