「フェイタンってさ。愛が薄いよね」











「………急に何言い出すか」








































<カルマ>












































流星街の一角。とフェイタンは何をする訳でもなく散歩していた。



それというのも、が無理やりフェイタンを連れ出しただけなのだが。





「だってさぁ、こう…一緒に散歩とか、そん時に彼氏が何気なく彼女の手を繋いだり…そういう甘酸っぱさがあたしは欲しいんだよ!!」


「……」




瞬時、フェイタンはのタンクトップの中に手を入れる。





「…夜の生活に不満は持たせて無いはずね」



「そうですねそうやって人目も憚らず唯我独尊極まりないアナタの行動には愛が感じられますがッ」





は赤い顔をしながら、必死にフェイタンの腕を止める。






「もうッ、フェイタンにこーゆー…純愛? …解っかるワケないとは思ったんだけどさぁ〜…」



「…が純愛…?」




言うと、フェイタンは鼻で笑った。






「フェイタンッ!!!!!」



「何ね、ワタシ本当の事しか言てないよ」



「ムッカぁぁぁぁ!!! って、きゃっ!」






は思い切り瓦礫の山にぶつかってしまった。






「痛ったぁ…もう、何なのよッ!!」






さらにその瓦礫の山を蹴る。すると、






「あ、ヤバっ……!!」






瓦礫は音を立て、の上へ崩れ落ちる。






「きゃぁぁぁっ!!!」



ッ!!」








最後に見えたのは、フェイタンの真っ白な手で――












































「お前、こんな所で何してるか」




「!!」





はっとして目を覚ます。






「え、あれ?」






見渡す場所は流星街。瓦礫が落ちてきた場所。


しかし、大きく違うのは…





「フェイタン…ちっさい…ていうか、幼い!!??」





そこにいたのは、少年のようなフェイタンだった。




「小さい……?」




小さいフェイタンは、の知っているフェイタンと何ら変わりない殺気を飛ばす。




「あ、フェイタンだ。その殺気は間違いなく。うん」




は混乱しながら一つずつ確認していった。






「…お前、面白いけど何者か?」




小さいフェイタンは、黒い上着に黒いズボン姿で、の知っているフェイタンよりすっきりした格好をしていた。






(まさか…瓦礫が落ちてきた衝撃で、過去にトリップしちゃった…?)



「…聞いてるのか?」


「!」




一人で考えていたの手を軽く引くフェイタン。






「あ……」




いつものフェイタンなら、無理やり顔を自分に向かせたりするハズ…





(フェイタンが……なん、ていうか…サディストじゃない…? てことは、やっぱり過去なのかも…)





は引かれた手を握る。


最後に見た、差し伸べられていた白い手と、同じ。





「…あたしは、。えーと…気付いたらここにいたの」





はあえて自分の身の上を話さなかった。


未来が変わってしまうような気がしたのだ。






「…お前、ワタシを知てるようだたが…何処で知たね?」


「!」




フェイタンからまた飛ばされる、殺気。






(あー…、やばい。あんまり下手に隠すと殺されそうかも)




「…うん、ホントは知ってる。信じてもらえないと思うけど……あたしは、未来のあなたを知ってるの」


「未来…?」


「……うん」






駄目だ。声が震える。





自分のよく知る人なのに。


自分が好きな人なのに。





…怖い。








「……」



「っきゃぁ!?」




フェイタンは座り込んでいたの腕を引き上げると、腕を引いたまま歩き出した。




「…もとよく聞かせて欲しいね」



「しっ、信じてくれるのっ!?」



「真実か偽りか、目を見れば解るね」



「……」






振り向かず、そのまま言うフェイタン。



はその腕を少し引き返すと、ぎゅっと手を握った。






「!」



「…駄目…?」



「………」




フェイタンは ふいっと前を向いて歩き出す。




「フェイタン? フェイタンってば…… !」





覗き込んだフェイタンの顔は、少し赤くなっていた。




「……っ///」




それを見ても顔を真っ赤にする。






(え、何、フェイタンってば昔は純情少年だったのねっ!?//////)




「…かっ…格好悪いか……?」


「へっ!? いや、ううん、こういうフェイタンもいいと思うけど!」




勢いよく言ってしまったを振り返るフェイタン。





(やばっ、あたしがフェイタン好きなのバレる…!?)





「…は美しいね」


「!」




フェイタンは依然赤い顔をしながら、微笑んだ。






「あ、ありがと…///」





ずるい。不意打ちだ。


心臓が持たない。





「そ、そういえば何処に向かってるの?」



「ワタシが仲間とよく集まる広場ね。今頃皆集まてるよ」





仲間…ってことは…






「……っ駄目!!」


「!」



はフェイタンの手を引き、止める。





「駄目っ、みんなのとこは駄目! …そんな、気がする」


「…アイツ等も知てるのか?」




は無言で頷く。





「…あたしは、未来のみんなを知ってる。だから、みんなに会ったら…何かが変わってしまう気がするの。



 ……もし、未来でみんなに会えなくなったら…そんなのやだ…っ」





泣きそうな顔で必死に言うを見て、フェイタンは道を変える。






「ワタシの家に行くよ」



「! いいの…?」



「別に無理やり皆に会わせる理由も無いね。…ワタシだて、未来でに会てみたいよ」



「っ//////」





顔を赤らめるを見て、フェイタンはもう一度微笑み、歩き出した。





(子供のフェイタンてば…今じゃすっかり無い素直……///)




どこで間違えたらあんなサディストになってしまうだ、と、は軽くため息をつく。





「…ん? ねぇ、フェイタン今何歳?」


「ワタシか? 確か14ね」


「へぇ〜…あたしより4歳下かぁ…。未来のフェイタンの歳…あたし知らないや。ここって何年前の流星街なのかなぁ」




「解らないね。未来もこんな感じか?」



「んー…やっぱりゴミは増えてる感じ。町並みも大きく変わるもんだね」





そうこうしている内に、そう大きくもない建物の前に着いた。




「ここね」



「やっぱり、一人で住んでるの?」



「そうよ」




フェイタンは一言言うと、の手を引き家に入った。


中は特に散らかっているわけでもなく、むしろ質素な感じだ。




(変わんないなぁ、ここは)




が何気なく笑うと、フェイタンは不思議そうにを見た。





「何かおかしいか?」


「え? 変わんないなぁって」


「どういう意味ね」


「ん? …フェイタンなんだなぁ、って」




が優しく微笑むと、フェイタンは顔を赤らめて視線を逸らした。







「それにしても…何を間違えたら、あんな風に育っちゃうのかねぇ」


「!」



はフェイタンの頬を両手で包み、無理やり視線を合わさせる。




「なっ、何するか!///」


「…よく見せて? フェイタンの顔」


「!!///」





はまじまじとフェイタンの顔を眺める。





(髪の毛短いなぁ…でも似合ってる…いつからあんな外はね髪になったんだ? 寝癖直さないで放置してるからかな)





…///」


どんどん赤くなっていくフェイタン。





(ていうか全体的に幼いよね。背も今より低いし…眉間にしわもよってないし…目も優しいなぁ)





!!///」


「おっ?」




「は、離して欲しいね…///」


「え、あ、フェイタン真っ赤だ」




は ばっと手を引く。





「……」


「!」



その手を、ぎゅっと握るフェイタン。




「…フェイタン?」


…ワタシは……」






その時、







「!!」







遠くから、爆音。







「な、何!?」


「広場の方ね…!!」




フェイタンは勢いよく飛び出して行く。




「ま、待ってよ!!」



は慌ててその後を追いかけた。
















「な、んだ…こいつは……!!」



「やべぇ…強いぞ…!?」



「はっ…アタシの攻撃が…効かない、だって…?」






「!」




広場に着くと、見慣れた顔が並んでいた。





(嘘…団長、ウボォー、それにマチじゃない…!?)




は思わず物陰に隠れる。





「皆…ボロボロだ…念は……!?」





三人はおろか、参戦したフェイタンでさえ、念での攻撃が全く無い。





「まさか…っていうか、間違いなく、あの人らまだ念使えない!?」





相手の巨漢は、間違いなく念使いだ。


強化系だろう。そのパンチは凄まじい破壊力を持っていた。





「うわっ…!!」


「マチ!!」


「何なんだ…お前は何者だ!?」





「はははっ、ここは存在しない街だ。何人殺そうが、誰も文句は言うまい!!」



「…っ!!」





は男の声に反応し、その場を飛び出す。








「……あたしが言ってやるよ」



「! !?」





フェイタンの声も気にせず、は男に歩み続ける。






「あぁ? 何だテメェは?」



「『存在しない街だから誰も文句は言わない』……お前が言ったんだよな?」



「はっ、だからどうした!?」







「だから――あたしが言ってやるっつってんだよ」




「!」






瞬間、全ての者の視界からが消え、次の瞬間には、男は地面に背をつけていた。






「な…っ!?」



「…この人たちを殺す? ……お前にそんな価値はない」





男の顔を掴んだまま、はさらに力を入れた。


誰も見えていないが、は一瞬の間に男を蹴り倒し、顔を掴んで地面に押し付けたのだ。






「テ、テメェ舐めやがって…!!」


「舐めてんのはそっちでしょ? …あたしに勝てると、思っているの?」


「っ!!」




はその禍々しいオーラを放出させる。男はそれを見て顔を引きつらせた。








「おい…フェイタン、あの子、知り合いなのか……?」




クロロやフェイタンたちも、その場の威圧感に汗を浮かべた。






「…去りなさい。ここで殺しはしたくない。あたしの…あたしの大切な場所だから」




はそのままフェイタンたちの方へ振り返り、歩き出した。






「! !!」


「へ…? っ!!」




フェイタンの声も空しく、は後ろからの衝撃にひざを着いた。






「ち…っくしょ……アンタ…放出系かよ…っ!!」


!!」




フェイタンはの元へ駆け寄った。


男から発射された念の刃が、の左肩を貫通したのだ。






「ははっ、これで形勢逆転っ……!?」





男は大きく開けていた口を歪ませると、苦しそうに胸を押さえた。







「残、念…。あたしの念はね…他人の体内に埋め込めるのよ……」


「何、だと…!?」



「最初の攻撃の時…アンタの口から忍び込ませてもらったわ……ま、一応だったんだけど…」





は左肩を抑えていた右手を頭上にあげ、ゆっくり指を鳴らした。






「っ!!」




瞬間、男は弾け飛ぶ。






「他人の体内で自分の念を増幅させれば…異質なものに抗い、逃げ場の無いあたしの念は…破裂する……」





は瞳を歪ませ、フェイタンの腕の中に倒れた。





!!」


「はは…ごめんね……嫌なもん、見せちゃったかな……?」


「……」





フェイタンは、ゆっくりとの顔に近付き、





「!!」





キスをした。








「……無茶しないで欲しいね…ワタシは…ワタシはが…!!」



「駄目だよ」



「!」





だんだん、の体が光を纏い始める。








「その言葉は…未来で、未来のあなたから聞きたいわ」



「ま、さか…帰るのか? 待つね、ワタシはまだ…!!」



「あたしの意思じゃないから、止まらないよ」






は、悲しみに歪むフェイタンに笑いかける。







「あたしがここに来た意味…解ったよ。…まだ念が使えない皆を…助けるためだったんだね」



「念…?」






「あなたは強くなるよ、フェイタン。ずっとずっと、強く」







光と一緒に薄れていくを見て、フェイタンは口を開いた。







「……いつまで待たら…に会えるか……?」






「…さぁ…解んないけど。……口数少なくて唯我独尊極まりなくて、あたしなんか軽く倒せちゃうくらい強くなっちゃって。


 ……機嫌悪くなると眉間にしわ寄せて、超サディストで。性格悪いったらありゃしない」





は少し苦笑いを浮かべる。









「そんな――あたしが好きなフェイタンになっちゃったら、かな……?」







そしてゆっくりと、光は空に解けて行き――



















!!」


「!」





はっとして目を開けると、瓦礫から抜け出した自分の姿。



そして、





「フェイ、タン…?」





いつもの、フェイタンだった。





「…戻ってきた…? って痛!」




痛んだ箇所を見ると、それは左腕だった。





「きと、何か刺さたね。すぐマチの所行くよ」




フェイタンは特に表情を変えず、を抱えて走り出した。





「……あの、フェイタン…」


「……無茶するんじゃないね」



「!!」






ついさっき、聞いたような、






「ワタシは…がいないのは嫌よ」





だけど、違うセリフ。






「……やっと…聞けたわ……」




は涙を一つ零し、フェイタンに抱きついた。








「昔、この言葉を誰かに言おうとしたね」


「!」




「遮られて、言えなかたけど」




フェイタンはスピードを緩めずに言う。






「ずと言おうと思てたよ。……、やと会えたね」



「フェイタン……!!」























――ねぇ、あたしたちが出会ったのは、偶然なんて簡単なもんじゃないよね?







だって、これはあたしが自分で掴み取った、





運命だもの。



























「…ん? ちょっと待て。じゃぁ何だ、フェイタンがこんな風に育ったのは……あたしのせいか!?」






「……イマサラ何言てるか」




































end.