助けて…
――助けて………
「…え……?」
突然聞こえたのは、
何とも悲しい、声。
<リアル&バーチャル>
「………」
どこから聞こえたのか、
空耳か、
シャルは辺りを見回した。
「…空耳か…」
仕事の帰り、もう外は暗く、辺りには誰も居ない。
彼はそのまま本拠地へ帰った。
部屋に着き、そのままベッドに横たわる。
「ふぅ……」
――助けて……
「!」
また聞こえた声に、シャルは身を起こす。
「……誰?」
手には、携帯とアンテナ。
『私は――ここだよ』
「!」
瞬間、携帯の液晶が光り、眩しい光が部屋の中を包んだ。
「わっ」
シャルは驚いて携帯を落とし、しばらく続く光に目を伏せた。
「………!!」
光が収まった後、携帯から飛び出てきたのは、ホログラム――映像だった。
「……キミは…?」
その映像は、綺麗な女の子だった。
等身大の姿は、向こう側の壁を映すくらいに透明で、それでいて何故か存在感のある、不思議な感覚を漂わせた。
『助けて……』
シャルに向かって、今にも泣きそうな顔で呟く少女。
その顔を見て、シャルは気を取り直した。
「どうしたの? キミは一体誰?」
シャルの声に、少女は目を見開き、そしてすぐに安堵の笑顔で顔を緩ませる。
『…私は……』
ほっとした表情、だけど、その頬をひと筋の涙が流れる。
「オレはシャル。…、どうしてキミは、オレの携帯から……そんな、姿で?」
『何故あなたの所に来られたのかは解らない……けれど、私はずっと呼びかけていたの。私の声が届く、誰かを…』
またすぐに悲しい顔になる。
『シャル…あなたが、私の声を、聞いてくれたのね……有難う…』
また笑顔になると、の姿が薄れていった。
「!?」
『時間が…足りなかったや……』
「時間……?」
『これは、今の私が使える唯一の念……私は、オーラの使用を著しく削がれる場所にいるから…』
「それは、何処なの?」
『言えない……言えないの……それが誓約だから…』
はふるふると首を振ると、薄れていく姿で、また笑顔を見せた。
『……きっとまた会えるよね……ううん、また会えるって信じてる…』
光が解けるように、のホログラムは消えていった。
「………」
シャルは静かに携帯を拾い、視線を上げた。
「………」
何故か惹かれていた、少女の名を呟いて。
「よぉシャル」
何の音沙汰もないまま数日が過ぎ、流星街を散歩していたシャルは、フィンクスに掴まった。
「最近仕事ねぇよなー。ダラダラすんのもいいけどよ」
「…そうだね」
苦笑いするシャルに、違和感を感じるフィンクス。
「どうした? 何か悩み事か?」
「えっ、いや…そんなんじゃないよ」
「…ふーん……それより、お前見たか?」
「何を?」
「議会のジーサン達、面白い女拾ってきたみたいだぜ?」
「面白い…?」
「それがすげー可愛い女でよ。少し前だけど、ジーサン達が連れてくるの見たんだよ。だけどちっとも笑わねぇ女でよ、勿体ねぇよなぁ」
「……」
シャルはその言葉を聞いて黙り込む。
「シャル?」
「…ちょっと、見に行こうかな」
「え、おいっ」
フィンクスが止める間もなく、シャルは議会へ向かっていた。
「――駄目だ」
面会を求むシャルの声は、あっさりと掻き消される。
「どうして?」
「いくらお前でもな…あの女は処分するために連れてきたのだ」
「処分…?」
「特質の念を使い、流星街の管理システムに進入したのだ」
それだけ言い、議会長は部屋の奥へ消えようとする。
「会わせて」
シャルの声で、歩みを止める。
「駄目だ」
「会わせてくれないなら、オレは蜘蛛を辞める」
「!」
「…それでも?」
議会長は振り向き、しばしシャルを見つめた。
「……」
「……」
「…会わせるわけにはいかん」
言って、指を鳴らす。
「!」
すると、周りから複数の男達が現れる。
「…お前に会わせるわけにはいかんのだ」
「…何で?」
「奴が…お前の名を呟いたからな」
「!!」
シャルは確信した。
同時に、アンテナを手にする。
「…無理矢理にでも会いに行く」
そして一本のアンテナがシャルの手から放たれ――
「……」
薄暗い独房に、シャルの足音が響く。
自動操縦モードにしてきたから、少しは時間が稼げるだろう。
「……」
ふと、一つの独房の前で止まる。
「…見つけた……」
シャルは牢屋に手をかけ微笑みながら、眠り込んでいる少女の頬に触れた。
「――…」
は牢屋にもたれて、寝息を立てていた。
「んぅ……」
頬の感触に気付き、は目を覚ました。
「!! ぁ……っ」
そしてシャルの顔を見て、泣きそうな顔をする。
「……本物の…見っけ」
「シャル……っ」
牢屋ごしに触れる手。
確かに、繋がって、
「そこまでだ」
「!」
入口を見ると、議会の男達が集まっていた。
「全く…とんでもない事をしてくれる…そんな罪人をどうするつもりだ」
「……っ」
は唇を噛み締めた。
「……確かに、私は……ここの管理システムに侵入しました」
声を絞り出すように、は言葉を紡いだ。
「私の念は、機械の中を移動する力。だから、パソコンも携帯もなくても、全ての事を知ることができるし、連絡がとれる」
「それで、進入したと?」
「…依頼、だったから。私もそれで生きてきたから……」
「はっ、戯れ言だな。何にせよ、お前の処分は決まって…」
「なら、オレも処分するんだろうね?」
「!」
シャルの言葉に止まる男達。
「オレはを処分なんかさせない。そのを処分するっていうくらいなんだから、オレも処分する対象なんだろうね?」
「………っ」
「『欲しい物は奪え』…それが蜘蛛だって…あなた達が一番知ってるでしょう?」
「………」
議会長は沈黙すると、シャルに向かって何かを投げた。
「! これは…」
牢屋の、鍵だ。
「…好きにしろ。そいつを蜘蛛が管理してくれるなら、厄介払いできて丁度いい」
言って、男達は地下室を出て行った。
「………」
「…失望、した?」
「どうして?」
「依頼で…こんな事して…」
「オレも似たようなものだよ」
シャルは牢の鍵をあけながら言う。
「オレ、盗賊だから。そっちの方が、性質悪いでしょ?」
手を取り、微笑む。
「そんな事ないっ……シャル、私を助けてくれたもん……」
はまた泣きそうになる。
「……やっぱり…」
「!」
シャルはの額に唇を落とす。
「…映像より、本物の方が可愛いよ」
そして、を抱き締めた。
「…だから…泣かないで?」
「………」
シャルの腕の中、はこくんと頷く。
「…私の声、シャルに届いた理由…解った気がする」
「え…?」
「――必然。…なんてね」
は自分からシャルに抱きつき、頬にキスをした。
シャルも照れながらそれを返し、二人は微笑み合った。
リアルの恋は、もう、止まらない。
end.
■あとがき■
どうしようとにかく総合して意味解んないo((ぉぃ
まず議会のジーサン達の設定解んない。
流星街に管理システムがあるか解んない。
っていうか設定訳解んないo((アハハハハハハハ
何故かシャルさんブラック化してるしo
つまりアレだ。
The 微妙o