何だか背中があったかい。
そう思いながらも、重たいまぶたは開いてくれなくて。
私はその気持ちいい温度の中でまどろんでいた。
「んー……」
そんな声が聞こえて、少し体が窮屈になったように感じた。
やがて、私はゆっくりと瞳を開く。
「…光…?」
「…あったかい…」
首だけで振り返ると、光がまだ寝ぼけた様子で私に抱きついてきていた。
引き剥がすのもなぁと思って放置していたけど…首元に当たる光の吐息がくすぐったい。
「ちょっ、ひか…っ!」
「何…?」
「起きてるよねっ!? 光確実に起きてるよねぇ!?」
「さぁ? どうだと思う?」
「だ〜っくすぐったいってばっ…!!」
いくらなんでもセクハラが過ぎる。
そう思った直後、
げしっ!!
「あ、ごめーん。ぶつかっちゃった」
「馨……」
「ん? どうしたの光。っていうかと何してたのかなぁ?」
「馨には関係ないもーん」
これまた完全に起きている感じの馨、どうやら後ろから光に蹴りを入れたみたい。
おかげで私は光の腕から逃げ出し、とりあえずベッドから抜け出した。
「もう! 朝から私巻き込んでまで爽やか兄弟ゲンカしないでよね!」
「「 いや軽井沢の対決はもう終わったから 」」
「わ、解ってるよ!! …っていうかそんなことより!」
私はきょとんとした顔の二人を目の端に捕らえつつ、ベッドに飛び乗って正座した。
「馨、光。…あけましておめでとう!」
「「 あ… 」」
そう、今日は1月1日。お正月。
二人は顔を見合わせ にっと笑うと、両側から私を抱きしめてきた。
「「 おめでとー、!! 」」
< 独占イントゥリティー >
思えば、こうやってが家に泊まるようになったのはいつからだったんだろう。
ずっと前からそうだったから、よく覚えてない。
だけどはもう、僕にとっていてもらわなきゃ困る存在だ。
それは光も同じ事だけど。
「馨? 気分悪い?」
「え…」
車に乗りながら考え事していたら、が僕の顔を覗き込んできた。
光はその向こうで寝てるから、今なら邪魔されずにと喋れる。
僕が手馴れた様子での頭を撫でてやると、は嬉しそうに微笑んだ。
「…ううん、なんでもないよ」
「そう? にしても何やるんだろうねー、ホスト部の新年会」
そう、今向っているのはホスト部の新年会。
本来なら学校は開いてないけど、理事長が特別に部室の使用を許可してくれたんだ。
「さぁ? お正月くらいはゆっくりできると思ってたんだけどなぁ」
「そうだね。でも楽しそうだからいいじゃない」
「……楽しそう、ねぇ…」
「え? …っきゃぁ!?」
僕はの腕を取って、膝の上に乗せてやった。
バックミラーに映るの顔がどんどん赤くなる。
「僕はこっちの方が楽しいけどね☆」
「はっ離してよッ」
「…んー、うるさいなぁ………って馨、一人でで遊ぶなんてずるい! 僕も混ぜてー!!」
「でって何!? 『で』ってぇぇッ!!」
の声で起きた光と一緒にを両側から抱きしめる。
その時…
「二人ともから離れてよ」
「わっ…!?」
突然車の扉が開き、が外に引っ張り出された。
そこにいたのは……。
「「ハルヒ…!?」」
「丁度良かった。二人とも、学校まで乗せてってくれる?」
そう言ってと車に乗り込むハルヒ。
…もちろん僕らとを阻むように間に座って。
「ハルヒ、あけましておめでとう」
「あけましておめでとう。、今年もよろしくね」
「うん!」
「……ハルヒー、返してほし「は馨たちのじゃないでしょ」
何この豆ダヌキ…!!
いくら男装仲良しペアだからって僕らの間を割って入ろうなんて…!!
「「 は僕らの!! 」」
「は? 何言ってるんですか?」
「「 ムカツク…!! 」」
「…あのさぁ」
「「 何!? 」」
「…学校着いたよ」
の声に前を向くと、フロントガラスの向こうには桜蘭の正門が見えていた。
「…ハルヒ、勝負はこれからだからね」
「もう勝敗着いてると思うけど」
いつぞやの時みたいに可愛げのないハルヒにムカつきながら、僕たちは部室へと向った。
「ようこそ! 桜蘭ホスト部、新年会へ!!」
扉を開けると、すでにパーティーは始まっていて、殿が袴姿で僕らを出迎えていた。
「遅いぞお前たち! すでにお客様も入って賑わっているというのに!」
「…お客が入るなんて聞いてませーん」
「集客の見込みがあったので急遽常連だけをお呼びした。…何か不満があるか?」
「鏡夜先輩…」
新年の挨拶もなしに、鏡夜先輩から手渡された着物。
「…ねぇ、とハルヒの着物が女物に見えるのは僕の気のせいかなぁ?」
「いや、女物だ」
「個人的にはOKなんだけど大丈夫なの?」
「それはこっちの馬鹿に聞け」
鏡夜先輩が冷たい目線で見たのは、たちと話している殿。
「環先輩、これ着て本当に大丈夫なんですか?」
「若干危険なんじゃ…」
「何を言う!! 何が悲しくて可愛い娘たちに正月早々男装させねばならん!?
お父さんは…お父さんはただお前たちの着物姿を見たいだけなんだよ…!!」
あー…正月早々ウザイな、殿。
「カオちゃん、ヒカちゃん、あけましておめでとー*」
「おめでとう」
「「 ハニー先輩、モリ先輩 」」
「二人はまだ着替えてないのー?」
「いや、たちが…」
「それなら心配ない」
「「 え… 」」
「ハルヒ君も君も、女装がお似合いですわ!」
「なんて可愛いらしいんですの…!!」
「袴姿も見てみたかったけど…お着物も素敵ですのね」
「ありがとう、みんなも可愛いですね」
「うんうん、大和撫子に囲まれて困っちゃうな」
「「「 キャーーー!!! 」」」
いつの間にか着替えていた二人は、女子に囲まれていた。
「やっぱりお二人は親友ですもの、馨君や光君みたいに、着物もお揃いですのね」
「!」
そんな声が聞こえてたちを見ると、確かに色違いの同じ着物を着ていた。
ハルヒはそんな僕を見て勝ち誇った顔をする。
「〜〜〜ッッ」
『皆の衆! ここで今回のメインイベントを開催する!!』
「何…?」
「あ、環先輩…」
部屋に突如響いた声は、マイクを持った殿からだった。
『今回のゲームはこれ!! この鏡餅型ストラップを一番最初に見つけた者の願いを一つ叶えてやろう!!』
殿の手には携帯ストラップほどの大きさの鏡餅が揺れていた。
同時、ざわざわと騒ぎ出す部屋の中ではすでにストラップ探しが始まっていた。
『ちなみにストラップはこの部屋のどこかに隠されている!! 見つかるかにゃ〜?』
すでに誰も殿の言葉は聞こえていない。それは僕も同じ。
僕は盛り上がりに乗じての手を取った。
「っ馨…?」
「、ちょっと抜け出さない?」
「え、でもストラップ…」
「の願いなら、いつでも僕が叶えてあげるから」
「うーん…」
それでもストラップを探したがる。
僕はその腕を引っ張り部室から抜け出した。
「ちょっ、馨!!」
悪いけど、今だけは君の言葉は聞けない。
走りづらそうにしているのを解っているくせに、僕は一向にスピードを緩めなかった。
「っと…この辺りでいいかな」
「も、かおっ……何、すんの…っ」
階段の踊り場で足を止めると、僕の後ろではの息遣いが聞こえてきた。
肌蹴た着物を気にしながら息を整えるが可愛くて、僕は階段に腰を下ろしてそんなを見つめた。
「着物、直さないの?」
「じ、自分じゃ直せないもんっ…さっきは着付けの人がいたから…」
「へーえ」
「…馨、着付けできるでしょ。…直してよ」
「どうしよっかなー♪」
「なっ…馨!!」
どんどん顔を赤くする。
そろそろどうにかしてあげないと泣き出しそうな気がして、僕は階段から立ち上がった。
「だったら、僕のお願い聞いてよ」
「……ストラップ……」
「…はいはい、後で見つけてきてあげるから」
こくりと小さく首を振る。…そんなにあんなストラップが欲しかったんだ…。
「……はい、これでダイジョーブ」
「ありがと…」
「…ん? ……!!」
ああ…なんか今年は幸先いいかも。
「!!」
僕は思い切りを抱きしめ、帯の後ろ側に光っていたモノを取り上げた。
「か、馨…っ!?」
「…ねぇ、お願い、聞いてくれるんだよね?」
どこで引っかかったのか…それは、鏡餅のストラップ。
「……え、何、どういう意味…?」
「はい」
「あ……」
抱きしめたままストラップを手渡すと、腕の中で、が嬉しそうに笑っていた。
それを感じて、僕は腕に力を込める。
「すっごい偶然……。ねぇ、お願い、何?」
「…そうだなー…。じゃぁ、
誰かが来るまで、このままでいる事」
鈍感な君だけど、
今年こそは、捕まえてみせるから。
end.
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お待たせしましたやっとこさ書けました!!
やっぱ書いた事の無いキャラは楽しいけど難しいね!!
向、こんなんで良かった…?(ドキドキ)
何か腹黒なのか変態なのか普通なのかただのヤキモチ焼きなのかよく解らない馨になってもた!!
午前4時のマジック。←
苦情は向に限り受け付けません。(えー)
ちくしょうボロクソに言われる覚悟できてるよ…!!
こんなんで良かったなら救われマス。
ではではこれを見てくださった方々、有難う御座いました!!
これで波に乗って企画を更新していけたらな、と思います!!
なのでこの先の企画参加者様方、もう少々お待ち願えますでしょうか…!!orz
2008年3月4日(もう3月だよ…!!) 拝