光さえあれば、私にも何か特別な事が起こると思ってた。
闇さえ無ければ、私の過去は書き換えられると思ってた。
そう、思ってから。
瞳に映るもの、全てが灰色に見えた。
< この醜くも美しき世界 >
「………」
「ああ、シャルじゃない。…私に何か用?」
仮宿の屋上。そこが、私の居場所。
それを知っているシャルは、よくこの場所に現れる。
「団長が呼んでたよ。部屋まで来てくれって」
「ん、解った」
そのまま横を通り過ぎようとして、止まる。
シャルに腕を掴まれたからだ。
「…どうしたの?」
「……は……その…好きな人とか、いるの?」
「は…?」
「い、いや、何でもないんだっ」
「………そんな人がいたら…そうね。――私はその人を真っ直ぐには見られない」
「え?」
「…いいえ。何でもない」
そう言って、は屋上を後にした。
「お呼びですか」
その足で、クロロの部屋に向かった。
相変わらず、彼の部屋は電気すら付けられずに月明かりのみが差し込んでいた。
「ああ、来たか。…とりあえず掛けるといい」
クロロにソファを勧められ、正面に座る。
の顔をじっと眺めていたクロロは、徐に話を切り出した。
「この世は醜いと思わないか」
「また急なお話ですね」
「そうか? お前なら、常日頃そう感じていると思っていたが」
「…………」
その言葉に、は思わず目を逸らした。
「…ええ。そう、思います」
人の生、人の死に特別な感情は無い。
そこにあるのは強者と弱者、そして、勝者と敗者。
別に自分は強者にも勝者にもこだわりは無い。
自分が生きようと死のうと、そこに感情は無い。
自分から死のうとは思わない。無理して生きようとは思わない。
そんな調子でただ何となく生き続けた。
「お前の真の願い、望みは何だ?」
光を知らない私が唯一求めたもの。それもまた光。
それさえあれば、私の過去だってもっと照らされていたはずだと。
今では何の色も映さなくなったこの瞳。
あの日、闇に失った感情。
…――――私は、こんな所まで来ちゃったよ。
「私の、願い……」
「そう。お前の、願いだ」
「………」
「この世は、確かに醜いと思う」
「!」
扉の方を振り向けば、そこには。
「シャル…?」
「ごめん団長。話、聞いちゃった」
「…いいだろう、お前の意見も聞きたい」
シャルはの隣に座ると、話を続けた。
「この世は醜いと思う。だけど、全てがそうじゃない」
「では、何が清浄なものだと思うんだ?」
「何が、かは解らない。理屈じゃないんだ、オレの中では」
そう言って、シャルは真っ直ぐクロロを見つめた。
「完璧に清浄なものなんて無い。だからこそ、この世は美しい」
「美しい……?」
「…――この醜くも美しき世界…」
「?」
はソファから立ち上がる。
「団長、私の願いは…『闇』から『光』を取り戻すこと」
「光…?」
「この世は醜いから、私は光を失った。だけどそれこそが美しいから、私は光を探すことが出来る」
そして、微笑んだ。
「……きっと理屈じゃないのよ」
初めてみる、の表情に、
クロロはもちろん、シャルも唖然としていた。
「お話は、以上で?」
「あ、ああ…」
「それでは……シャル、行こう」
「う、うん」
2人は屋上へ上がり、綺麗な満月を眺めていた。
「私、この世に生きてるのかなって…ずっと思ってた」
「え…?」
「だから、死んでも生きてても変わらない。私の中には光が無いから」
「光が?」
「そう。――感情が」
光…それは、心。
「だけど、探したいと思った。いつのまにか闇に投げ出してしまった……私の心を」
「………」
「そう思わせてくれたのは、シャルよ」
「オレがっ!?」
「シャルは…私の事好きなんでしょう?」
「! な、なんか今日の、積極的というか何というか…人変わってるよ…?///」
「そう変えてくれたのも、シャルよ」
そう言って、シャルの首に手を回す。
「私と同じ闇に生きながら、あなたは光を失わずに居る」
「…っ///」
「ねぇ、私に光、頂戴?」
「………///」
そして、ゆっくり、唇が重なった。
「……少し『光』に触れたかも。…シャルの瞳の色、ちゃんと見える」
「…そっか」
――ねぇ、私の事、好きでしょう?
…うん。は…?
……愛してる。
end.
■あとがき■
なんじゃこれ。
ワケ解らんっ!!!!
やっぱだめだー、書けないー。