私は多分、人生最大の間違いを起こした。
「……………」
家に帰ってからずっと、私は放心したまま。
お母さんの声も耳を素通り。
…なんでこんなことになったんだろう。
ずっと自分に問いかけてる。答えは一向にでないけど。
「…ブン太ぁ…」
ふと、思い出して涙が溢れてきた。
ただ、ただ二人でお正月を過ごしたかっただけなのに。
ただ、それだけ、だったのに……。
< calling >
「―――ブン太ぁ、明日も一緒に過ごせるんでしょ? お正月だもんね!」
「んぁ? …あー…あぁ、うん」
「…何その曖昧な返事」
「何でもないっつーの。…の晴れ着姿想像してただけ」
「〜〜〜ッ…もうっ」
会う約束もした。
いつも通りに話してた。
なのに……。
「兄ちゃん兄ちゃん! 俺やっぱこれとこれとこれがいー!!」
「わっ馬鹿…!!」
いきなり部屋に入ってきた弟君に、変に慌てるブン太。
「あ、ねーちゃんだ!」
「こんにちは。お邪魔してるね?」
「いーよ! あ、なぁなぁ、ねーちゃんも一緒に行こうよ!!」
「へ?」
「ぉおいッ、コラ…!!」
「これ!!」
止めようと伸ばしたブン太の手はむなしく宙を掴み、弟君は持っていた紙を私に見せてくれた。
「明日からみんなでこれ行くんだー!!」
「!」
「あー………」
それは、関西にできた新しい遊園地のパンフレット。
「明日朝から新幹線乗ってぇ、3日まで向こういるんだって! ねーちゃんもいたら俺もっと楽し……っ」
「もう黙れって!」
弟君の口を塞ぐブン太を見ていると、何だかむなしくて。
私は、情報を整理するのに必死だった。
「…明日、いないの?」
「あー、その…」
「さっき約束したばっかじゃん。明日も、会える、って」
「…なぁ、聞いて」
「言い訳なんか聞きたくないよ!!」
まだ小さい弟君が脅えて涙目になっていることすら気付かずに、私は思いついた言葉を次々と並べ立てていた。
「始めっから言えばいいじゃない…明日から家族で出かけるんだって、ごめんって、一言いってくれれば…何も…っ」
会えるって、期待して、嬉しかったから。
まるで裏切られたみたいで、心が痛くて。
「ッブン太の嘘つき!!」
気付いたら大泣きしたまま、私はブン太の家を飛び出していた。
それが、夕方の事。
「はぁ…」
ため息しか出てこなくなって、そんな自分にさらに落ち込む。
わがままな、女なんだろうな、私。
確かにさ、ブン太なんか様子変だったしさ、私の勢いに負けて『うん』って言っちゃたのかもだしさ。
……なんか最悪じゃんか。
「あーっもうやだやだやだやだ!! こんな気持ちで新年迎えるのなんてやーだーッ!!」
手元にあったクッションを思い切り壁に投げつける。
けど、それだけで気分が晴れるわけがない。
「…やっぱり…謝ろうかな…でも何て言ったらいいのか解んないしなぁ…。
ここはいっちょ弟君に伝言を…あぁ駄目だ、家電にかけたらブン太が出る確率50%…!!」
柳みたいなこと言ってるって頭のどこかで思いながら、私はどうしたらいのか必死に考えていた。
「もっとも柳はもっと物事をスマートに考えるんだろうけど…あ、いっそ柳に教えを請うか。ああ、うん、そうしよう。」
そう思って、私は携帯電話を開いた。
すばやくアドレス帳から『柳 蓮司』を呼び出して、電話をかける。
『……どうした?』
「あ、柳? 仲直りの仕方教えてほしいんだけど」
『…お前たち今年残り10分で何故ケンカなどしているんだ…』
「色々あるの!!」
『ふむ……まぁケンカの原因が何であるとしても、この電話は早く切ったほうがいい』
「へ? どういう意味?」
『切れば解る』
ブツッ、という音と共に回線が切れる。
「〜〜っもう、何だってのよ…ぉ…?」
途端、また手のひらで携帯がバイブをはじめ、私はその表示に目を奪われた。
着信:ブン太
「うぇっ!? え、ど、どうしよ…」
尚も鳴り続ける携帯。だけど私はブン太になんて言ったらいいかわからずに、ディスプレイを凝視したまま固まっていた。
留守電に切り替わるとすぐに切れ、またすぐにブン太からの着信。
…何度繰り返したんだろう、私はつけっぱなしだったテレビからの喚声でようやく我に帰った。
《さぁー! 今年も残るところ後20秒! みなさん、カウントダウンの準備ですよー!!》
「あ……」
…出なきゃ。早く出なきゃ…。
ブン太の声、このまま聞かないで年が明けちゃうなんて、
それだけは嫌だ…!!
「…―――っブン太…!」
10
『っ…! バカっ、早く出ろよ!!』
9
「だ、だって…」
8
『…あー、今のナシ。悪ぃ、そうじゃなくて…』
6
「…ブン太、あのね、…私」
4
『話は後! 今すぐ窓開けてみ』
3
「え、何で…」
『早く! 後悔してもしんねぇーぞ』
2
「も、もう…っ」
1
―――ガラッ!!
「…!!」
「っ!!」
《A HAPPY NEW YEAR―――!!》
テレビから聞こえる声も何もかも、私には聞こえなかった。
ただ、耳に響いたのは、
ブン太の声。
「っブン太ぁ…!!」
私は急いで部屋を飛び出し、階段を駆け下りて玄関から飛び出した。
そこには、愛しい彼の姿。
「ブン太っ…!!」
思い切り抱きついた私をしっかりと受け止め、痛いくらいの力で抱きしめてくれるブン太。
「ごめん…私、ワガママ言って…」
「いーや。…俺も曖昧な返事しちまっただろぃ? を不安にさせたのは事実」
身体を離し、上着を着てこなかった私にブン太がマフラーを巻いてくれた。
ブン太の温もりがあったかくて、思わず笑みがこぼれる。
「…あのな。俺は初めから、2日の朝に家族と合流しようと思ってたんだよ」
「え…?」
「で、に正月のこと聞かれた時に、まだ親にそのこと伝えてねぇの思い出してああいう返事になったわけ」
「……って事は、じゃぁ…!!」
「おう! 今からずーっと、の側にいられるぜぃ☆」
涙の滲んでいた目に不意打ちキスされた後、もう一度抱きつかれて耳や首にもキスを落とされた。
「やっ、くすぐったい………って…」
視線の先、ニヤニヤと玄関の扉からこっちを見つめる影……。
「おっ、お母さん!? 何見てるのっ!!///」
「はいはい、仲直りの最中にごめんなさーい」
「もー!!///」
「折角コート持ってきてあげたのに〜」
「ちょっとは空気読もうよ!!///」
私がお母さんからコートを奪ってすばやく着込むと、ブン太は私の手を取った。
「見てたんなら話は早いっすね。ちょっと娘さんお借りしまーっす!」
「ブ、ブン太っ!?///」
「はーい、いってらっしゃーい♪」
私の手を引き、走り出すブン太。
「ブン太…っ、どこ行くの!?」
「んー、そうだなー。……あ」
「わっ…んぶっ」
急に立ち止まるブン太。私はその反動でブン太の背中に顔をぶつけてしまった。
「ったぁ……もう、いきなりどうし…… !」
目を開けた時には、ブン太に唇を奪われていた。
「ブン…!?///」
「……言ってなかった」
「え……」
「あけましておめでとさん」
ブン太の笑顔に、私も笑顔になる。
…ああ、幸せすぎてニヤけてそう…。
「…へへ…おめでとー! …今年もずーっと、一緒にいてね?」
「当たり前だろぃ? …あ、それとの着物姿、楽しみにしてるから♪ あーでも俺、着付けできねぇや」
「!!///」
「ぷっ…冗談だっつの!」
「っ…ブン太!!」
ケンカもいっぱいするかもだけど、
今年もこんな風に、君と過ごしたいんだ。
end.
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おおおおおおお待たせしました…!!
もう呆れられてますよね、むしろ企画に参加されたことすらきっと忘れられてますよね…!?
ホンマにごめんなさい!!!!!orz
アホのノロマでごめんなさい…!!(´д`。)
ええっと、今回書かせて頂きましたブン太夢『calling』!!
書いている間色んなことがありました。
第3次大型スランプ、舞台公演、オーディション、昼まで爆睡……
つまり全ていい訳ですごめんなさい。
お正月になる寸前、窓をがらりと開ければそこに必死そうな顔でこっちを見上げているブン太の姿…。
思わず自室の窓を開けてみてしまいました。(ぇ
誰もいなかったでs(ry
それにしてもどうして私の書くヒロインのマザーはあんなにもはっちゃけてるんだろう…。(笑)
そんな感じで今回も楽しく書かせていただきました♪
本当にこんなにもお待たせして申し訳ないです;
残り後6名のお嬢様方、どうかもうしばらく私にお付き合い願います。
これを見てくださった方々、そしてリクエストしてくださった奏様、有難う御座いました!
3月28日 拝。