こんなはずじゃなかった。
こんなことを望んだわけじゃなかった。
「ちょっと本気で…やめようよッ」
「どうしてだい?楽しいじゃないかvv」
「楽しいのはアンタだけでしょ!?…ってのわっ!!」
…どうしてヒソカといると、
『普通』なことができないんだろう。
< キミの姿を >
事の始まりはほんの数時間前。
12月31日、午後22時32分。
ヒソカが家にやってきたところから始まった。
私たちは不思議な関係で、…いや、きっと端から見ればとても奇妙な関係で。
今でもどうしてつるんでいるかと聞かれれば、どう答えたらいいかよく解らない。
別に付き合っているわけじゃない。だけど互いに何も言わず体を重ねた夜もある。
仲間というわけでもない。だけどしっかり蜘蛛にも紹介され、たまに仕事をご一緒する事もある。
…好きな気持ちがあるわけでもない。だけど、ふとした瞬間にその腕の中に包まれたくなるのだ。
そんな奇妙な関係が続いて、早5年。いつ会えるかも解らない彼が必ずやって来るのは、毎年この日。
元旦の私の誕生日を祝うため、こうして大晦日にやってくる。
「やぁ、★」
「…いい加減ドアから入ってきてよ。キモチワルイ」
どうしてこの男は私の不意打ちをつきたがるのか。
いつも彼の玄関は、私の部屋の窓。
「今更だろう?いいじゃないか◆」
「まぁ、別に言ったところでアンタが玄関から入るとは思えないしね」
「そうそう♪…はい、おひとつどーぞvv」
「あら、珍しく気がつくじゃない」
私はヒソカの手から缶ビールを受け取ると、すぐにプルタブを開けて一口胃へ流し込んだ。
「っあー。おいしー」
「ククク…」
「何よ、オヤジくさいって言いたいわけ?」
「らしくていいんじゃないかい?vv」
「あ、ムカツク」
そんな調子で飲み続け、いい感じに頬も火照ってきた頃、ヒソカがふと言い出した。
「……もうすぐキミの誕生日だねぇ◆」
「そうねぇ」
「ちょっと外でも散歩しないかい?」
「は?…ってのわッ!?」
気付けば私はヒソカに抱えられ、窓から外へと連れ出されていた。
「…相変わらずアンタは何を考えて行動なさってるのかしらね」
「まぁいいじゃないかvv」
飲みかけだった缶ビールはいつの間にか手から離れていて、
きっと部屋の中でこぼれているだろうソレの後片付けのことを考えて私は頭が痛くなった。
「さ、おいで?」
「私は犬じゃないっつの……」
そう言いつつも差し出された手を掴み、二人で暗い夜道を歩く。
街中が好かない私の家は、避暑地でもあり周りはペンションだらけの土地にある。
当然と言えるが、こんな時期に別荘にいるほどの暇人はいないらしく、外灯もほとんどないこの道は結構怖い。
仕事柄夜に行動することは多いが、私は暗いところを好まない。むしろ怖い。…女の子だもの、とか言ってみる。
それでも今全く怖くないのは、認めたくないがこの男が側にいるからだろう。
…相変わらず何を考えているのかは解らないが。
「…ここでいいかな◆」
足を止めたのは、すぐ側にある湖のほとり。
ヒソカは私の手を離し一度大きく体を伸ばすと、徐にトランプを数枚指に挟んでこっちを振り返った。
「…さァ、。…ボクとゲームをしようかvv」
「………はい?」
「タイムリミットはキミの誕生日。あと5分だね◆」
「いやいや全く話が見えないんですが」
「ボクから5分逃げ切れたらキミの勝ち。捕まったらボクの勝ちvv…まぁキミの負けイコールキミの死と考えて貰ったほうがいいかな?」
「何をさらっと物騒なこと言っちゃってるんだか…やる意味が解んない」
「団長からの命令でね。……キミの力を本気で試して来いって★」
「………」
「どんどん時間がなくなっちゃうなァ。……行くよ◆」
途端飛んでくるトランプを私はすんでのところで避け、体勢を整える。
しかしその間にもヒソカは距離を縮め、人体の急所ポイントにすかさず腕を伸ばしてくる。
殺気こそないものの、その見事なまでの動作で本気であることはすぐに解った。…解ったけど!!
「何でこんなことしなきゃいけないんだぁぁぁッッ!!」
私は隙を見つけてその場を大きく跳んで離れた。
が、ヒソカはその状況を愉しむかのように、着かず離れず私の後を追っている。
「ククク……余裕なさそうだねぇ★」
「あんたみたいな変態に追いかけられて余裕ぶっこく暇があったら私は人間じゃないッッ!!」
「騒ぐ余裕はありそうじゃないかvv」
「余裕ないから叫んでるのよ馬鹿ぁぁッ!!」
やがて目の前に森が見え始め、私はそこに逃げこもうと飛び込んだ。この森は年中霧に覆われていて視界が悪いんだけど、私には好都合。
ヒソカも後を追ってきたけど、地の利は我に有り。この森は私の庭よ庭!!そう簡単に追いつけると思わないでよね。
そうこうしてる内に、ヒソカの姿はだんだん遠くなっていく。…代わりに飛んでくるトランプの量は増えてるけど。
「よぉし、この辺で……」
私はすうっと息を吸い込み、近くの大木に寄りかかると、念を発動させた。
私の能力は『完全透明人間』。光の屈折を操作して、人や物の姿を消してしまう力。
そしてもう1つは……
「…………おやおや◆」
ヒソカの目の前に現れたのは、数えきれない程の、私。
「がひぃ、ふぅ、みぃ……たくさんvv」
私のもう1つの能力は、この『無限コピー機』。同じく光の屈折を利用して、物質を媒体に違うものへ見せる能力。
この場所で、その媒体に困ることはない。必要な物質は、水。ここには霧が充満していて、何体でも私を作り出せる。
「ん〜…どれがホンモノなのかなぁ?★」
(さぁ、どうするヒソカ……?)
私はその様子をニヤニヤと眺めていた。
……その瞬間だった。
「…見ぃつけた◆」
「ッ!!」
ヒソカの言葉が言い終わった時には、私のすぐ横に、木に刺さったトランプが数枚。
そのトランプによって光の屈折は遮断され、私の姿が現れてしまった。同時、偽者たちも霧へと還る。
「どうして…解ったの…?気配も姿も、完璧に消していたのに……」
「ん〜…確かにソレは、消えてたんだけどねぇ★」
「じゃぁ一体何が…」
「解らないかい?」
徐に伸ばしてきた腕に、私は思わずきゅっと目を閉じてしまった。
一瞬その腕は止まったようだったが、ヒソカのくぐもった笑い声と共に私の頬へ沿わされた。
その優しい手つきに、私はそっと目を開ける。
「ヒソ…」
「好きな人がいる場所を、ボクが見つけられないはずがないだろう?」
その言葉の意味を理解する頃には、
「……ッ…!!」
私はヒソカに、唇を奪われていた。
―――――ピピピピピ…
「…おや◆日付が変わったねぇ…★」
「っはぁ…は……」
「誕生日おめでとう、vv」
どこからか取り出したポケベルを見て言うヒソカ。
「ちょ…結局アンタ、何が、したいの、よ……」
「息絶え絶えだねぇ、可愛いなァ♪」
「ってのあッ!?」
部屋から連れ出されたときのように抱えられ、ヒソカはゆっくりと森の中を歩き出す。
「ゴメンゴメン◆全部嘘だよ♪」
「嘘…?」
「別に団長からは何も頼まれてないし、キミを殺すつもりもないってコトvv」
「じゃぁ何で…」
「……大事なセリフ、忘れてないかい?」
「!」
もう一度唇を奪われて、私はその意味を思い出して顔を赤くした。
「キミとちゃんとした恋人になろうかと思ってね★」
月光に照らされたヒソカの顔は、
いつもと違って凄く真面目に見えたんだ。
「だ、だからってどうして……」
「キミが去年の誕生日に言ったんじゃないか◆『たまにはサプライズ的な誕生日したい』ってvv」
「…そんなこと言ったっけ」
「だから、次の誕生日に言おうって決めてたんだよ★」
「…………ってアンタ、いつから私の事…」
「って意外と鈍感なんだねェ◆」
「なっ…」
「初めてキミと体を重ねたあの夜から……ずっとだよvvv」
森を出るまでずっと顔を赤くして黙ったままだった私に、ヒソカは耳元でささやいた。
―――今晩、キミを抱いてもいいかい? …と、
ありえないほど、優しい声で。
end.
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おおおおおおお久しぶりです皐月です!!!orz
しばらく三次元の世界で頑張ってました。ただいま二次元…!!←
もうほんと企画も長編も(っていうかサイト自体)放置ですみませんでした。
忙しすぎましたほんと。
でもやっと夏休みにも入ったんで、またちょこちょこアップしていきたいなと思っておりますです、ハイ!!
ほんで書き上げました『キミの姿を』!!ヒソカですヒソカ!!
そして柳瀬 花梨様、ハッピーバースデー♪♪
リクエストくださった柳瀬様が本当に元旦が誕生日という事で、ヒソカからのサプライズパーティーです★
7ヶ月もお待たせしてスミマセンでした…!!orz
さぁさぁさぁさぁ残りあと3つぁぁッッ!!←
きっとリクエストくださったお三方もこのサイトの存在を忘れていらっしゃるでしょう…。
リクエストしたことを忘れていらしゃるでしょう、しかしもしまだ通ってくださっているのならッ
必ず夏休み中に書き上げますので、ほんとにほんとにほんとーにっ、後もう少しだけっ、お待ち願えませんでしょうか!!
血ヘドを吐く覚悟で皐月は頑張ります…!!
2008年7月19日 拝