からん、ころん。
そんな音があちこちから聞こえてくる。
神社に続くこの道は今、色とりどりの着物で埋め尽くされ、まるで花畑の様に美しい景色をしていた。
からん、ころん、からん。
もまた着物を着て、履きなれない草履でその道を歩いていた。
神社の入り口で待つ彼は、着物を着た自分を褒めてくれるだろうか?
そんなことを考えていると、自然と胸が高鳴った。
「……まだ、かな……」
神社につき、大きな鳥居の下で辺りを見渡した。
約束の時間まで、あと10分。彼はまだ来ていないのだろうか、姿が見えない。
「……こっちじゃよ」
「きゃっ!?」
後ろからいきなり肩に置かれた手に、は悲鳴を上げて振り返った。
そこにいたのは、愛しの彼。
「初驚き、かの?」
「………雅、治…」
「あけましておめでとう、。…着物、よお似合っちょるよ」
はその言葉に顔を赤くして俯き、小さく、彼の指を握った。
< 最凶ジョーカー >
境内は人で溢れかえり、真っ直ぐに歩けないほどだった。
2人ははぐれないように手を繋いで境内を歩いていた。
「もう…何もかも不意打ちなんだから…」
「すまんかったて。機嫌直してくれんか?」
「別に怒ってないけど、心臓が持たないの!」
「ククッ……本当にお前さんは可愛いのう」
そう言って、仁王はまだ赤いままのの頬にキスを落とす。
さらに顔は赤くなり、解っていたかのように仁王はその顔を見て笑った。
「〜〜ッ/// …そっ、それにしても人多いよね」
「(誤魔化そうとしちょるな…。)…まぁ、ここはこの辺じゃ一番大きい神社やしな」
「みんなどんなお願い事するのかなぁ…」
しばらく歩くと、やっと参拝の列の最後尾に着いたようで、二人はそこで足を止めた。
「、知っちょるか? 参拝ってのは、本来願い事をするもんじゃないんよ」
「えっ、そうなの?」
「『去年は一年安泰に過ごせました。今年もよろしくお願いします』っていう、神さんに挨拶するもんなんじゃよ」
「へぇー、そうなんだ」
「まぁ、いい意味でのお礼参りじゃの」
「正月早々嫌な例えしないでよ…。…でも、それじゃぁお願いするのは駄目なのかなぁ」
「いや? 聞くだけ聞いてくれるじゃろ」
「聞くだけ?」
「聞くだけ」
そんなやり取りをしている間に、2人の番が回ってきた。
賽銭を投げ入れ、手を合わせる。
「……………」
「……………」
「………もういいか?」
「うん、行こっか」
2人は手を繋ぎなおし、すぐ隣のおみくじの列に並んだ。
「はどんな願い事したんじゃ?」
「秘密。雅治は?」
「が言わんなら俺も言わん」
「何それー、気になるじゃない!」
「だったら、教えてくれるんだろうな?」
「…………」
「強情」
「うるさい詐欺師」
からかうように笑う仁王の表情に、はまた顔を赤らめる。
ただ年が変わっただけなのに、全てが新鮮に見えてきて戸惑ってしまう。
「今日はやけに可愛いの〜?」
「なっ、何よ///」
「んー? 思ったこと言っただけ」
仁王はいきなりを後ろから抱きしめると、耳元で呟いてきた。
「もうっ。どうせ雅治は、『今年もと過ごせますように』とか私が喜びそうなことお願いしたんでしょ」
「はずれ。自意識過剰じゃの〜」
「…………」
「…悪かったて。そんな顔せんでくれ」
むっとした顔で仁王を睨む。
さすがに新年だからといってからかい過ぎた事に気付いた仁王は、の頭をぽんと撫でた。
「…じゃぁ、のおみくじがおれより悪かったら教えてやるよ。かわいそうじゃからな」
「言い方にトゲがあるわね。…まぁいいわよ、私の強運、よく見とくがいいわ」
どこにそんな自信があるのか、胸を張って言う。
やがて順番がやってきて、二人は巫女さんに100円支払うと、箱の中からおみくじを一つ取り出した。
「…ズルしてないよね?」
「どうやったらズルできるんじゃ」
そんな悪態をつきながら、人の少ない場所に移動して、は思い切りおみくじを開いた。
一番上に書いてあるのは………『凶』。
「よし! …って何で喜んでるのか…」
これで勝ちは決まったものの、実際引いた最弱の結果には落胆してしまう。
「ほーう? 凶か」
「へへっ、これで私の勝ちだね」
「何故だ?」
「え?」
「よーく見んしゃい」
いつも通りの底の見えない笑みに不安を感じつつ、広げられたおみくじに視線を移動させる。
そこには…。
「…大凶。―――最強の手札じゃ」
「嘘…ッ!?」
「嘘も何も書いとるだろうが」
「じゃぁ私負けじゃない…。つーかなんで大凶なんて入ってるのよ普通凶が一番下じゃないの!?」
「……」
「!」
先ほどと同じように、後ろから抱きしめられる。
「俺が何を願ったか…教えてやろうか」
「え……?」
「お前さんさっき、『今年もと過ごせますように』って言ったよな?」
「う、うん…」
「……今年だけじゃなかよ」
「!」
「俺が願ったのはな……
今年も、来年も、そのまた先も。……ずっとと一緒にいられますように」
そう耳元で呟くと、仁王はを反転させて自分の方へ向けた。
「…叶えてくれるか?」
「……当たり前じゃない」
人前、神前にも関わらず、仁王はにキスをした。
少しして恥ずかしくなったは、仁王の胸に顔をうずめる。
「…で、は何てお願いしたんじゃ? …教えて」
「……私は、ね……『』」
end.
*****************************************************
『新春☆初夢まつり』記念すべき第一作目!!
におちゃんだぞーーーー!!!
スイマセン、無駄にテンション高いです! 皐月です☆彡
まずはリクエストしてくださった雛姫 十雅様、本当に有難う御座いました!(ぺこり)
ほのぼの甘、ということですが、これほのぼのしてますかね!?
何だか最近『ほのぼの』が解らなくなってきた生活を私してます。←
THE☆殺伐(’_≦) 笑い事じゃないですね!
今回書かせていただいた『最凶ジョーカー』。
とりあえずにおちゃんに、大凶のことをジョーカーと呼ばせたかったんです。
背景画像はイメージにあうのが無くて、でも妥協はしたくなかったので自分で撮ってきて加工しました(笑)
一番楽しかったかもしれない…((ぇ
ラストは皆さんご自分のお願い事を入れてにおちゃんに伝えちゃってくださいvvv
公私ともにまだまだ忙しい時期ですが、皆さんからお預かりした初夢を一つ一つお届けしたいと思います!
雛姫 十雅様、そしてこれを読んで下さった貴女、本当に有難う御座いました。
2008年1月7日 拝